(山下 和之:住宅ジャーナリスト)
マンション価格の高騰が止まらない。新築だけでなく、割安感のある中古マンションでも、実は新築マンション以上のピッチで価格が上がり続けている。都心やその周辺の多くのエリアでは、平均的な会社員の年収では簡単にマンションが買えなくなっているが、それでも探してみれば都心周辺には3000万円以下で購入でき、かつ将来の資産価値の向上も期待できるエリアが少なくない。
2000万円台で購入できるエリアは10%前後の上昇率
不動産経済研究所の調査によると、首都圏の新築マンションは2021年度には平均6360万円だったのが、2022年度には6907万円と前年度比8.6%の上昇だった。
それに対して、中古マンションは【図表1】にあるように、2021年度の3949万円が2022年度は4343万円で、前年度比10.0%の上昇だった。新築より中古の上昇率のほうが高いのだ。
その結果、新築に比べると割安感があるとはいえ、東京都区部の平均は5827万円、横浜・川崎エリアで3871万円まで上昇している。前年度比の上昇率は東京都区部が7.3%、横浜・川崎は7.1%。首都圏全体の10.0%より低いが、これらのエリアはすでに高くなりすぎているため、資産価値の上昇はさほど期待できないかもしれない。
一方、比較的価格水準の低い埼玉県の平均価格は2783万円と3000万円を切り、前年度比の上昇率は10.1%、千葉県は2650万円で8.7%、神奈川県の横浜・川崎以外のエリアは2686万円で13.5%、など高い上昇率となっている。
マンション情報のポータルサイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、毎月、全国の市区町村別の70m2換算の中古マンション価格のランキングと、1年前と比べた騰落率(上昇率)のランキングを調査している。
その2023年3月分の騰落率のランキング上位10は【図表2】にある通りだ。
首都圏でも都心から少し離れた場所であれば、2000万円で購入できるエリアがあり、そのなかには前年比20%、30%と上がって資産価値が急速に高まっているエリアも少なくない。
新型コロナの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に変更されたとはいえ、いまだに在宅勤務を継続している人は一定数おり、都心から多少遠くても仕事に支障がないという人も増えた。
そんな人にとっては、2000万円台でマンションが買えて、なおかつ購入後に資産価値の上昇が見込めるエリアはとても魅力的だろう。
「神奈川県平塚市」の中古マンションは3割以上の上昇
2023年の騰落率のトップは神奈川県平塚市。70m2換算価格が2625万円で、騰落率は34.31%だった。2022年3月は1954万円だったから、1年間で671万円も資産価値が高まったことになる。
JR東海道本線の平塚駅からは、品川駅が50分前後、東京駅が60分前後で、JR湘南新宿ラインも利用できるので、新宿駅も直通で60分前後と都心への交通アクセスに恵まれている。通勤が本格的に復活しても、問題のない利便性の高さといっていいだろう。
商業施設をみても、平塚駅にはJR系の駅ビルがあり、周辺には地元商店街が充実しているほか、大型スーパーや家電量販店、ららぽーとなどの人気商業施設もあり、生活利便施設が充実している。
それでいて湘南海岸に位置し、リゾート地としても人気の高いエリアである。「湘南ひらつか七夕まつり」など全国に知られるイベント、サッカーJリーグの「湘南ベルマーレ」もある。
このように地域経済が安定成長しているにもかかわらず、まだまだ首都圏レベルとしては割安感の強いマンション価格だけに、今後も一定程度の価格上昇は間違いのないところだろう。
若い世代が増え、将来性の高い「千葉県柏市」
全国市区町村別の騰落率2位は栃木県宇都宮市の30.69%で、3位は千葉県柏市の26.52%だった。
宇都宮市は都心からかなり遠くなるが、70m2換算中古マンション価格は2171万円だから、在宅勤務が中心で、通勤の負担のない人であれば魅力的な価格帯ではないだろうか。
3位の柏市は、都心への通勤圏内でありながら、70m2中古マンション価格は2726万円と、首都圏のなかではまだまだ割安感が強いエリアといっていいだろう。それでいて、生活しやすいエリアで将来性も高い。
もともと、柏市はJR常磐線沿線を中心に東京のベッドタウンとして栄えてきたが、2005年につくばエクスプレスが開業して、街の発展に拍車がかかった。
なかでも、柏の葉キャンパス駅は、駅周辺に東京大学柏地区キャンパス、千葉大学柏の葉キャンパス、産業技術総合研究所柏センターなどが立地。スタートアップ企業の集積も進み、そこで働く人たち向けの大型マンション、商業施設や公共施設などの生活利便施設が充実している。地域内で生活を完結できるスマートシティが形成されつつあるのだ。
また、自然豊かな住環境、子育て環境も整ってきているため、若い世代が多く住むようになった。それがエリアの活力を醸成し、将来性を高めている。
資産価値1000万円アップも狙える有望エリア
続いて中古マンション騰落率ランキングをみると、首都圏では4位に神奈川県川崎市麻生区が24.52%、さらに神奈川県海老名市が6位で20.16%、東京都多摩市が7位で18.23%、千葉県松戸市が9位で17.03%となっている。
川崎市麻生区は70m2換算価格が3000万円台だが、神奈川県海老名市、東京都多摩市、千葉県松戸市は2000万円台で購入することができる。都心やその周辺部などと比べるとかなりの割安感があり、現在2000万円台、3000万円台の価格エリアであれば、3000万円台、4000万円台に上がってもおかしくない。
首都圏の2022年度の成約価格が平均4343万円(東日本不動産流通機構調べ)だから、これらのエリアの経済基盤、インフラ整備の充実度などを考慮すれば、そこに向けて上昇する可能性は十分にあるといえる。
築古マンションでもリフォームすればOK
ただし、当然ながら中古マンションの場合は、築年数帯によって成約価格に大きな差がある。
【図表3】にあるように、首都圏の中古マンション成約価格の平均は、築5年以内の築浅マンションは6704万円と、新築マンション並みかそれ以上の価格帯になっているが、築年数が長くなると、成約価格は5000万円台、4000万円台に低下し、築30年を超えると2000万円台まで下がる。
成約価格の高い築浅物件は手が届きにくいエリアであっても、築年数の長い築古物件なら十分に購入できるようになる。
たとえ築年数が古いマンションでも、一定の費用をかけてリフォームすれば、現在の技術なら最新の新築住宅に近いレベルの居住性能を確保できるようになるはず。それでいて、先に触れたような騰落率の高いエリアであれば、大幅な資産価値の向上が期待できるかもしれないのだ。
繰り返しになるが、中古マンションは新築マンション以上に高騰する傾向が続いているので、購入を検討するならさらなる価格上昇の前に早めに行動したほうがいいだろう。
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