西地区3位のエンゼルス。大谷が望むプレーオフ進出は果たせるか(C)Getty Images

 アメリカン・リーグの異常とも言える地殻変動が、またもエンゼルス大谷翔平の前に立ちふさがろうとしている。2014年を最後に8シーズン連続でプレーオフ進出を逃してきた。大谷にもチームにも、プレーオフは悲願といって他ならない。

 11日にはマリナーズ戦に勝利し、貯金を再び今季最多の5とした。一時期は借金生活転落の危機も迎えていたが、36勝31敗の勝率・537の西地区3位で何とか踏みとどまっている。同地区首位レンジャーズとは6・5ゲーム差と離されているが、2位アストロズとは1・5ゲーム差と差はない。

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 だが、今季のア・リーグの異常な状態が道を阻む。東地区が圧倒的に強く、中地区がどうしようもなく弱いのだ。

 東地区首位のレイズは48勝20敗で30球団最高の勝率・706を誇る。一方で同地区最下位のレッドソックスでさえも、33勝33敗の勝率5割なのだ。

 逆に中地区は首位のツインズが33勝33敗と、レッドソックスと同率。同じ勝率でも、地区が異なると首位か最下位に分かれる、という状況になっている。

 ここで昨年3月の新労使協定締結で、新たに更新されたメジャーリーグプレーオフフォーマットをおさらいしておきたい。

 各地区優勝チームが勝ち進むのは従来通り。そこにワイルドカードとして優勝を逃したチームから勝率上位3チームもプレーオフに進むことができる。ワイルドカードの勝率1位チームと2位チーム、地区優勝チームの中の最低勝率チームとワイルドカード3位チームが、3回戦制のワイルドカードシリーズで対戦。勝ち抜いたチームは地区優勝チームの中で勝率1、2位のチームとの地区シリーズに進む。

 西地区3位のエンゼルスだが、東地区のチームが軒並み高勝率のため、ワイルドカード争いではオリオールズ(41勝24敗)、ヤンキース(38勝29敗)、アストロズ(37勝29敗)、ブルージェイズ(37勝30敗)に次ぐ5位に甘んじており、このままではプレーオフに進むことはできない。

 大谷は本塁打王争いを展開し、満票でア・リーグMVPに選出された2021年の9月、「もっともっと楽しい、ヒリヒリするような9月を過ごしたい。クラブハウスでもそういう会話であふれるような9月になるのを願っている」と勝利への思いを口にした。消化試合が続く中、個人タイトルしか見所がない戦いに辟易としているようにも映った。

 チームが貯金をキープしても、上記の東地区の強豪たちを上回らないことには、道は開かれない。今季終了後にFAとなる大谷の引き留めには、大谷が望む「ヒリヒリした戦い」であるプレーオフ進出を、必要条件の一つに挙げる識者も多い。エンゼルスにとってどこまでも遠いプレーオフ進出。これまでの8年間以上に、そこを渇望して挑む残り約100試合になる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

今季最多貯金、同地区2位と僅差、それでも遠いエンゼルスのプレーオフ進出。異常な地区間のバランス崩壊が重たい扉に