イスラエル-パレスチナ問題の歴史的経緯や現在の論点を解説したダニエル・ソカッチ著『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』は、日経新聞(2023/5/6)、週刊東洋経済(2023/5/13号)等の書評が大きな反響をよび、増刷が決定いたしました。

イスラエルについてどう思う?」と唐突に質問されたら、あなたは何と答えるだろう?

教養人ほど、イスラエル-パレスチナ問題に白黒をつける論陣を張る。だが、イスラエル人とパレスチナ人はどちらも正しく、どちらも間違っているというのが本当のところだ。どちらも、自分ではどうにもならない力の、お互いの、そして、自分自身の犠牲者なのである。それはどういうことなのか? 本書はそれをあぶりだす試みである。

『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』2023年2月25日発売 定価2,860円(税込)

▼本書「はじめに」より

 本書において私は、プロパガンダに陥りもせず、読者のあくびを誘うこともなく、世界でも類を見ないほど複雑な紛争の歴史と概略を説明したいと思う。しかし、プロパガンダにかまけるつもりはないとしても、私には一つの企図があるし、ある特定の観点から記述を進めていく。イスラエル-パレスチナ紛争は本質的に、歴史家のベニー・モリスが「正義の犠牲者」と名付けた者同士の闘争だと思う。つまり、両者とも土地に対する正統なつながりと権利を有し、外部の世界の、お互いの、また自分自身の犠牲となってきた二つの民族である。それは土地をめぐる紛争であり、記憶と正統性をめぐる紛争でもある。生存権をめぐる紛争であり、自己決定権をめぐる紛争でもある。生き延びることに関する紛争であり、正義に関する紛争でもある。それは、その信奉者が完全に「正しい」と見なす相容れない語りをめぐる紛争である。

 これらの語りは、実体験のみならず、物語や宗教的伝統、家族やメディア消費や政治的信念によって――また故意かどうかは別にして、さまざまな程度の無知によって――支えられている。イスラエル人とパレスチナ人の紛争を解決することの最大の障害は、政治的想像力の欠如ではなく、政治的意志の欠如だと思う。

 もっと簡単に言えば、イスラエル人もパレスチナ人も、誰もが平等な権利と安全を保障されるべきだ。この紛争の当事者には、こうした権利に値するのは一部の者だけだと考える

向きもあるが、それは間違っている。

(一部抜粋)

▼本書「はじめに」の一部と元外交官の中川浩一氏による解説を全文公開中!

NHK出版デジタルマガジンhttps://mag.nhk-book.co.jp/article/31465

はじめに
第1部 何が起こっているのか?
 1章 ユダヤ人イスラエル――始まりはどこに?
 2章 シオニストの思想――組織、移住、建設(1860年代~1917年)
 3章 ちょっと待て、ここには人がいる――パレスチナ人はどうなる?
 4章 イギリス人がやってくる――第一次世界大戦、バルフォア宣言、イギリス委任統治領の創設(1917~39年)
 5章 イスラエルとナクバ――独立と大惨事(1947~49年)
 6章 追い出された人びと
 7章 1950年代――国家建設とスエズ危機
 8章 ビッグバン――第三次中東戦争とそれが生み出した現実
 9章 激動――ヨム・キプール戦争から第一次インティファーダ(1968~87年)
 10章 振り落とす――第一次インティファーダ
 11章 イスラエルはラビンを待っている
 12章 賢明な希望が潰えて――オスロ合意の終焉
 13章 ブルドーザーの最後のサプライズ
 14章 民主主義の後退
第2部 イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?
 15章 地図は領土ではない
 16章 イスラエルアラブ系国民――共生社会か、隔離か?
 17章 ラブ・ストーリー?――イスラエルと、アメリカのユダヤ人コミュニティ
 18章 入植地
 19章 BDSについて語るときにわれわれが語ること
 20章 Aで始まる例の単語
 21章 Aで始まるもう一つの単語
 22章 中心地の赤い雌牛――イスラエルハルマゲドン
 23章 希望を持つ理由
紛争に関する用語集
謝辞
解説
訳者あとがき
参考文献/出典・参照/人名索引

  • 著者紹介

ダニエル・ソカッチ
社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO、「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向に関わらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外された少数派の保護、およびあらゆる形態の差別と偏見をなくし、すべての個人と集団の市民権と人権を確立すること、イスラエル社会の本質的な多元性と多様性を認識し、それに対する寛容性を強化すること、マイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、イスラエルおよび近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持すること、などを目標に掲げて活動している。妻と二人の娘と共にアメリカ、サンフランシスコ在住。

  • 商品情報

書名:『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』
著者:ダニエル・ソカッチ
翻訳: 鬼澤 忍
出版社:NHK出版
発売日:2023年2月25日
定価:2,860円(本体2,600円)
判型:四六判
ページ数:400ページ
ISBN:978-4-14-081933-3
NHK出版ECサイト:https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000819332023.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4140819332/

配信元企業:株式会社NHK出版

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