1998年に映画化、その後にも多くのシリーズ作品が製作され、「ジャパニーズホラー」の系譜に大きな影響を与えた『リング』をご存知なかたは多いだろう。

【動画】『Amanda The Adventurer』をプレイする壱百満天原サロメ

「そのビデオを見ると、一週間後に死ぬ」

 そう語られる“呪いのビデオ”に映っていたのは、不気味かつ不可解な映像と井戸。「山村貞子という女性の怨念によって次々と見た人が死んでいく」という呪いを解こうと、さまざまな人たちが手がかりを探し求めていく。

 映画放映当時、“呪いのビデオ”の映像再生には「VHSビデオテープ)」が使われており、今からすればすこし時代を感じさせるものがある。最新作『貞子DX』では時代の変化に合わせてSNSが使われており、人気シリーズを追っていくと貞子の呪いがこめられたメディアの変化も目につくところだ。

 今回紹介するゲーム『Amanda The Adventurer』も『リング』同様、ビデオテープが用いられたホラー作品である。

 2023年4月26日にSteamで発売された本作。叔母の家を相続した主人公・ライリーは、家の中で一本のビデオテープをみつけ、それを見始める。ビデオに登場するのは少女・アマンダと羊・ウーリーの2人が登場する古めかしい子ども向けアニメで、愛らしいキャラクターデザインなのだが、どこか不吉そうな空気感も漂う。

 まるでこちらにしゃべりかけてくるかのようなアマンダの口ぶりにひかれ、ライリーはその言葉通りに“なにか”を探し始めてしまう……といった流れでゲームを進めていく。

 暗い部屋のなかでポツっと光るテレビや、アマンダのセリフに導かれて部屋にある様々なギミックを解いていくと、不可思議な現象が次々と起こっていくという展開は、ホラーゲームとしてベタではある。

 擦り切れそうなテープは音声・映像ともにノイズがはしり、ポップな色合いながらすすけたような感じもあり、レトロさよりも不吉さや不気味な印象を強くする。全体的にゲーム難易度としては易しく、海外ゲームではあるものの日本語にある程度対応しているので遊びやすいホラーゲームといえるだろう。

 程よい難易度でありながら、緊張感の高いホラーゲームというジャンル、そしてポップな絵柄が目を惹くこともあり、発売から一ヶ月とすこしの間に多くのゲーム配信者によってプレイされている。

 発売されて間もない4月27日に、YouTubeチャンネル登録者数1640万人(2023年6月7日現在)を誇る海外の人気ゲーム配信者・CoryxKenshinがプレイ。「this game is for KIDS!?(このゲームはキッズ用か?)」というタイトルのゲーム動画は、現在までになんと1300万回再生(2023年6月現在)を超えており、このほかにも海外のゲーム配信者の注目を集めることになった。

 同日には日本のゲーム配信者のなかでもホラーゲーム配信に定評のあるガッチマンが、同作のプレイ動画を投稿している。じつは本作、デモ版の発表時から評判が良く、期待が高かった。その影響もあり、こうしたブレイクに繋がったのだろう。

・ギミックだけでなく「明かされない謎」がリスナーと配信者の架け橋になる?

 筆者が調べたところ、日本のVTuberで初めて『Amanda the Adventurer』をプレイしたのは「人生つみこ」氏のようだ。ゲームが発売された4月26日当日のライブ配信でプレイしている。

 大手事務所に目を向ければ、にじさんじのなかでも徐々に配信が増加。5月9日不破湊が、5月11日フレン・E・ルスタリオがそれぞれ配信して以降、国内外合わせて31人のメンバーが配信している。

 これまで30人以上のメンバーが配信してきたが、2時間から3時間ほどのプレイでエンディングにたどり着く者が多く、謎解きギミックなどで頭にハテナを浮かべてしまいがちなライバーもいたようだが、リスナーからヒントをもらってクリアする者もおり、プレイの仕方は様々。

 本作をプレイするライバーたちは唐突に驚かせてくるポイントで絶叫する、トリックが解けずにフラストレーションが溜まっている様子など様々な反応を見せ、配信におけるホラーゲームとの相性の良さを再確認させてくれるが、なにより配信者本人とリスナーを惹きつけるのは、考察しがいのあるストーリーだろう。

 部屋のなかにあるギミックを解いていくと、ビデオが「誰によって、どのような意図で制作されたのか?」といった部分が徐々に明かされていく。しかし、肝心要の部分はかなり曖昧なニュアンスでのみ提示されるのだ。

 また、ゲームのエンディングで語られるアマンダの言葉、途中で襲い掛かってくる謎の存在、そしてビデオのなかでかなり“良心的な存在”として描かれるウーリーの正体など、本当に気になる点はほとんど答えが明かされずにエンディングを迎える。そのため、「どういうこと?」と気になったプレイヤーは再度プレイし、謎について考察しながら楽しめるなど、曖昧さによって本作の魅力は倍増しているといえる。

 数多くのライバーがプレイしている本作だが、にじさんじのライバーでおすすめを知りたければ、筆者は壱百満天原サロメを推す。『バイオハザード』などを度々プレイしてはいるものの、「ホラーゲームは苦手なんですの……」と以前から口にしていた彼女。ピンチになると叫び声をあげ、ギミックに若干唸りつつ考えを巡らせる姿には、彼女らしい愛らしさが滲んでいる。

 時にはリスナーのコメントを頼って進めるだけでなく、先に述べたような「本作の謎」部分にも手を付けてリスナーとともに経緯を知ろうと試みる配信内容になっている。「プレイはせずともゲームの内容を楽しみたい!」という方がいれば、彼女の配信を覗いてみてはいかがだろうか。

(文=草野虹)

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