株式会社ヘルステック研究所(本社:京都市左京区、代表取締役:阿部達也、以下、ヘルステック研究所)は、京都市京都市京都市長:門川 大作、以下、京都市)は、京都大学およびアストラゼネカ株式会社の共同実施している、京都市におけるがん検診受診率や肺がん患者の治療パターン、予後などに関する統合データ(国民健康保険及び後期高齢者医療制度加入者の医療レセプト、健診結果、介護認定情報、介護レセプト等を統合したデータベース)を解析・調査するための共同研究(以下、本研究)の結果を発表しました。なお、この結果は、2023年4月21日付で国際学術誌「Thoracic Cancer」に掲載されています。

■研究概要と成果

京都市が保有する統合データ(国民健康保険及び後期高齢者医療制度加入者の医療レセプト、健診結果、介護認定情報、介護レセプト等を統合したデータベース)を用い、2013-2018年度に京都市で肺がんと診断され、治療を受けた患者のうち、2年以上の観察期間を有する2,609名を対象に、初発の非小細胞肺がん患者において、初回治療が手術療法であったグループ(手術群)と、それ以外の治療(非手術群:薬物療法もしくは放射線療法)に分け、患者の背景、生存期間、初回治療後の総医療費について解析・調査を行いました。

研究対象患者2,609名のうち、手術群は1,035名、非手術群は1,574名でした。非手術群は、手術群と比べて高齢であり、男性の割合が高く、介護度も高い傾向がありました。また、5年後における生存率は、手術群で75%に対し、非手術群は25%未満でした。生存期間に応じた総医療費では治療後6ヶ月の時点では、手術群の中央値2,409千円(四分位範囲 2,064 - 3,224)に対し、非手術群の中央値2,951千円(1,600-4,706)でした。その後、生存期間が延びるにつれて、手術群、非手術群ともに総医療費は増加傾向であり、4年後までの総医療費では、手術群の中央値5,257千円に対し、非手術群の中央値10,202千円でした。

本研究の結果、早期発見・早期治療が生存の観点からも医療費の観点からも有効であり、改めて早期発見と早期治療の重要性が示されました。

ヘルステック研究所の代表取締役 阿部 達也は次のように述べています。

「本研究において、肺がんの患者さんの実態として、肺がんの早期発見により手術を受けることができた場合は術後の経過が良好であり、総医療費においても負担の少ないことを示す結果となりました。今後の更なる解析により、肺がんの早期発見・早期治療に寄与することで医療に関連するさまざまな課題や、自治体の抱える課題に貢献できると期待しています。本研究を通じた産学公の連携により、京都市民の皆さまの健康増進の一助となれるよう、今後とも邁進してまいります」。

■今後の予定

本研究は自治体が管理しているデータベースの解析研究であり、同様の解析はあらゆる自治体において可能であると考えます。自治体が専門家と協力して施策の評価を行うモデルケースでとして同様の取り組みが広がることで、今後様々な自治体における施策の客観的評価及び改善につながる可能性があります。

今回の研究は肺がんをテーマにした統合データ解析研究の第2弾です。第1弾では肺がん治療の変化と生存割合の経年的な改善経過を記述的に明らかにし、肺がんの治療に要する医療費の増大と合わせて提示し、今回はその中での早期発見早期治療の医療的、経済的有効性を確認しました。第3弾では早期発見の一つの手段である肺がん検診の実態やその効果を検討する研究を実施、発表していく予定です。

■研究者のコメント

京都市の有するデータを用いた研究の第2弾として、非小細胞肺がん患者における初期治療の変化と生存割合の経年的な改善、医療費の増大といった実態を明らかにしました。これは、早期発見早期治療の重要性を改めて示す結果と言えます。解析に際しては統合データベースに関する背景知識、日本の医療費請求の制度や保険制度に関する知識、肺がんの治療に関する臨床的な知識といった広範な知見が必要であり、京都市の皆様や共著者の先生方を始めとしたチームとしての協力がとても重要でした。これからも肺がんをはじめ、様々なテーマで同データベースを解析し、京都市民、社会にその成果を還元して参る所存です。

京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 助教 島本大也)

自治体の持つビッグデータに含まれる価値を十分に引き出し、社会還元するためには、今回のような産官学民連携した取り組みが不可欠であり、こうした取り組みを継続できる体制の構築を目指しています。

京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 教授 石見拓)

京都市長 門川 大作氏のコメント

日本人の死因トップとなる「がん」の中でも、死者が最も多い肺がん。その早期発見・早期治療の大切さが、本市の有するデータによって改めて明らかになりました。本研究成果は、京都の強みでもある産学公連携の賜物。株式会社ヘルステック研究所はじめ関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。

■研究プロジェクトについて

(1)研究主体(共同研究)

   京都市  庁内で保有するビックデータを収集し、分析用のデータを作成

   京都大学 京都市が用意したデータを基に分析・研究を実施

(2)研究協力

   アストラゼネカ株式会社 分析に必要な費用を負担、 研究コンセプトの立案に協力

   (https://www.astrazeneca.co.jp/

   株式会社ヘルステック研究所 産学官の協力体制をコーディネート、 研究コンセプトの立案に協力

   (https://www.htech-lab.co.jp/

■論文タイトルと著者

タイトル:Survival and medical costs of non-small cell lung cancer patients according to the first-line treatment: An observational study using the Kyoto City Integrated Database

非小細胞肺がん患者における初回治療ごとの生存と医療費:京都市統合データベースを用いた観察研究

著  者:Tomonari Shimamoto, Yukiko Tateyama, Daisuke Kobayashi, Keiichi Yamamoto, Yoshimitsu Takahashi, Hiroaki Ueshima, Kosuke Sasaki, Takeo Nakayama, Taku Iwami

掲 載 誌:Thoracic Cancer

DOI:: 10.1111/1759-7714.1

■ヘルステック研究所について
株式会社ヘルステック研究所は、PHRを通じた個人の健康に貢献するサービスを提供する社会貢献型、研究開発型の企業です。
生涯PHRアプリ「健康日記」の無償提供のほか、研究・分析コンサルティングの提供や大学健診システムの開発、健康・医療ビッグデータの活用など、多岐に渡るサービスを展開しています。

https://htech-lab.co.jp/

配信元企業:株式会社ヘルステック研究所

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