3000年以上にわたって独自の文明を花開かせてきたメキシコの代表的な3つの古代文明に焦点をあてた特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」が、上野の東京国立博物館で、6月16日(金) から9月3日(日) まで開催される。一般公開を前に、本展の音声ガイドを務める上白石萌音が、展示室内で取材に応じた。幼少期の3年間、メキシコで暮らしたことがあり、“第二の故郷”と公言するメキシコの文明に触れ「どこか懐かしさも感じます」と瞳を輝かせていた。

展示室入口

マヤ、アステカ、テオティワカンのいずれの文明の人々も、火山の噴火や地震、干ばつなど厳しい自然環境のなか、神に深い信仰を捧げ、ときには畏怖しながら、大神殿や墳墓などの壮大なモニュメントを築いてきた。今回は、メキシコ国立人類学博物館をはじめとした主要博物館から、厳選した古代メキシコの至宝約140件が集結する貴重な機会。同時に、近年の発掘調査や研究成果の紹介によって、新たな知見に出会える機会にもなっている。

「死のディスク石彫」(テオティワカン文明)

ひと足先に展示を見学した上白石は、「神への祈りと切実さ。恐れを感じさせたり、ふっと頬が緩んだり、精密な技術に驚いたり、いろいろな気持ちでワクワクしました。大昔の文明の向こうに、人々の暮らしが見え、現代とのつがなりも感じました」と多様な環境から生み出された古代メキシコ文明の奥深さの魅力を語った。

「赤の女王」(マヤ文明

特に注目されるのが、マヤの王朝美術の傑作「赤の女王」の墓の出土品が、メキシコ本国内とアメリカ以外で初めて公開されることだ。都市国家パレンケの黄金時代を築いたパカル王の妃とされるが、赤い辰砂(しんしゃ)で覆われて埋葬されていたことから、この通称がつけられた。同展では、子孫に関連する遺物も合わせ、200年にわたる王朝一族の物語が浮き彫りにされる。

上白石も「赤の女王には、圧倒された!」と声をあげ、「先ほど学芸員の方が、『この機会を逃すと、日本では見られないかもしれない』とおっしゃっていて、本当に貴重な機会なんだなと思いました」。音声ガイドでは、その赤の女王に“憑依”する瞬間もあるといい「難しかったですが、頑張ったので、ぜひ聞いてほしいです」とアピール。「知らないこともたくさんあって、勉強になることばかりでした。壮大な歴史に触れて、ワクワクしてほしい。ぜひ家族と見に来たいですね。両親も喜ぶと思います」と締めくくった。

「鷲の戦士像」(アステカ文明)

今回は、パカル王と王妃(赤の女王)の墓、アステカの大神殿、テオティワカンの三大ピラミッドなどが、映像と臨場感あふれる再現展示で紹介されるなど、ダイナミックな展示も見どころ。世界遺産古代遺跡の魅力を存分に体感したい。

取材・文・撮影:内田涼

<開催情報>
特別展『古代メキシコ ーマヤ、アステカ、テオティワカン』

6月16日(金)~9月3日(日)、東京国立博物館にて開催
https://mexico2023.exhibit.jp/

上白石萌音