人事院『国家公務員給与の実態 ~令和3年国家公務員給与等実態調査の結果概要~』より、公務員の給与事情をみていきます。

国家公務員法改正案可決にみる「官民格差」の実態

2021年6月4日国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる国家公務員法改正案が賛成多数で可決・成立しました。令和5年度より2年ごと、1歳ずつ定年が引き上げられ、令和13年度に「65歳定年」の形が完成する予定です。

同法案について内閣人事局は「平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、豊富な知識、技術、経験等を持つ高齢期の職員に最大限活躍してもらうため」の施行としています。

2021年4月1日より高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの定年引上げや継続雇用制度の導入なども始まっています。就業期間の延長にともない、年金受給開始時期について、上限が75歳に引き上げられることも決定した今、高齢になっても働くための社会づくりが一気に進んでいる状況です。

しかし度重なって問題視されるのは「官民格差」。お給料について、その問題は根深いものです。

厚労省が発表した『令和4年 高年齢者の雇用状況』によると、「65歳までの雇用確保措置のある企業」は235,620社(99.9%)、「65歳定年企業」は52,418社(22.2%)となっています。

同調査では、60歳定年企業において、過去1年間で定年に到達した379,120人のうち、継続雇用された者は87.1%、継続雇用の更新を希望しなかった者は12.7%、継続雇用を希望したが基準に該当せずに継続雇用が終了した者は0.2%となったことも報告されています。

多くの会社員が継続雇用を希望している一方、日経新聞では定年後の年収について「定年前の6割以下」という回答が50%超であること報じています。国税庁のレポート『令和3年分 民間給与実態統計調査』によると、正規社員の平均給与は約508万円です(非正規社員の平均給与は約198万円)。60歳で半分以下になってしまえば、老後の生活資金を蓄えるのはかなり難しいといえます。

一方、公務員はというと、前述の国家公務員法改正案では60歳に達しても「7割」の給与を支給することが名言されています。

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人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、職員の俸給月額は、職員が60歳に達した日後の最初の4月1日(特定日)以後、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。

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相当な金額を保障されていることがみて取れます。実際、国家公務員の給与はいくらほどなのでしょうか。

国家公務員の平均給与、約41万円…退職金は2,000万円超

人事院の『国家公務員給与の実態 ~令和3年国家公務員給与等実態調査の結果概要~』によると、一般職を主とした、行政職俸給表(一)適用職員の平均給与月額は40万7,153円です。

ざっと41万円の7割ですから、平均額だけでみても、定年後30万円弱の給与は固いわけです(勤続年数によって給与は上がるため、実際はさらに上回った金額であることが推測されます)。繰り返しになりますが、民間企業で働く60歳以上の会社員の多くが猛烈な減給に遭っている現実があるなか、かなり羨ましくなる金額であることは間違いありません。

なお内閣人事局『国家公務員退職手当実態調査』によると、国家公務員の退職金は、常勤職員で2,068万円。勤続40年以上の場合、常勤職員の退職手当平均支給額は2,261万8,000円です。定年なら2,234万円、応募認定(=早期退職者募集制度に基づく退職)で2,466万4,000円、自己都合で2,251万円となっています。

国家公務員の給与が「高すぎる」…ともいえますが、民間企業の悲惨な実態が浮き彫りになったという一面もあります。真に「高齢者が働きやすい国づくり」のため、早急な格差是正が求められています。

(※写真はイメージです/PIXTA)