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ルーシーの予想復元 / image credit:WIKI commons CC BY-SA 4.0

 ルーシーは、エチオピアで発見された318万年前の化石人骨で、アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)の女性だ。

 アウストラロピテクス・アファレンシスの運動行動についてはこれまで、ほぼ完全な二足歩行をしていたと考える学者もいれば、手をついて四足歩行することもあったと考える学者もいた。

 だが、最新の研究により3Dで脚と骨盤の筋肉組織の復元を行ったところ、彼女が驚くべき筋力を持ち、我々現代人と同じように、しっかりと直立二足歩行で歩いていたことが明らかとなったという。

【画像】 ルーシーの筋肉組織を3Dで復元

 最新の研究で、ケンブリッジ大学の研究者、アシュリーワイズマン氏が、3Dコンピューターモデルで、初めてルーシーの軟組織をデジタル再生した。

 脚と骨盤の筋肉組織を再現したこの映像は、時に樹上生活もしていたと思われるこの人類の祖先が、300万年以上も前に、現代人と同じように完璧に直立歩行していたことを裏付けている。

 まずは、MRICTスキャンで現代人の筋肉経路のマッピングから始め、次にルーシーの骨と関節の仮想再構築に焦点を当て、骨の上の筋肉の瘢痕から手がかりを組み合わせた。

 その結果得られたモデルから、ルーシーが直立して移動することができただけでなく、強靭な脚の筋肉も備えていたことがわかった。

[もっと知りたい!→]なぜ人類は二足歩行するようになったのか?その本当の理由にズームイン!

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アウストラロピテクス・アファレンシス化石 AL 288-1、別名「ルーシー」の下肢筋肉の 3D 復元/ image credit:Ashleigh Wiseman/University of ambridge

地上と樹上の両方で生活

 その筋肉は、彼女たちが半地上、半樹上生活を送るのを容易にしたと思われる。

 現代人の総重量のおよそ50%と比較すると74%もあったらしい脚の大きな筋肉のおかげで、アウストラロピテクス・アファレンシスは、地上と樹上の両方を活用できるようになったと、研究者たちは考えている。

ルーシーの直立歩行能力は、体の中で筋肉が占める経路と空間を再構築して始めてわかりました」ケンブリッジ大学マクドナルド考古学研究所のワイズマン氏は語る。

「現在、私たちホモ・サピエンスは、膝をまっすぐ伸ばして歩くことができる唯一の生き物です。ルーシーの筋肉は、彼女も私たちと同じように二足歩行が得意だったことを示していますが、一方で、木の上も住処にしていた可能性があります。おそらく、ルーシーは今日のどの動物種にも見られない歩き方、動き方をしていたのかもしれません」

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研究プロセスの概要を示すワークフロー図 / image credit:Ashleigh Wiseman/University of ambridge

[もっと知りたい!→]人類の顔の進化をモーフィング。600万年を2分で見られる動画。

猿人ルーシー

 1974年ルーシーの骨はエチオピアのハダルで、ドナルドヨハンソンによって発見された。

 当初から、ヒト族のものだろうと考えられていたが、その4年後、正式にAL288-1として知られるようになった。

 ケニア、ラエトリでほかの化石が発見されたことから、ルーシーはまったく新しい系統ではないかとされ、独自に分類された。

 以来、繁栄していたアウストラロピテクス・アファレンシスが、390万年前から280万年前のおよそ90万年間生きていたことを突き止めることができた。

 ルーシーは、1974年の発掘現場で、ラジオから流れていたビートルズの曲『ルーシー・イン・ザ・スカイウィズダイヤモンド』にちなんで名づけられた。

 発見直後、骨の分析から、彼女は女性で、親知らずがあり、特定の骨が融合していたことから、十代の若者だった可能性が高く、身長は105センチほどだったことが判明した。

強靭な脚の筋肉で完全な直立二足歩行をしていた

 ルーシーがどのように歩いていたのかについては、多くの議論があった。

 だがこの研究でわかった、特定の膝関節と筋肉構造から、彼女はチンパンジーのように前屈みになって、手の指関節を地面につけて歩くのではなく、ぐらついたりすることなく完全に直立して歩いていて、木に登る身体能力もあったという、よく言われている説を裏付けることになった。

「アウストラロピテクス・アファレンシスは、およそ300~400万年前、東アフリカの密林だけでなく、木の茂った草原も歩き回っていたことでしょう。ルーシーの筋肉の復元から、彼女が両方の居住地を効果的に活用することができたことがわかります」ワイズマン氏は言う。

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多角的な筋肉の断面図 / image credit:Ashleigh Wiseman/University of Cambridge

ルーシーの研究から、ホモ・サピエンスについての知見が得られる可能性

 化石の年代測定は、人類の進化に関する大変貴重な情報を提供してくれるが、特定の動きを追跡できれば、300万年前にホモ・サピエンスがどのように現れ、急速に地球上に広まっていったのか、もっと完全な全体像が得られるだろう。

「筋肉の再構築は、例えば、ティラノサウルスの走行速度を測るために、すでに利用されています。同様の技術を人類の祖先に適用して、現在の私たちが失ってしまった能力を含め、人類の進化を推し進めた身体運動のスペクトルを明らかにしたいと思っています(ワイズマン氏)」

 この研究は、『 Royal Society Open Science』誌に掲載された。

References:First hominin muscle reconstruction shows 3.2 million-year-old ‘Lucy’ could stand as erect as we can | University of Cambridge / Lucy the ancient human walked fully upright, and she was ripped / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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猿人ルーシーは、強靭な脚の筋肉を持ち、完全な直立二足歩行をしていたことが明らかに