●東京の下町・根津にある居酒屋『けい』にある、舌の肥えた著名人を唸らせる名物「ステーキ丼」。実際に訪れてみると、その魅力は料理だけではなかった。

 昭和のおもかげが残る人気観光地・谷根千エリアの1角である文京区根津は、食も注目されるエリア。そこに観光客や地元の人から愛される「ステーキ丼」の店があります。根津に長年勤める筆者の家族からも、満足のいく「ステーキ丼」を食べたいなら居酒屋『けい』に行くべきだ、とずっと言われ続けてきました。

 かつては立川談志師匠も愛した『けい』の名物「ステーキ丼」を食べに行ってみましょう。

不忍通りに面した赤い壁が印象的な店『けい』

 根津神社に向かう途中の根津神社交差点の一角に『けい』はあります。真っ赤な壁と龍の暖簾が印象的な店で、昔は夜の居酒屋営業もあったそうですが、最近は昼営業のみとなっています。12時過ぎに入ると、玄関土間にはすでに靴がいくつか並んでいました。

本日のメニュー。季節で期間限定メニューに変更も有り [食楽web]
本日のメニュー。季節で期間限定メニューに変更も有り [食楽web]

 店内を見渡すと、掘りごたつのテーブルが2台にカウンター席とこじんまりしており、テレビでワイドショーが流れている懐かしい風景。席に着くと、昼休みの会社員であっという間に席が埋まりました。

 店は、女将さん……というより、むしろお母さんと呼びたい家庭的な雰囲気の女性が1人で切り盛りしています。お母さんのいるカウンターはお盆が積んであったり、大きな鉢にひじきが盛られていたりと物がいっぱい。眺めているだけでなんだか楽しい気分になります。

コスパ抜群! 名物「ステーキ丼」は想像以上に絶品だった

「ステーキ丼」ひじき、みそ汁、お新香付 1000円(税込)
ステーキ丼ひじきみそ汁、お新香付 1000円(税込)

 こちらのお店は、半セルフスタイル。まずお母さんからカウンター越しに声がかかったら、お新香とひじきが乗ったお盆を取りに行き、自分のテーブルに配膳。同じ要領で、次はみそ汁。この日は常連さんと思わしき女性がお盆に乗った料理をリレーしてくれ、その都度お盆を戻す手伝いをしてくれました。

 昼からお酒が飲める店のため、すでに飲んでいる人もちらほら。テレビの音と共にまわりの会話がほぼ聞こえてしまうくらいの店内は、皆が和気あいあいとしています。そうこうしているうちに「ステーキ丼」がついに登場!

 ご飯の上にレタスが敷かれ、ぶ厚くカットされたステーキが贅沢に乗っています。中はレア、外側は良く焼けたステーキの色に仕上がっており、お肉のグラデーションが食欲をそそりますね。

 ステーキだけを食べてみると、ジューシーなステーキソースが口の中にジュワっと広がります。やわらかな赤身肉で脂身が少なめ。ソースはしょう油ベースの辛口です。全体に細かい揚げにんにくが散りばめられ、風味が良い。パリパリのレタスステーキを合わせて食べれば、さっぱりした味わいになります。あたたかなごはんはソースが染みしみで、食べ応え抜群!

 副菜のひじきは、だしの味がふんわりしていて箸休めにピッタリですよ。歯応えのいい高菜はそのまま食べても良いですし、丼にのせて肉やごはんと一緒に食べてもよく合います。途中にわかめのみそ汁をはさみつつ、モリモリと食べ進めていきました。お腹がいっぱいで大満足。気付けば、丼ぶりは空っぽです。

調査結果

 常連客がいるから入り辛いなんて心配はいりません。さっと暖簾をくぐってみてください。そして、声をかけ、空き席に座ってみて。そこには、お母さんを中心とした居心地の良い空間があります。お母さんの準備する様子をのんびり眺め、料理が出来たら配膳を手伝い、「ステーキ丼」をいただく。『けい』には、店を出た時に素敵な昼食だったと思える、食と人のあたたかさがありました。立川談志師匠の書く通り、旨いョォ~ここは。

(撮影・文◎乃々)

●SHOP INFO

店名:けい

住:東京都文京区根津1-23-13
TEL:03-3823-4645
営:10:30~15:00

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