主に太平洋側の水深200メートルから1000メートルの深海に生息しているはずのものが、鳥取県岩美町の海岸に漂着。それが今年1月に騒動となった、ダイオウイカの死骸である。

 調査にあたった「山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館」は、なんらかの理由で日本海側に流され、水温の低さと海流により、弱って漂着したものとみているが、損傷が激しく、残留部位は3メートル20センチほどにとどまった。全体はかなり巨大だったとみられることで、UMAファンの間で、海の怪物「クラーケン」神話が再燃することになる。

 クラーケンとは、航海する船を捕まえ、それを沈めては乗組員を食い殺すという、タコやイカなどの頭足類に似た、伝説のUMAだ。1755年にデンマークの司教エリック・ポントピダンが、著書「ノルウェー博物誌」で紹介し、世界中で知られるようになったわけだが、

「1861年11月、フランスの砲艦アレクタンが、海面に漂うクジラよりも巨大な謎の生物を発見しました。乗組員はこの生物を攻撃し、体の切れ端を持ち帰った。それが学会に提出され、信じられないほど巨大なイカが実在することが明らかになったんです」(海洋研究家)

 その後、世界各地で巨大なイカが発見されることになる。1887年にはニュージーランドの海岸で、体長18メートルものイカの死骸が見つかり、「ダイオウイカ」の存在が広く認知されることになった。

 海洋生物研究者の間では、ダイオウイカは浮力を得るために比重の軽い塩化アンモニアを蓄積していて、力は極めて弱く、攻撃的ではない、との見解がある。となれば船を襲い、人間を食うというクラーケンの生態とは、あまりにもかけ離れている。先の海洋研究家が言う。

「ところが、1930年ノルウェーの戦艦ブランズウィック号が巨大な頭足類の襲撃を受ける、という事件が発生したのです。その生物は海中から姿を現すと、船の周りをゆっくりと旋回し始め、突然、触手を船に巻き付けて攻撃してきた。乗組員が砲撃すると、スクリューに巻き込まれた後、海底に姿を消してしまったそうです。つまり、この謎の生物こそが、クラーケンだったのではないかと言われているわけです」

 2000年代に入ってからも、巨大生物による襲撃事件はあとを絶たない。2003年には、世界一周を目指すレース中のヨットが、10メートルを超える巨大な軟体動物に襲われる事件が発生。乗組員がヨットを急旋回させ、九死に一生を得たことが報道されている。

 はたして「犯人」はダイオウイカなのか、謎のUMAクラーケンなのか。宇宙以上に、まだまだ謎が多いとされる深海。そこに生息する未知なる生物の秘密が解き明かされる時は来るのか。

ジョン・ドゥ

アサ芸プラス