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みるみる減っていく老後資金(写真:Luce/PIXTA)

老後破綻が増えている。日本弁護士連合会の「破産事件及び個人再生事件記録調査」の最新のデータ(2020年)によると、自己破産者に占める「70代以上」の割合は9.35%で、2002年の調査(2.73%)と比べて3倍以上に増加したことが明らかになった。

「現役時代よりもはるかに収入が下がっているのに、出費がかさんでしまって老後破綻になるケースが多いのです。物価が上がっていくなか、今後も老後に破産する高齢者は増えていくでしょう」

そう語るのは節約アドバイザーでFPの丸山晴美さん。老後破綻を防ぐには、収入に合わせてやりくりできる術を身につけること。その第一歩が“固定費”を見直すことだという。

「固定費とは住居費、光熱費、通信費、保険料など毎月発生する費用のことです。サプリメントの定期購入や、動画や音楽の配信など商品やサービスを定額で利用するサブスク代(サブスクリプションサービス料金)も含まれます。最近は、ペーパーレス化により請求書や領収書が手元に残らないため固定費の“見えない化”が進行。無意識のムダ遣いが常態化しているケースが少なくありません」

そう語る丸山さんが提案するのが固定費の書き出し。まずは銀行口座やクレジットカードの明細なども見て固定費を把握することだ。

「書き出して終わりにせずに、固定費が1年だといくらになるか数字にすること。どのくらい家計の負担になっているか“気づく”ことができます」(丸山さん、以下同)

■必要なものは残しつつムダなものは解約を

節約の効果が出やすいのが光熱費。電力大手7社は電気料金を6月使用分から値上げしている。

「節電すれば電気料金が減るのは言うまでもないことです。ただし、暑い夏にエアコンを使用しないと命の危険もあります。よしずやすだれで窓から入る熱をカットし、扇風機を併用すると、エアコンの設定温度を高めにしても十分体が冷えます。少しの工夫で無理のない節電も可能です」

やみくもに固定費を削減すればいいわけではない。たとえば、自動車の維持費も年間50万円以上かかるが、車を手放せば生活が成り立たない地域もある。残すところは残しながら、ムダな固定費を見直すことが重要だという。

「子供が自立しているなら、高額な死亡保障の生命保険はやめてもいいでしょう。また通信費については、キャリアのサブブランドや格安スマホに替える選択肢も。スマホがメインで固定電話を使わない人は解約するのも一考。振り込め詐欺のリスクを下げるだけでなく、月2千円ほどカットできます」

固定費は1回見直すと、節約の効果が持続するのがメリットだ。

「コロナ禍で自宅にいる時間が長かったことで動画や音楽の配信サービスや有料のアプリに登録した人は、今も必要かどうか検討するといいでしょう。通っていないスポーツジムや習い事、サプリメントの定期購入など必要性を見極めることも忘れないでください」

確かな目を持つことが老後破綻を防ぐようだ。