大手銀行の住宅ローンの固定金利が10年ぶりに上昇し、住宅購入やローン返済に不安を抱いている人が増えています。住宅ローン相談実績25年・5,500件超の実務家FPとして活躍する平井美穂氏が、著書『金利上昇でもあわてない 住宅ローンの超常識』(河出書房新社)から、住宅ローンの正しい知識をわかりやすく解説します。今回は、現在の金利上昇局面で住宅ローンを組んで家を買うべきか否かの判断の基準をお伝えします。

「住宅の種類」と、「今後のライフプラン」によって適している金利が異なる

住宅を購入する方に向けて、「購入する住宅の種類」や「今後のライフプラン」によって、「適した金利」が異なるという考え方についてお伝えしたいと思います([図表1]参照)。

新築マンションを購入→「当初10年固定金利」または「変動金利」

2022年に首都圏で販売された新築マンションの平均面積は66㎡で、間取りは2LDKが中心です。2人家族であれば十分ですが、結婚や出産を機に新築マンションを購入する人もいます。

そうした人のなかには、10年も経つと子供部屋が必要になり引っ越していく人が少なくありません。このように10年で買い替えをするのであれば、「当初10年固定」の金利が適しています。

「全期間固定」よりも低い金利で借りることができ、なおかつ金利変動のリスクを回避することができます。

あるいは、実際に返済を続ける期間が短ければ短いほど金利変動のリスクは少なくなるので、思い切って「変動金利」で借りるのも選択肢のひとつでしょう。

金利が低いので月々返済額が少なくて済む分、いざというときのために毎月預貯金を積み立てていけるとなお安心です。

 

中古マンションを購入して20年後には高齢者住宅に住み替え→「当初20年固定金利」

中古マンションを購入して20年くらい住んだら「サービス付き高齢者住宅」に住み替える予定の方もいます。

その場合、当初20年間の金利を固定する「20年固定金利」を選択するのもひとつです。

20年固定金利には、返済期間も20年にしなくてはならない金融機関と、返済期間は35年にして当初の20年間だけ固定金利にできる金融機関とがあります。

返済期間を20年にすると月々の返済額が多くなってしまうようであれば、返済期間は35年のまま20年固定金利を選べる金融機関を選択したほうが賢明です。

毎月の収支がぎりぎりのなかでやりくりするよりも、ローンの返済をしながら定期積立貯蓄ができるくらい余裕を持ったほうが安心できます。

新築戸建に永住、リノベーションした中古戸建に永住→「全期間固定金利」

戸建を購入する人の多くは、生涯住み続ける「永住」を希望しています。

場合によっては、世代を超えて2世代・3世代にわたり住み続けるケースもあります。住宅ローンの借り方も、親子2代で借りる親子リレー返済という選択肢も出てくるかもしれません。

いずれにしても返済期間が長ければ長いほど金利が変動するリスクは高くなるので、こうしたケースに適しているのは全期間固定金利です。

さらに、全期間固定金利の代表選手であるフラット35では、新築の長期優良住宅やZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を建てると、当初10年間の金利を▲マイナス0.5%優遇してもらえる制度があります。

中古戸建を購入する場合は、耐震性や省エネルギー性能などを向上させるリノベーション工事をおこなうと、同様に当初10年間▲0.5%の金利優遇を受けることが可能です。

このように購入する住宅と相性のよい優遇制度がある金融機関で借りるという方法もあります。

あくまでもひとつの考え方として、住宅の種類と今後のライフプランによって適している金利をお伝えしました。

実際には、戸建であっても変動金利を選択することもあるでしょう。

金利が上昇し、家計への負担が増えたときの対処法は、変動金利が上がる前に固定金利を選択するという方法以外にもあります。

専業主婦の奥様が働きにでる、副業をする、金利が上昇した際に利息収入が期待できる債券で運用する、長期的に値上りする株式で運用する、繰り上げ返済して本来支払うはずの利息をカットするなど、さまざまです。

変動金利か固定金利か、変動の場合は金利が上がったときのシミュレーションを作成することと併せて、ご自身に合った対処法を決めておくようにしてください。

平井 美穂

平井FP事務所

代表ファイナンシャルプランナー

(※写真はイメージです/PIXTA)