2022年夏、淀川のワンドおよびその周辺水路で、約30年ぶりにコイ科魚類のツチフキが確認されました。ツチフキ環境省レッドリストで絶滅危惧IB類、大阪府レッドリストで絶滅危惧I類に選定されており、淀川での公式の記録は1994年以来となります。ただし、由来がまだ明らかとなっていません。
本研究の成果は、『Ichthy, Natural History of Fishes of Japan』誌において、6月10日にオンライン公開されました。

大阪府守口市で採集された ツチフキ。体長約4.7cm。

ツチフキは、コイ目コイ科カマツカ亜科に属する体長5-8cmほどの小型の底生性の純淡水魚で、国内では本州の近畿・山陽地方と九州北部、国外では朝鮮半島や中国中・北部に分布しています。流れの緩やかな泥底に生息します。産卵も泥底で行われ、雄がすり鉢状の巣を作り、そこに雌を呼び込んで産卵します。

淀川では、このような環境が河川改修、水路のコンクリート化によって失われ、さらにオオクチバスブルーギルといった外来魚が侵入・増加したため激減し、1994年を最後に、30年近くまったく姿が確認できない状態となっていました。そのため、絶滅した可能性も考えられていました。

  • 再発見の経緯について

2022年夏、以下の調査時にツチフキが確認されました。

1. 大阪府守口市淀川ワンド(2022年6月23日):イタセンネット(淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク)の外来魚防除およびモニタリング調査

2. 大阪府高槻市(2022年8月28日):学芸員川瀬の魚類調査兼マーシーの獲ったり狩ったり動画撮影

3. 大阪府守口市淀川ワンド(1と同じ場所)(2022年9月1日):(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所の魚類調査

※ ミトコンドリアDNA解析だけでは在来性が確認できず、現在まだ調査中です。

淀川における最初の再発見は、春から秋にかけて毎月実施している市民団体による外来魚防除およびモニタリング調査時であり、地道な市民活動が重要な発見につながる好例と言えます。また、ツチフキの増加は外来魚防除の成果の可能性もあり、今後の活動の励みにもなるものと考えられます。

  • 論文情報

・雑誌名:『Ichthy, Natural History of Fishes of Japan』

・論文題名:『大阪府淀川におけるツチフキ(コイ科カマツカ亜科)の再発見』

・著者:川瀬成吾(琵琶湖博物館)・山本義彦(大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター)・鶴田哲也(大阪産業大学デザイン工学部環境理工学科)・田中耕司(大阪工業大学知的財産学部・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)

・発行:2023年6月10日

・ページ数:7ページ

・URL:https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/ichthy/INHFJ_2023_033_014.pdf

  • 本資料提供は、共同研究チームである(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所との同時プレスです

問い合わせ先:

滋賀県琵琶湖博物館

研究部担当学芸員、企画・広報営業課:川瀬成吾

Tel 077-568-4811

E-mail: info@biwahaku.jp

地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所 生物多様性センター

担当研究員:山本義彦

Tel: 072-833-2770

E-mail: YamamotoY@knsk-osaka.jp

(配信先)滋賀県政記者クラブ、南部記者クラブ、府政記者会、大阪科学・大学記者クラブ、枚方記者クラブ

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配信元企業:滋賀県琵琶湖博物館

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