この釣書をもらったほうはどう反応したらいいのか…なんとも興味津々だろう。

 6月20日放送のNHK連続テレビ小説らんまん」第57回では、主人公の万太郎神木隆之介)が菓子屋の白梅堂を訪問。寿恵子(浜辺美波)の母親・まつ(牧瀬里穂)に、結婚の挨拶を行う場面が描かれた。

 まつの手には、寿恵子の釣書が。結婚相手に渡す自己紹介である釣書には、寿恵子の本名が「西村壽惠子」であることや、慶應元年(1865年8月9日生まれの17歳であることなどが書かれていた。それに加えて寿恵子の趣味も綴られており、視聴者の興味をそそっていたようだ。

 万太郎はその釣書を、土佐・佐川に住む祖母のタキ(松坂慶子)に郵送。病床に臥せっている様子のタキは、手元に釣書を広げていた。

「釣書には父親が『彦根御家中の者』で、母親が『柳橋芸者』だったと明記。父親は落馬事故が原因で亡くなりましたが、その時期は西南の役(1877年1月~9月)だったようです。その亡き父から譲り受けた本についても、記載がありました」(テレビ誌ライター)

 その箇所は「父与譲受候南總里見八犬傳を能く讀み」(父より譲り受けた南総里見八犬伝をよく読み)というもの。全98巻、106冊に及ぶ大衆小説の里見八犬伝に夢中になっていると、自己紹介していたのである。

 寿恵子は万太郎の手を取って、二階の自室に案内。夜を徹してやることがあると母親には告げていたが、それは二人で里見八犬伝を読む更けることだったのだ。

 万太郎は里見八犬伝を読んだことがなかったようで、第13巻を読み終えたところで「ここで終わるがか! 次の巻」と大興奮。第14巻に手を伸ばしたところで寿恵子と手が重なり、互いにハニかむというベタな場面が描かれていた。

「この場面、コミカルな一面を描いているようで、何気に重要なシーンだったのではないでしょうか。植物学に身を捧げる万太郎の人生はかなりエキセントリックなもの。そんな万太郎の生き方に寿恵子は理解を示し、支えようとしています。同様に万太郎も、里見八犬伝を愛読し、著者の曲亭馬琴に傾倒する寿恵子の腐女子ぶりを認め、同じ本を同じように楽しむことで、妻となる女性への理解を深めていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 寿恵子が明治の腐女子なら、万太郎は好人物ではあるものの、どこから見ても変人だ。そんな二人がお互いを認め合ったからこそ、これから迎える生活苦に際しても、手を取り合って生き抜いていくことができるのだろう。

 里見八犬伝を読みながら、お互いの手をしっかりと握っていた万太郎と寿恵子。この場面は今後の二人を象徴する場面だったのではないだろうか。

アサジョ