名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行を繰り返していた問題で、法務省が設置した第三者委員会が6月21日、斎藤健法相に提言書を提出したことを受けて、日弁連の小林元治会長は同日、会長声明を発表した。

第三者委の提言書は、原因や背景事情について、名古屋刑務所に限られた問題ではなく、全国の刑事施設に共通する問題として、収容者の人権を尊重する意識が薄いこと、規則秩序の維持を過度に重視していること、個々の受刑者の特性に応じた処遇をおこなう体制にないことなどを分析している。

日弁連の声明は「約6カ月の短期間で、相当踏み込んだ分析、検討を加えた提言を取りまとめたこと」を評価した。一方で、提言の内容が制度の運用改善の域を出ていないことについては「不十分」とし、懲罰制度や不服申し立て制度などについて「法改正による制度の改革に踏み込むことが必要」とした。

日弁連が6月21日に開いた記者会見で、第三者委の委員をつとめた土井裕明弁護士は、事件が起こった背景について「刑務所は犯罪を犯した人を懲らしめるための施設という現場職員の理解が多かれ少なかれあった。思った以上に受刑者が言うことを聞いてくれないことがあり、懲らしめるためだからと多少強く出ても構わないという意識がおそらくあったのだろう」と話した。

2022年6月には、懲役と禁錮の両刑を一元化する「拘禁刑」を創設する改正刑法が成立した。土井弁護士は「刑罰の目指すところが、働かせて懲らしめるものから、更生を促して社会に戻すところに変わってくるはずだ。受刑者にどう接するか根本的に変わっていく可能性がある」と期待した。

名古屋刑務所の暴行問題、提言書受け日弁連が会長声明「法改正による制度改革に踏み込むべき」