もしかすると自分の息子は発達障害なのでは?周囲からは「大丈夫ですよ」と声を掛けられるが、不安は募り、育児と仕事に悩む日々。元保育士はちみつこ(@hachi_mitsu89)さんは、息子のきいくんが自閉症スペクトラムと診断されるまでの経験を漫画「はざまにいた、息子と私」に描いている。今回は療育でのきいくんを描いた「療育Rくんとの時間。」を合わせて紹介するとともに、はちみつこさんに漫画を描きはじめたきっかけや、当時の思いを聞いてみた。

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■4歳のときに自閉症スペクトラムと診断。「安堵と悔しい気持ちが半々」

長男のきいくんと次男のあおちゃん、2人の子供を育てているはちみつこさんは、発達障害を持つ子供と育児や、保育士時代の経験などについての漫画をSNSに投稿している。漫画を描こうと思ったきっかけは何だったのだろうか。

「次男の育休中に、趣味でお絵描きを始めたのがきっかけです。当時はインスタの投稿の仕方すらわからなかったのですが、せっかくだから今まで悩んでいたきいのことを投稿したり、発達障害について情報交換できたりしたらいいなあという思いからでした」

「はざまにいた、息子と私」は、はちみつこさんが息子のきいくんの発達に不安を感じながらも、なかなか診断に至らないまま、初めての育児や仕事に取り組んだ記録だ。成長の速さには個人差があるため「発達障害」という判断を下す難しさと、一方で孤独に悩みを抱える親の辛さが赤裸々に描かれる。

はちみつこさんが、きいくんが発達障害では?と思ったきっかけと、実際に診断が下りたときの思いを聞いた。

「最初に『あれ?』と思ったのは1歳過ぎでした。何か1ミリでも思い通りにいかないと、奇声や癇癪がすごくて。ちょっと近くのスーパーに行くのさえ、大変で憂鬱でした。診断が下りたのは4歳のときで、少し遅めです。『やっぱりそうだったか』という安堵の気持ちと、『今までどこに相談しても大丈夫と言われ続けたのに、なんでもっと早く診断がつかなかったんだろう?』という悔しい気持ちと半々でした」

■子供に抱く悩みや課題はそれぞれ。「寄り添える投稿になるよう心掛けています」

自閉症スペクトラムと診断された後、きいくんは療育へ通い始める。「療育Rくんとの時間。」は、おとなしい性格のきいくんが、療育で出会った全くタイプの違う男の子、Rくんとのエピソード。療育に行ったことで、きいくんとはちみつこさんはそれぞれどんな変化を感じたのだろうか。

「きいが初めて家族以外に『やりたくない』や『嫌だ』など、自分の素直な気持ちを言えるようになったのが療育の先生でした。私自身、きいの発達についての不安やこれからの見通しなど、その都度先生に相談しアドバイスを頂けたので、きいにとっても私にとっても、とても良い居場所ができたなという感覚です」

漫画には「辛かったですよね」「同じ思いをしている人がいたと知って元気をもらいました」など、同じ発達障害の子供を持つ人から、共感のメッセージが多く寄せられている。はちみつこさんに、漫画を描いて発信するときに気を付けていることを聞いてみた。

「コメントを見て、私のように我が子の発達に悩む親御さんが本当にたくさんいるんだなあと改めて実感しています。子供に対して抱く悩みも課題も本当にそれぞれなので、インスタで発信するときは『必ずしもこうしなければならない』『こうした方がいい』というような表現は避け、『悩んでいるのはあなただけじゃないよ、1人じゃないよ』と寄り添えるような投稿になるよう心掛けています」

最後に、読者へのメッセージを貰った。

「私自身、この先どうなっていくんだろうという不安や現状の課題、悩みはまだまだ尽きません。私がインスタに漫画を投稿することで気分転換になっているように、1人でも多くの方が自分だけで抱え込んだり、孤独に悩んだりすることがなくなるといいなと思っています」

はちみつこさんは、今回紹介した漫画の他にも、次男が1歳で発達検査を受けた話や友人の経験など、子供の発達や成長に関する漫画を投稿している。ぜひ、一度読んでみて欲しい。

取材:文=松原明子

「はざまにいた、息子と私」1-1/画像提供:はちみつこ(@hachi_mitsu89)