米テスラが、自社の急速充電設備を競合自動車メーカーに次々と開放している。6月20日には、EV(電気自動車)スタートアップ企業の米リヴィアン・オートモーティブが、テスラ規格の採用を決め、契約を結んだ。

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 これに先立ち、米ゼネラル・モーターズ(GM)と米フォード・モーターも自社の顧客がテスラの公共充電網を利用できるようになると明ら

かにした。充電ステーション運営大手の2社もテスラ式に対応すると発表しており、米国ではテスラの充電方式が標準仕様になりつつあるようだ。

GMなど、25年以降の新車にテスラ式充電ポート

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、リヴィアンやGM、フォードオーナーなどは2024年から、テスラが米国とカナダで展開する1万2000基以上の急速充電器を利用できるようになる。当初は専用アダプターが必要になるが、25年以降に各社が市場投入するEVについては、テスラ規格に対応する充電ポートを標準搭載する。

 現在テスラ車以外のEVは、その大半が「CCS:Combined Charging System、コンボ」と呼ぶ急速充電規格を採用している。数十億ドル(数千億円)を投じて、幹線道路の充電設備設置プログラムに取り組む米連邦政府は、CCSを後押ししている。欧州でも、コネクター形状が異なるものの、同様のCCS規格を採用している。

 米国では一部自動車メーカーがCCS規格による充電インフラを自前で整備しているが、大半は米チャージポイント(ChargePoint)や米EVゴー(EVgo)といった充電ステーション運営企業にインフラを依存している。

テスラ、独自「NACS」でインフラ構築、導入加速

 一方、テスラは独自に「NACS:North American Charging Standard」と呼ぶ規格を定め、自前でネットワークを構築してきた。米国では現在、テスラが持つ1800カ所のステーションに、同社規格の急速充電器が約1万9400基ある。ロイター通信は米エネルギー省のデータを引用し、現在米国で利用できる急速充電器の60%はテスラのものだと報じている。こうしたなか、CCSを支持してきた米政府はテスラに充電網の開放を求めてきた。

 先ごろはチャージポイントとEVゴーもテスラ規格に対応すると発表した。こうしてテスラ式を導入する動きが広がっている。ロイターによると、EV充電インフラ企業の米BTCパワーは、自社製充電器をテスラ規格に対応させると明らかにした。

 米テキサス州は23年6月20日、連邦資金を活用した幹線道路充電設備設置プログラムに参加するステーション運営企業に対して、テスラ規格とCCS規格の両方のプラグ設置するよう義務付けると明らかにした(ロイターの記事)。

 韓国・現代自動車は、テスラの充電規格とより互換性の高い車両を製造することを検討していると述べた。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、傘下に「ジープ」ブランドを持つ欧州自動車大手のステランティスは、テスラ規格を評価中だという。トヨタ自動車ホンダ日産自動車は、将来に向けてさまざまな充電の選択肢を検討していると述べた。

テスラに追加収入

 自前の充電ステーションを、他社製EVに解放することで、テスラは追加収入を得ることができる。ロイターによれば、過去の四半期決算における、充電料金を含む「サービスとその他の収入」は全売上高の10%弱だった。テスラは今のところ、充電収入を分離して公表してない。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は同社が充電設備の開放を拡大していることについて、「道義的に正しいことだ」と説明した。しかし同氏は、「ただ、これが財務的に賢明であるかどうかはまだ分からない」とも述べたという。

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テスラの充電施設(写真:AP/アフロ)