『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』(フジテレビ系/毎週日曜23時15分)が6月18日に完結。最終話で上弦の肆・半天狗鬼舞辻無惨(※)の回想シーンが描かれ、大きな反響を呼んだ。直前のシリーズ「遊郭編」に登場した上弦の陸・妓夫太郎と堕姫は過酷な人間時代に同情を禁じ得ない部分もあったが、「刀鍛冶の里編」に登場した鬼は玉壺も含めて全員が鬼になる前から常軌を逸する人間性を見せたことで視聴者の度肝を抜いた。

【写真】無限城に集結した上弦の鬼&不機嫌な鬼舞辻無惨

 「刀鍛冶の里編」で登場した鬼は、上弦の肆・半天狗と上弦の伍・玉壺。霞柱・時透無一郎が玉壺、竈門炭治郎半天狗の頸をそれぞれ斬り落とした。里に被害は出たものの、鬼殺隊の活躍により刀鍛冶の全滅を免れる形で物語は幕を下ろした。

 なお、最終話である第十一話では半天狗と無惨の人間時代の回想も描かれた。2つのエピソードに共通するのは、どちらも人間の頃からおぞましい性格をしていたこと。SNSでは「半天狗無惨様の怒濤のクソ回想、1日で接種できる愚かニウムの容量を超えてしまっているよ!」「過去が明かされたら更に評価下がるパターンw」などと話題を呼んだ。

■「儂が悪いのではない」身勝手を極める狂人

 人間の頃の半天狗は、目が見えないと偽って盗みと殺しを繰り返していた。やがて捕縛され打ち首の沙汰が下されると、口封じのため奉行まで手にかける。盗みを咎めた者を殺したときは当然のように「儂が悪いのではない!! この手が悪いのだ」と妄言を吐くなど、非常に身勝手で自分本位な人間だった模様。

 鬼になってからもその特性は残っており、人間を殺すことには何のためらいもない一方で、いざ自身に危害がおよぶと「儂がああああ可哀想だとは思わんのかァァァァア!!!」「弱い者いじめをォするなああああ!!!」と激昂する様は生前の身勝手さを象徴している。また、炭治郎から逃げる際に「儂は生まれてから一度たりとも嘘など吐いたことがない」というシーンでは、事実や解釈を都合のいいように捻じ曲げる思考が見てとれる。

 視聴者からも「半天狗の過去…お奉行様を殺しただけじゃなく、かなりクレイジーな奴だった…」「鬼になる以前からド級クソヤロウだった」「悪の中でも特に下劣ですね」と散々な言われようだった。

■怒ると殺す 癇癪持ちの冷血イケメン

 無惨の回想は平安時代。まだ人間だった無惨は病を患い、二十歳になる前に死ぬと言われていた。そこで“善良”な医者が生き永らえるよう苦心していたが、病状が悪化していると思い込んだ無惨は腹を立てて医者を殺してしまう。

 この治療がきっかけで鬼化し、人の血肉を欲するようになった無惨は「それであれば人を喰らえばよい。邪魔な奴らがいるのなら排除すればよい」と人を襲い始める。また日の光を浴びると死ぬことに腹を立て、太陽を克服する手がかりを得るためにも大勢の人間を殺している。自分以外のあらゆる命が無価値だという考えは目的遂行のため手駒として生み出した鬼に対しても同じで、過去のアニメシリーズでは怒りに任せて鬼を殺すシーンが描かれることもあった。

 病を根治しない医者に怒り、昼間の行動が制限される現状に怒り、なかなか成果を上げない鬼たちに怒る。怒ると殺す。殺した人間や鬼の命は顧みない。生物としてだけではなく、性格も鬼と呼ぶにふさわしい無惨の回想に、SNSでは「多くの人間の尊厳を踏みにじり残された者達に絶望と悲しみを与えてきた最低最悪なラスボス」「パワハラ会議でもヤバいやつだと思ってたけど すべての元凶は自業自得!? そしてすべての責任を部下に押し付けた!?」「こんな上司いやだwww」などと話題に。

 なお無惨の擬態能力は他の鬼よりも高く、常に美しい姿で登場するため、「いつの時代もどの瞬間もイケメンじゃないか ヤバい奴だけどかっこいいよ」「鬼舞辻無惨のビジュが物凄く良い」「ショートカット鬼舞辻無惨普通にかっこよかったな」といった声も多い。

本編では描かれなかったが… 玉壺のおぞましい設定

■親の水死体を見て「美しい」 狂った自称芸術家

 本編では回想が描かれなかったが、公式ファンブックによると玉壺も人間の頃から身の毛のよだつようなおぞましい性格をしていた。動物を殺す、違う種類の魚を縫ってくっつけたりする異常行動を芸術だと自称する、自分をからかいにきた子供を殺して壺に詰める、漁に出て亡くなった親の損傷の激しい水死体を見て美しいと感動するなど、美醜感も性格も狂っていた模様。

 鬼になってからは子供の肉を喰うことと自身の身体を改造することが好きで、無惨以外の生き物を全て見下し馬鹿にする性格に。劇中では刀で串刺しにした数人の刀鍛冶をつなげて「作品」と称するなど、人の尊厳を踏みにじるような言動を見せている。

 この設定を知る原作ファンからは、「玉壺さん、人間の時からやばいっす 鬼にならなくても地獄確定で草なんよ」「半天狗同様にガチサイコなんだけど」との指摘も。しかし幼稚でシリアスさに欠ける性格と声優・鳥海浩輔の怪演による強烈なキャラクターはインパクトが大きく、「玉壺さんが新たな推しになりました」「清々しくクズで好き」「玉壺可愛い」など一部のファンからはカルトな人気を集めている。

■鬼サイドの異常性が浮き彫りに 鬼殺隊サイドの兄弟愛

 鬼サイドとは対照的に、鬼殺隊サイドでは不死川兄弟、時透兄弟、竈門兄妹の兄弟愛が描かれた。現風柱・不死川実弥は弟の玄弥を守るため鬼になった母を殺害、時透有一郎は命に代えて弟の無一郎を鬼から守った。最終話では、太陽に焼かれる竈門禰豆子(※)が自身を犠牲にしながら兄の炭治郎半天狗滅殺を決断させたが、このシーンも兄弟愛に満ちていた。

 また、「遊郭編」に登場した妓夫太郎と堕姫の過去も兄弟の絆を描いたものだった。いずれも視聴者の胸を打つ内容だったことが、鬼サイドの暗澹とした異常性をより際立たせる結果になったとも考えられる。

 「刀鍛冶の里編」完結と同時に新章「柱稽古編」の放送も決定し、その後の「無限城編」にも大きな期待の声が寄せられているアニメ『鬼滅の刃』シリーズ。鬼殺隊の活躍とともに、今後登場する鬼たちの過去にも注目したい。

※「辻」の正式表記は一点しんにょう
※「禰」の正式表記は「ネ+爾」

『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』第十一話場面写真 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable