【家電コンサルのお得な話・132】 6月に入り、国税庁から「インボイス制度」と表書きされた一通の封書が届いた。筆者はもともと簡易課税事業者であり、すでに登録していたため「何か問題があったのかな?」と疑念を抱きながら内容を確認。中には「インボイス制度の負担軽減措置」の説明文とリーフが入っており、登録者にも送っているとのことだった。

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●「2割特例」が「登録する」「登録しない」の判断に影響



 インボイス制度は2023年4月に消費税法等の一部が改正され、新たに負担軽減措置等が設けられた。この改正では、図の国税庁のパンフレットでも紹介されているように「四つのポイント」があるが、負担軽減措置や少額取引の仕入税額控除等の利点を強調して、「インボイス発行事業者」の登録を促している。

 また、説明文には「登録を受けるべきか悩んでいる・・・」という見出しで、相談会の案内が記載されていた。逆に言えば、それだけインボイス制度は免税事業者にとって深刻な問題だということだろう。

 特に企業を顧客に持つ免税事業者の場合、顧客である企業の仕入税額控除に影響が出るため、客離れにつながる可能性が高くなる。

 そのため、インボイス発行事業者の登録をして消費税を納付するか、登録しない場合の売上減少がどれくらいになるかを考えて、判断しなければならない。

 この判断に大きく影響するのが、図中のポイント1の「2割特例」である。これは、免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になる場合、仕入税額控除の金額を、特別控除税額とすることができ、「売上税額の2割を納付するだけでいい」という特例である。

 また、一般課税や簡易課税のどちらを選択していても、この特例は適用可能であり、事前の届出も不要である。細かい点については、他のポイントとともにパンフレットなどで確認し、登録を検討するといいだろう。

 ただ、今回の改正により登録する利点は増えたが、インボイス制度そのものに納得する方は少ないだろう。インボイス制度は、取引先に制約を課すことで登録を避けられない状況をつくりだしながら、「登録を決めたのは“あなた”でしょ!」という、「全ては免税事業者の自己責任」にされてしまうズルい制度だと言える。

 免税事業者という「消費者から受け取った消費税を納付しなくてもいい制度」に対しては、以前から様々な意見があるが、免税事業者から税を徴収するのであれば、正々堂々と免税事業者という制度そのものについて議論すべきである。なお、国税庁インボイスコールセンターは0120-205-553。受付時間は9:00~17:00(土日祝除く)、個別の相談は所轄の税務署への事前予約が必要となる。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

■Profile

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
国税庁のパンフレット「令和5年4月インボイス制度に関する改正について」