ユニットコンビ「たりないふたり」として数々の漫才を生み出した、オードリー若林正恭南海キャンディーズ山里亮太の半生を基にしたドラマ「だが、情熱はある」(毎週日曜夜10:30-11:25、日本テレビ系)。6月18日放送の第11話で、山里(森本慎太郎)のお笑いへの熱量を知ったしずちゃん(富田望生)が再び「漫才をやりたい」と訴え、7年ぶりに「M-1」に参戦するエピソードが描かれた。決勝を目指し奮闘する中で、凍りついていたコンビ仲も劇的に改善され、ついに山里からしずちゃんに謝るという南キャン史上、大きなターニングポイントが刻まれた。(以下、ネタバレを含みます)

【動画】森本慎太郎・富田望生の“南キャン”「M-1グランプリ 2004」決勝ネタ、約4分ノーカット版

■山里、ボクシングに没頭するしずちゃんに不満MAX

このドラマは、若林と山里の半生を基にした“ほぼ実話”の青春サバイバルストーリー。“極度に人見知りな超ひねくれ男”(若林)と、“妬み嫉みの固まり男”(山里)、そんなたりない二人の友情物語でもないし成功物語でもないが、もがきながらも“情熱はある”人生を描いていく。

山里としずちゃんの仲は悪化の一方…。というか、これ以上悪化できないほど最悪だった。そして、ドラマで演じたボクサー役ををきっかけに本格的に始めたボクシングで高い評価を受けだした彼女に、山里の不満はさらに募る。廊下でマネジャーと話す際、わざと楽屋のドアを開けて「ボクシングよりお笑い頑張ってほしいんですけど」と、聞こえよがしに言う始末。しかし、彼女がロンドン五輪に出られる可能性が出てきた途端、山里は態度を一変。「おいしい」と感じ、いきなり「応援してます」スタンスをアピール。彼が“天の声”をしている「スッキリ」の芸能コーナーでも、あからさまに応援し始めた山里に対し、しずちゃんは心底うんざりするのだった。

しずちゃんボクシングを通して山里のお笑いへの情熱を知る

しずちゃんは、あと一歩のところでオリンピックの夢が破れた。それからしばらくたったある日、彼女はボクシングと真剣に向き合う中で、山里がどれだけお笑いに情熱を傾けているのか、身をもって分かった、と彼に告げた。自分では真剣にやってる“つもり”だったのだ、と。だから、彼に怒られても、当時は意味が分からなかった。でも、できてなかったから怒られたんだと今は分かる。

そして、彼女は続けて「山ちゃんみたいに頑張りたいから…。お笑い、頑張りたいです」と、山里に告げた。無言で聞いている彼に「『M-1』、もう1回出たくて…。漫才、やりたい」との彼女の言葉に、「ボクは…。覚悟が必要です」としか言えなかった。崩壊したコンビ仲、開店休業の漫才…1からのやり直しだ。かなりの覚悟がなければ、この状態から「M-1」で戦えるまでになるのは無理なのだ。

■「しずちゃんさぁ、『M-1』出たい?」

そこで山里は、自身のラジオ番組「不毛な議論」の生放送で彼女に電話をした、「絶対しずちゃんだけは出さない!」と決めていたかせを自ら外したのだった。最初の出会いの思い出を話し、山里は「この子、すごい子だ!組んだら売れると思った」と当時の気持ちを打ち明けた。

そして、彼女も山里の才能に感動したことを話し、続けて「でも、あまりの性格の悪さに、だんだんうっとうしくなって」と本音も漏らした。彼女は、山里が本当に大嫌いになっていた。それでも解散を言い出さなかったのは、自分を一番面白くしてくれるのは山里だったからだ。しずちゃんは、お笑いに関しては山里を全面的に認めていた。

会話が一段落して、山里は尋ねた。「南海キャンディーズとしての2016年の目標は何ですか?」。「『M-1』に出て、漫才ってかっこええな、って思ったんですよ。だから、漫才をやりたいと思います」と答えた彼女に、山里は「こういうところで聞くの、ダサいと思うんだけど」と前置きして、再び尋ねた。「しずちゃんさぁ、『M-1』出たい?」。「うん。出たい」と言った彼女の声を聞いて、山里は意を決したように言った。「出るかぁ、『M-1』!出よう、出ちゃおう!」。7年ぶりの参戦を生放送で表明し、もう後には引けなくなった。

■山里、ついに自分から謝る

久々すぎる参戦に、始めは恐怖でなかなかネタができず、1回戦ですでに大緊張。登場のどのタイミングで両手を上げていたのかも思い出せないほどだった。1回戦の後も仕事の合間を縫ってネタを作り、信頼しているスタッフにも見せ、「何で今さらまた出場するんだろう」との陰口に対する怒りをエネルギーに変えて頑張り、準決勝まで勝ち進んだ。だが、決勝には行けず、スケジュールの都合で敗者復活戦には出られなかった。

決勝の夢が断たれた時、山里はしずちゃんに「ごめんね」と自分の力不足を謝った。山里が謝った。それもしずちゃんに。この出来事だけでも、彼の成長とコンビ仲の修復が十分に分かる。そして、彼はしずちゃんと「不毛な議論」で、決勝にかけるはずだった漫才を披露したのだった。ちなみに、その翌年の「M-1」にも出場したが、準決勝で敗退している。

■若林からの“ラブレター

2018年、以前出版したエッセー集「天才になりたい」を大幅改訂、加筆して「天才はあきらめた」として再出版した山里。巻末の解説を若林(高橋海人)に頼んだ。若林は、春日(戸塚純貴)の部屋で見た「M-1グランプリ2004」で初めて山里を知り、彼のツッコミのワードセンスに衝撃を受けたことに始まり、山里を素直に絶賛する文章をつづり、「彼が言われたら一番困る言葉であり、一番言われたい言葉を言おう。『山里亮太』は、天才である」と記した。山里は、この若林からの“ラブレター”に大感激し、今でもたまに読むほどだそうだ。

解説文は「ダメだ。たりないふたりの漫才がやりた過ぎる」と締めくくられ、その一文を見ながら山里も「やりたいなぁ、若ちゃんと。漫才…」と、心の底からつぶやくのだった。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」

コンビ仲も復活し、7年ぶりに「M-1」に参戦した南海キャンディーズの山里(森本慎太郎)としずちゃん(富田望生)/(C)日テレ