グラディエーター』(00)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたラッセルクロウが、初めてホラー映画の主演を務めた『ヴァチカンエクソシスト』(7月14日公開)。ホラー映画の歴史を変えたウィリアムフリードキン監督の『エクソシスト』(73)からちょうど50年を迎えるいま、新たな“エクソシスト映画”を作りあげたジュリアス・エイヴァリー監督とは何者なのか。そのキャリアを振り返りながら、本作の見どころを紐解いていこう。

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オーストラリア出身のエイヴァリー監督は、2008年に手掛けた短編映画『Jerrycan』で第61回カンヌ国際映画祭短編部門の審査員賞を受賞。さらに同作は、翌年に行われたサンダンス映画祭やベルリン国際映画祭の短編部門でも上映され大きな注目を集めた。そして2014年にユアン・マクレガーが主演を務め、ブレントン・スウェイツやアリシア・ヴィキャンデル共演の『ガンズ&ゴールド』(14)で長編映画デビューを飾ることに。

同作をきっかけにエイヴァリー監督はハリウッドに進出。J.J.エイブラムス製作のサバイバルアクション『オーヴァーロード』(18)を手掛け、シルヴェスター・スタローン製作、主演のアクションスリラー『サマリタン』(PrimeVideoにて配信中)を監督。いずれの作品もスピード感のあるアクションや丁寧な人間描写が評価され、ジャンル映画ファンのみならず多くの映画ファンから厚い信頼を獲得した。さらにハリウッド版「GANTZ」の監督に抜擢されたことも報じられるなど、将来有望な監督の一人として注目を集めている。

そんなエイヴァリー監督が、生涯で数万回の悪魔祓いを行なったとされる実在したエクソシストアモルト神父の回顧録をもとに、彼が目にした恐ろしい悪魔との闘いを描いたのが、最新作の『ヴァチカンエクソシスト』だ。このアモルト神父は、『エクソシスト』のフリードキン監督が『悪魔とアモルト神父 -現代のエクソシスト-』としてドキュメンタリー作品を作るほど、界隈では知られた存在だ。

物語の舞台は1987年7月、サン・セバスチャン修道院。ローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の悪魔祓いに向かったアモルト神父は、変わり果てた姿と絶対に知り得ないアモルト自身の過去を話す少年を見て、悪魔の仕業だと確信する。若き相棒のエキスベル神父と共に本格的な調査に乗り出したアモルトは、かつて中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行なっていた宗教裁判の記録にたどりつく。

エイヴァリー監督は本作について「最強の天敵同士の闘い、つまり悪魔対アモルト神父の闘い」と表現しており、これまでの“エクソシスト映画”を凌駕するほど熾烈な闘いが見られることは間違いない。エキスベル役を演じたダニエル・ゾヴァットが出演決定前から大きな期待を寄せていたと明かすなど業界内にもファンが多いエイヴァリー監督は、“エクソシスト映画”という歴史あるホラージャンルを前に、どれほどの手腕を発揮しているのか。期待しながら本作の公開を待とう。

文/久保田 和馬

変わり果てた少年の姿…新たな「エクソシスト」映画が誕生