成田空港には、成田空港駅空港第2ビル駅とは別に、一般の空港利用者にはあまり知られていない東成田駅があります。どのような駅なのでしょうか。

昭和で時が止まったかのような「東成田駅」

成田空港には、多くの人が行き交う成田空港駅空港第2ビル駅とは別に、一般の空港利用者にはあまり知られていない東成田駅があります。この東成田駅は、時代に取り残されたかのような異様な雰囲気が特徴で、実際に訪れてみると怖さすら感じます。どのような駅なのでしょうか。

東成田駅には京成東成田線と、「日本一短い鉄道」として知られる芝山鉄道線が乗り入れています。両線は一体的な運行形態となっているため、2023年6月現在、東成田を始発・終着とする列車はありません。列車の本数はかなり少なく、駅の時刻表を見ると、日中は毎時1~2本となっています。京成上野方面は京成成田止まりの列車が多く、朝夕のみ京成上野行きや西馬込行きの特急、快速があります。

実際に駅に行ってみると、利用者はほとんどみかけませんでした。改札付近のコンコースは昭和で時が止まったような印象を受けます。経年で文字が薄れてしまった看板や、柱を囲むように設けられたベンチ、「曲水の宴」と書かれた壁画が目を引きます。

改札を通って駅の構内に入った途端に薄暗くなり、まるで廃墟のような雰囲気です。構内には不自然な壁があり、上部は柵となっていますが、柵越しに「コーヒーショップ エクレール」と書かれた廃店舗が見えます。ホームに降りると、多くの駅で見かけるLED式の発車標は設置されておらず、列車が到着する際も接近放送はありません。いきなり列車がやってきて発車していきます。向かい側に暗い不気味なホームがあり、「なりたくうこう」と書かれた駅名標や古いベンチ、広告などが確認できますが、このホームは閉鎖された状態になっています。

そもそもどうしてこうなった?

この東成田駅はもともと、初代の成田空港駅として開業しましたが、1991年に現在の成田空港駅が開業すると、東成田駅に改称された経緯があります。空港の玄関口としての機能は成田空港駅空港第2ビル駅(1992年開業)に移り、東成田駅は時代に取り残されたような駅になってしまったのです。現在は使われていないホームには、かつて京成の特急「スカイライナー」が発着していました。コンコースの文字が薄れてしまった看板などは初代成田空港駅の名残で、駅構内の不自然な壁は、現在使われていないホームへ立ち入れないようにするために設置されているのです。

東成田駅京成電鉄の乗降人員は1日あたり1730人。そのうち定期利用が830人、定期外利用は900人となっており、朝夕を中心に空港関係者の利用があるようです。駅の外に出るとすぐ近くに管制塔が見え、駅が空港敷地のド真ん中にあることを実感できます。

空港第2ビル駅東成田駅を結ぶ500メートルの通路もあり、ここも見どころの一つとなっています。延々と続く通路には所々に監視カメラが設置されていますが、通行者が少ないため、異世界に迷い込んでしまったかのような感覚になります。

ちなみに、東成田駅から京成上野までは980円、空港第2ビル駅から京成上野まで(京成本線経由)は1050円と、わずかに東成田駅からの方が運賃は安くなっています。時間に余裕があれば、成田空港を利用した際に東成田駅に寄ってみるのもいいかもしれません。

京成の車両(画像:写真AC)。