一般社団法人 日本食品機械工業会が主催した、食品機械などの製品やサービスを紹介する「FOOMA JAPAN 2023」が大きな盛り上りを見せたようだ。来場者は10万人を超え、外国人の来場も目立ったという。日本の食に対する評価の高まりを示しているようだ。

世界に広がる日本食

海外の日本食レストラン出店数の推移(農林水産省 輸出・国際局 輸出企画課 令和3年9月30日発表)を見ても、海外における日本食レストランは2017年には11万店、2019年には15万店を突破。コロナ禍の影響もあり、2019年~2021年の出店数は微増であったが、2006年から15年間で6.6倍に増えているという。アメリカにおいては元々多かったこともあるが、日本食レストラン軒数は2万3,064軒、12年前から1.6倍となっている。

農林水産物、食品の輸出額においても好調が続いているようだ。大幅な円安が輸出額を押し上げたことが最大の要因であるのは間違いないが、日本食レストランの増加、小売店向けやEC販売等の新たな販路への販売なども好調で、2022年の農林水産物・食品の輸出額は、過去最高だった昨年よりも総額が伸びている。国は、2025年2兆円の目標を前倒しできるように、輸出増に取り組む。

また、「お酒」も大きな規模ではないが、順調に伸びている。

日本酒造組合中央会の資料によれば、2022年度(1月~12月)の日本酒輸出総額は474.92億円。13年連続で前年を上回る金額となった。数量も35,895キロリットルと過去最高となった。

輸出先別で見れば、金額ベースでは第1位は中国で 約141.6 億円(昨対比137.8%)。中国の富裕層や若者に人気となっているようだ。輸出量の第1位はアメリカで、9,084kl(昨対比102.9%)、金額ベースでも第2位であり、ほとんどの国で輸出金額は過去最高となっているという。
コロナ禍が落ち着き、世界中で人の移動が再開し、輸送段階において、冷凍冷蔵の技術が進み、コールドチェーンのクオリティが上がったことも大きいと思えるが、何より、欧米、中国、韓国の富裕層を中心に、SDGsの流れを受けた「和食」を中心とした日本文化への関心の高まりがあるのではないかと思う。

訪日客もかなり増加してきた。実際に2023年4月推計値では、訪日外客数は1,949,100人を数える。2019年4月と比べるとまだまだの数字だが、66.6%まで回復しており、100%超えも近い。

食のみではない「文化」への評価

これらの要因となっているのは、もともと日本食は海外で「低カロリーでヘルシーな料理」として重宝されていたこと、そして、世界的な健康志向の高まりに加えて、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されたことも日本食の世界的な評価につながっているのだろう。

加えて重要なことは、和食の持つ歴史的な背景や「おもてなし」に代表される接客文化など、日本食を中心とした日本文化への評価の高まりではないかと思う。

インバウンドにしても、「食」だけではない、日本に来て「本場の日本食」を食したい、体験したいというニーズの高まりも大きく影響している。

実際に、日本食を食べるだけでなく、寿司作り体験やそば作り体験、和菓子作り体験、また酒蔵体験、ウイスキー蒸留所体験などが人気となっているという。

また、「食」だけではなく、和装体験や陶芸体験、茶道体験など、「モノ」より「コト」に重きをおく日本文化に触れるきっかけを提供する機会も増えているようだ。そこには、治安の良さや公衆衛生、正確無比な電車の運行などに加え、日本独自の「おもてなし」精神、礼儀作法や精神性がある。

日本人でもあまり経験しないことを経験した外国人は、大きな感動を得るのは間違いない。

農林水産省は、訪日外国人を中心とした観光客の誘致を図る地域での取組を「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」として認定する制度を平成28年度に創設した。

令和5年4月現在で、40の市や地域が認定されており、訪日外国人旅行者に広くアピールしていく計画だ。

中心となる「SAVOR JAPAN」推進協議会は、SAVOR JAPANブランドとして、各地域の食や農山漁村の魅力を一体的に発信し、訪日外国人旅行者の誘客を支援していく。具体的には、地域開発のための有識者・アドバイザー派遣/紹介、地域の食・農業を中心としたコンテンツ/ストーリー作り、インバウンド来訪に資する旅行商品づくり支援、海外旅行博覧会、商談会等への出展支援、ホームページ、各種SNSとの連携による情報発信、認定地域間のネットワーク構築等を支援する。

また国は令和5年3月31日に、新たな観光立国推進基本計画を閣議決定した。計画では、訪日外国人旅行消費額5兆円、国内旅行消費額20兆円の早期達成を目指すこと。令和7年までに、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数100地域、訪日外国人旅行消費額単価20万円/人、訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数2泊等の目標を掲げている。

この日本食、日本文化の評価による経済効果は、ほかの産業と異なり、誰でも参加できることだ。悲しいことだが、日本の歴史や古来の文化に関して、日本人よりも外国人のほうが、より深い理解をしているケースも少なくない。大事な食事をファストフードで済ますことを悪いとは言わないが、せっかく日本に生まれたのだ。一人ひとりが「日本食」「日本文化」をより理解し、訪日する外国人に接することができれば、より大きな経済効果につながるはずだ。

日本の食文化が経済をけん引する?!