ジェームズ・キャメロンの最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)が、いよいよ6月30日(金)よりブルーレイ+DVDセット(3枚組)、4K UHD(5枚組)でリリースされる。地球から遠く離れた神秘の星パンドラを舞台にした本作は、地球人による侵略戦争を背景に、家族の絆や愛する者を守るために戦う人々の姿を描いたスペクタクル超大作。2022年12月に公開され、キャメロン自身の『タイタニック』(97)を超えて全世界歴代興行収入ランキングTOP3の大ヒットを記録した。特典ディスクには、インタビューやメイキング映像など3時間を超える映像特典を収録。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の魅力を徹底的に解き明かす映画ファン必見のパッケージだ。

【写真を見る】貴重な舞台裏もたっぷり!俳優の微細な表情までを反映した、パフォーマンスキャプチャのビフォーアフターも

※本記事は、『アバター』および『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

■人間だったジェイクがナヴィのネイティリと出会い、共に戦う決意をした第1作

本作の前章にあたる『アバター』(09)から振り返ってみたい。この作品はキャメロンの本格デビュー作『ターミネーター』(84)から数えて7本目となる長編劇映画。情感豊かなパンドラ先住民族ナヴィのキャラクターやデジタル3Dによる迫真の立体効果、自然との調和をテーマにした普遍的なストーリーが共感を呼んだ。

西暦2154年、宇宙に進出した人類は地球から遠く離れたパンドラで、貴重な燃料資源アンオブタニウムの採掘を行っていた。パンドラは地球によく似た自然豊かな緑の星だが、その大気は地球人にとっては有毒。そこで資源採掘を請け負った巨大企業RDAは作業を円滑に進めるため、ナヴィと地球人のDNAを合成したハイブリッドを作成。DNA提供者の意識を転送して遠隔操作する“アバター・プログラム”を行っていた。その研究者トミーが命を落としたため、彼と同じDNAを持つ元海兵隊の双子の弟で、下半身不随のジェイク(サム・ワーシントン)は兄の代わりにプログラムに参加することになった。

植物学者グレース(シガーニー・ウィーバー)の研究チームに加わったジェイクは、森でナヴィの娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と出会い彼女の部族オマティカヤに招かれた。そこで自然と調和する彼らの生き方に惹かれ、いつしかネイティリと恋に落ちる。ところが採掘作業を急ぐRDAの命を受け、クオリッチ大佐(スティーヴン・ラング)はナヴィへの総攻撃を開始。ジェイクはナヴィの戦士を率いて大軍に立ち向かい勝利を勝ち取った。ジェイクはナヴィたちが女神と呼ぶ不思議な力、パンドラのすべてに分散される意識であり、ネットワークともいえる“エイワ”によってアバターと一体化し、オマティカヤを率いるリーダーとなった。

■戦いは神秘の森から広大な大海原へ!家族の絆が試される『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、前作から10年後の物語。ジェイクとネイティリは家族になり、優秀な長男ネテヤム(ジェイミー・フラッターズ)、兄に劣等感を抱く次男ロアク(ブリテン・ダルトン)、無邪気な末っ子トゥク(トリニティ・ジョリー・ブリス)、そしてRDAとの戦いのさなかで命を落とした、グレースアバターから生まれた養女キリ(ウィーバー)と平和に暮らしていた。ところが地球人の侵略が再開され、ジェイクたちはまたも戦いの日々を強いられる。将軍よりナヴィ制圧を任されたのが、ナヴィと人間のハイブリット兵、リコンビナントとして蘇ったクオリッチだった。激しい戦闘が続くなか、ジェイクは家族を守るため、トノワリ(クリフ・カーティス)とロナル(ケイトウィンスレット)が治める海辺の部族メトカイナ族に身を寄せた。クオリッチはジェイク一家と家族同様に過ごしていた人間の少年スパイダー(ジャックチャンピオン)を捕らえ、彼を使ってジェイクの行方を追いかけた。

森の種族の族長であり、家族を守る父親にもなったジェイク。復讐に燃えるクオリッチの存在を知ったジェイクはオマティカヤから離れ、家族を連れてメトカイナ族の一員となっていく――。困難を乗り越え結ばれるジェイクとネイティリのラブストーリーで世界中の心を掴んだ前作に続く、今作のテーマは家族愛。『ターミネーター』をはじめ親子や夫婦など“家族”を重要な要素として描いてきたキャメロンにとって、最も得意とする題材である。ジェイク一家のほか、彼らを受け入れるトノワリとロナルの家族、さらにクオリッチにまつわるドラマも展開。憎々しい悪役として存在感を放ってきたクオリッチだが、さらに深みを増した彼の動向にも注目だ。

今作の舞台はメトカイナ族の暮らす海岸沿いの集落。前作の幻想的な森から一転、青い海がどこまでも広がる開放感なロケーションも見どころ。前作で森に住む生物群系を創りだしてパンドラを体感させたキャメロンは、今作では多様な海の生き物たちを創造。豊かな感情を持つ巨大なトゥルクン、遊び好きでナヴィとつながるイルなどなど、デザインから生態まで徹底した作り込みに、少年時代に海洋ドキュメンタリーを観て以来、海に魅了されてきたキャメロンならではのこだわりが光っている。

■リアルを追求して作り上げられた「アバター」のキャラクターたち

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のパッケージには、3時間を超えるボーナスコンテンツを収録。キャメロンや『タイタニック』以降プロデュースを務めているジョン・ランドーをはじめ、撮影や美術、デザイン、視覚効果から編集、音楽、音響効果ほか主要パートのスタッフ、キャストやスタント、名もなきキャラクターを演じたパフォーマーまで、超大作を支えたクルーのインタビューとメイキング映像で、舞台裏がたっぷり紹介されている。

製作にあたり、「単なる続編ではなく、壮大な物語を紡ぎ上げよう」と宣言したキャメロンは、「アバター」シリーズを「複数の物語を収める器」だと語っている。そして映画に不可欠な要素として挙げたのが、パンドラの世界観とキャラクターだ。ご存じのように「アバター」のキャラクターの多くはCGIだが、それらは俳優の表情まで反映したパフォーマンスキャプチャで表現されている。つまり俳優の演技力がキャラクターを大きく左右してしまうのだ。

そのためキャスティングは慎重に行われたが、特典映像にはスクリーンテストやリハーサルの模様を収録。兄ネテヤム役のフラッターズと弟ロアク役のダルトンの対立、末っ子トゥク役のブリスのあどけなさなど、観客の心を捉えた名場面は、彼らの名演があってこそだと改めて実感させられる。ウィーバー演じた14歳のキリと、生身でチャンピオンが演じたスパイダーの年齢や身長差を超えたスクリーンテストも興味深い。なおキリのデザインは『エイリアン2』(86)の頃のウィーバーの映像を参考に、顔つきや口元を再現。その比較映像に作り手のこだわりを感じさせられる。

モーションキャプチャスーツを着て実際に演技する俳優たち

モーションキャプチャによる撮影風景と完成映像の比較も注目したいコンテンツだ。モーションキャプチャスーツを着た俳優たちがなにもない空間で芝居をするという、ビジュアル自体は非常にシンプル。ただし、「相手がいるだけの純粋な演技」とキャメロンが解説しているとおり、ワーシントンとサルダナら俳優たちの熱量や想いがストレートに伝わってくる映像に、思わず心を打たれてしまうはず。

キャメロンラング、俳優たちによるキャラクターの深掘り解説も興味深い。例えば、DNA合成による肉体に生前の記憶を埋め込んだ“リコンビナント”として蘇ったクオリッチの感情が、映画のなかでどう変化していくか。どんな気持ちで自分の頭蓋骨を握りつぶしたのかなど、2回目以降の鑑賞をより楽しくしてくれるサブテキストだ。

ダイバーによる指導のもと素潜りにも挑戦

海を舞台にした本作は、リアルな演技へのこだわりから海中シーンは撮影用プールの水中で撮影。気泡が出るとモーションキャプチャに支障がでるため、俳優たちは素潜りで演技を行った。ダイバーの指導のもと行われた素潜りの訓練シーンや、メトカイナ族が水中で使う手話の練習、リアルな海を体感するためハワイで合宿を行うなど、プリプロダクションの段階で膨大な作業が行われたという。驚いたのはウィンスレットの素潜りで、なんと6分50秒!キャメロンのこだわりも凄まじいが、応じる俳優たちの本気度も、特典映像からひしひしと伝わってくる。

ほかにも19のカテゴリーに分けられたメイキングで、作品の舞台裏を徹底紹介。テクニカルな面だけでなく、どのようにそのデザインに至ったか、なぜそこにこだわったのかなどソフト面からも映画が徹底解説されている。ぜひ本編とセットで味わってほしい。

■『アバター3』には“火”にまつわる種族が登場する?

すでに発表されているように、「アバター」は全五部作で完結が予定されている。現時点でその内容は明かされていないが、海外メディアの情報などをもとに、今後の展開を探ってみたい。

アバター』から『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』公開までは13年の間が開いたが、「Variety」誌によると、プロデューサーのランドーは『アバター3』と『アバター4』の一部をすでに撮影していることを明かしている。かつてキャメロンは、『3』について「火を文化の中心に据えた部族と、もう一つ別の部族が登場する」と「Deadline」誌に語ったが、ランドーも“火山のよう”な敵対的なナヴィの部族について言及していることから、火にまつわる荒々しいナヴィが登場するのは確定らしい。かねてから出演が発表されていた「ゲーム・オブ・スローンズ」のウーナ・チャップリン演じるヴァランというキャラクターがその族長だという。

オマティカヤが木、メトカイナが水、新たな部族が火というチョイスは、万物を構成する元素を定めた西洋の四元素説(火、空気、水、土)ではなく、東洋の五行思想(火、水、木、金、土)に近い発想からきたのだろうか。

■今後のキーキャラクターになりそうなキリとスパイダー

ランドーは『4』ではタイムジャンプがあると語っており、『5』では物語の一部として地球が描かれるという。一般的にタイムジャンプは、1作目でパンドラを訪れたジェイクのようにコールドスリープなどによる時間移動を指すが、まだ詳細は不明だ。地球を舞台にする理由については、「地球人やネイティリの目を開くため」と語っている。『アバター』時点で地球人にとってパンドラは資源の採掘場でしかなく、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で地球の崩壊が明かされた現在は移住先になってしまった。それにより地球人にとってナヴィは、駆逐するべき邪魔な存在になったのだ。

一方、ネイティリにとって地球人は、父を殺し故郷を破壊した残忍な侵略者。今作で彼女が家族同様のスパイダーを人間というだけで好きになれずにいたことから、その根はかなり深そうだ。ランドーは「地球の行く末を悲観的に描きたくはない。シリーズを通しそのことを伝えていく」と語っているので、ネイティリが地球を訪れることで両者の見方は変わっていくのだろう。

そこで注目したいのがキリである。特典映像のなかで、キャメロンは彼女について「謎が多いが物語の鍵を握るキャラクター」だと説明している。グレースアバターから生まれた父親不明のキリは、エイワを敏感に感じ取ったり、生き物たちと交信したりするなど不思議な力を発揮しており、今後のシリーズで大きな役割を担うことは間違いないと思われる。もう一人注視したいのがスパイダーだ。クオリッチが生前にもうけた息子である彼は、今作でクオリッチに父性を目覚めさせる役割を果たした。今後のクオリッチとジェイクたちを結ぶ役割を期待したいところだが、特典のなかでキャメロンも「人類とナヴィをつなぐ架け橋」「物語をつなぐまとめ役」と紹介しており、キリ同様に重責を果たすもキーマンであることを明かしている。

植物をつなぐ神経繊維のネットワーク、エイワについてもその詳細はまだ不明。前作でジェイクやグレースの魂をアバターに転送したり、今作ではジェイクやネイティリを死んだ息子に引き合わるなど神秘的な力を発揮。神を思わせる超自然的な存在のようではあるが、SFを信奉するキャメロンだけになんらかの合理的な解釈を持ち込むのではないだろうか。

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の完成までに多くの時間を費やしたことについて、映像テクノロジーの進化と、シリーズ作品としてのプロセス作りに時間をかけたと語っているキャメロン。「シリーズにおけるすべてのキャラクターやクリーチャーなど生物群系、ビークルや都市の景観などのデザインは完了した」とも説明しているだけに、今後は順調にシリーズを重ねてくれそう。最新情報によると、『アバター3』は、2025年12月19日、『アバター4』は2029年12月21日、『アバター5』は2031年12月19日の北米公開を予定している。どんな世界でどんな物語を繰り広げていくのか、そのヒントも十二分に詰め込まれた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のブルーレイ+DVDセット(3枚組)、4K UHD(5枚組)をゲットして、キャメロンの次の一手を楽しみに待ちたい。

文/神武団四郎

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のブルーレイ+DVDセット、4K UHDのリリースに向けて見どころを解説!/[c] 2023 20th Century Studios.