2023年4月に、『京都大学が超深海域で、新種の寄生性甲殻類を発見した』と各メディアで報じられました。

新種とは、新たに発見された生物の種のこと。京都大学のケースは水深約7千200mという超深海域での新種発見でしたが、実は山林など身近な場所で新種が見つかることも少なくありません。

では、もし「これって新種かも?」という動物や昆虫、植物を見つけた場合、どうすればいいのかをご存じでしょうか。

新種発見までは連絡、確認、発表の3ステップ

徳島県立博物館の学芸員である小川誠さんによると、新種を発見してから登録されるまでには大きく以下のステップがあるとのこと。

ステップ1 新種を発見したら専門機関に連絡する

まずは、発見した対象物が本当に今まで知られていない種かどうかを確かめないといけません。調べた結果、既知の生物であれば、当然ですが新種発見とはなりません。

もし新種らしきものを発見した場合は、専門的な知識が必要となるので、博物館や大学などの専門機関に問い合わせましょう。

もしそこで対応できなかったら専門家を紹介してもらい、新種の可能性があるのか、生物もしくは生物の標本の送付方法などを打ち合わせします。

ステップ2 専門家が新種か否かを調べる

次に、専門家によって新種かどうかの研究が行われます。

血縁度の高い種と思われる近縁種の標本や、文献などをひも解きつつ、「同じでないか、どこがどう違うのか」などを、最近ではDNAを比較して入念に調べているとのこと。

場合によっては結果が出るまで長い時間を要するケースもあります。

ここで新種と認められれば次のステップへ。残念ながら既知の生物であれば「〇〇という虫でした」などと報告があり、そこで調査は終了です。

ステップ3 新種であることを発表する

新種だと分かった場合は、ルールに基づいて新種の学名を付け、基準標本を指定します。

基準標本とは『新種の学名は〇〇で、どのような特徴がある』といった、その生物を判別する元になるための基本となる標本で、博物館や大学の標本庫で大切に保管されます。

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ただし、この3ステップだけでは新種として認められません。学術論文を書き、分類学の雑誌で発表するという、いわゆる有効出版を行う必要があります。

「これは新種です」と学会で認められ発表されて、初めて新種だと認定されるのです。

ちなみに、基準標本や論文の作成にも時間がかかります。実際に新種として認められるまでは、早くても数か月、長いと数十年ということも…。

無事に論文が完成にいたったら、発見した人は『発見者』という形で発表されたり、学名に名前が使われたりする場合もあります。

社会・学術・文化の発展に貢献する偉大な発見となる

そもそも、新種はそんなに頻繁に見つかるものなのでしょうか。小川さんによると「すでに研究が進んでいる分野や地域では難しいが、反対に研究が進んでいない分野では新発見は多い」とのこと。

未知の分野なので「新しい発見に遭遇する可能性は高い」といいます。

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新種の発見者に対して「よく新種を見つけた!偉い!」と報奨金などが出るのかも伺ったところ、「残念ながら出ない」とのこと。一方で、新種登録などの費用も発生しないそうです。

新種の発見は、社会、学術、文化の発展に貢献するもの。例えば、発見した新しい植物から、従来よりも有効な薬効成分が発見されるといった可能性もあるでしょう。

時々、「地元の小学生が新種を大発見!」と報じられることがあるように、身近なところで新種が見つかるケースもあります。

あまり見たことがない生物や植物を見かけたら、採取した上で、専門機関に問い合わせてみてくださいね。


[文/デジタル・コンテンツ・パブリッシング・構成/grape編集部]

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