皆さんは「ハラスメント」の現場に居合わせたことはあるだろうか。職場における3大ハラスメントは、セクハラ、パワハラ、マタハラといわれているようだが、加えてモラハラ、アカハラ、ハラハラ(ハラスメント・ハラスメント)など、他にもさまざまなハラスメントが年々登場している。こんなにも種類が多いと、意図せず自分も巻き込まれていることがないか不安になるのでは……。「教えて!goo」にも「パワハラの基準が分からない」と質問が寄せられている。そこで今回は、どのような線引きがなされるのが適切なのか、弁護士の清水秀郎先生に話を聞いた。


■不法行為からマナー違反まで

一声に「ハラスメント」といえども、犯罪からマナー違反レベルのものまであるという。実例を挙げながら、教えてもらった。

「セクハラを例にとると、無理やり女性の胸に触れたりすれば『強制わいせつ罪』という犯罪行為になります。相手を性的な言動で侮辱すれば『侮辱罪』です。仮にこうした犯罪行為に当たらない場合であっても、そのハラスメントが民法上の不法行為に該当すれば損害賠償責任を負います。また、民法上の不法行為に該当せず不適当な言動にすぎないのであれば、マナー違反のハラスメントにとどまるでしょう」(清水弁護士)

行為のレベルによっても、犯罪か否かの線引きがあるということだろう。
では、ハラスメントが不法行為に該当する基準は、どのようなものだろうか。

「違法かどうかの判断は、ハラスメントを受けた側の主観によって判断されるものではありません。そのハラスメントが行われた具体的な事情や状況に置かれた場合、通常の一般人なら社会的相当性を著しく欠いていると感じるかどうかです。行われたハラスメントが社会的相当性を著しく欠いていて違法であると判断されれば、不法行為に該当し損害賠償責任を負う可能性があるでしょう」(清水弁護士)

「ハラスメントを受けた」と感じても、違法かどうかの判断と合致しなければ、訴えを起こすようなハラスメントには該当しない。実際にあった判例をもとに、さらに具体的に教えてもらった。

パワハラやセクハラの該当性について、裁判例の中で基準が示されているものもあります。実質的な判断としては、加害者側の表現や行動の自由と、被害者側の性的自由や安心して働ける職場環境といった保護されるべき利益との調整をどのように線引きするか、ということで公平をはかろうとするものです」(清水弁護士)

このように双方の自由や権利を精査、熟慮することで、ハラスメントの該当性をどのように認めるか、公平に判断することができるのだ。


■ハラスメントを受けていると感じたら……

明らかにハラスメントを受けている場合、どのように対処すればよいだろう。

「ハラスメントが行われるような場に入らず、ハラスメントを行った者に対して毅然とした態度をとることでしょう。たとえば、パワハラをするような上司と話をしなければならないときは、できるだけ第三者もそばで聞いているような状況を作ることなどです。パワハラへの抑止効果が期待できます」(清水弁護士)

仮にパワハラを受けた場合には、その第三者が証人になってくれることがあるとのこと。

「そしてパワハラを受けた後、あまり間を置かず勤務先の相談窓口などへ被害申告をし、被害を放置しないようにしましょう。最近は被害申告をすることで社内調査がされることもあります」(清水弁護士)

今回の取材で、ハラスメントには犯罪からマナー違反レベルのものまでがあり、加害側、被害側それぞれの権利に基づき、不法行為かどうかの判断が公平に下されるべきということが分かった。第三者に同席を依頼するなど抑止を試みても被害を受ける場合は、自分の中にため込むことなく、すぐ相談窓口に相談しよう。


●専門家プロフィール:清水秀郎(鹿児島県弁護士会)
弁護士。主に離婚、示談交渉、債務整理などに精通。後悔を残さない選択ができるよう依頼者の目線で寄り添い、迅速丁寧に対応している。訴訟以外でも円満解決に向けて法律相談に応じている。法テラス対応。

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教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)