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宇都宮南店が指定取り消しの処分

今年3月にビッグモーター熊本浜線店の指定工場が「指定取り消し」の処分を受けた。

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これに続き、今度は宇都宮南店に併設された指定工場が指定取り消しの処分を受けた。

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今年3月にビッグモーター熊本浜線店の指定工場が「指定取り消し」の処分を受けた。これに続き、今度は宇都宮南店に併設された指定工場が指定取り消しの処分を受けた。写真はビッグモーター熊本浜線店。    ビッグモーター

本日2023年6月27日14時に関東運輸局から「不正車検をおこなった民間車検場の指定の取消処分」としてプレスリリースが出されている。

そこには「栃木県宇都宮市の指定自動車整備事業者に監査を実施したところ、完成検査の一部を実施せず保安基準適合証を交付したことなどの道路運送車両法違反が確認されたため、本日、関東運輸局は指定自動車整備事業の指定の取消し等の行政処分をおこないました」と記されている。

行政処分の内容は以下

1 指定自動車整備事業の指定の取消し
2 自動車検査員の解任命令2名

指定自動車整備事業者とは、株式会社ビッグモーター東京都港区)で、事業場はビッグモーター宇都宮南店(栃木県宇都宮市)となる。

「違反の概要」については「完成検査の一部(速度計誤差の検査)未実施(58台)」とあり、これは、熊本浜線店が3月に指定取り消しとなった際の理由と同じだ。

しかも、台数も同じ58台である。気になったので筆者が関東運輸局自動車技術安全部整備課の担当者に確認したところ、「たまたま一緒だった」とのことであった。

宇都宮南店の指定工場に関しては、道路運送車両法第94条の5第1項、同法第94条の5第4項(保安基準適合証等)及び同法第94条の6第1項(指定整備記録簿)の規定違反を理由に今年6月13日に「聴聞」がおこわれていた。(令和5年5月31日付で関東運輸局から公示されている)

6月13日に「聴聞」が実施されていた

公示によると、聴聞の対象になった事業所の名称と所在地は「ビッグモーター宇都宮南店 栃木県宇都宮市西川田南2丁目1477番8」

認証番号第6-2965号
指定番号 関東指第6-955号4
と記されている。

令和5年6月13日(火)15時より横浜第2合同庁舎自動車技術安全部基準緩和等ヒアリングルームにて実施されているので聴聞実施からちょうど2週間経過した本日、行政処分がおこなわれたことになる。

聴聞から指定取り消しの処分までの経緯について関東運輸局 自動車技術安全部 整備課の担当者に電話で話を聞いた。

――どのような経緯で車検の不正が発覚したのでしょうか?

「詳しいことはお話できませんが、今年4月にビッグモーター宇都宮南店に監査が入りました」

「指定工場においては過去2年間にさかのぼって記録を残す義務があるため、監査の際に令和3年4月からの2年間の記録を確認したところ、速度計誤差の検査が未実施であったことが明らかになりました」

「その台数が今回発表された58台です」

――宇都宮南店での違反は速度計の誤差の検査以外にもあるのでしょうか?

ビッグモーターはこれまでにも不正がおこなわれているため、そこはしっかりと確認しましたが今回は速度計の誤差測定が未実施ということのみでした」

――聴聞では何がおこなわれるのですか?

「運輸支局(ビッグモーター宇都宮南店の場合は栃木運輸支局)の担当者が4月に監査に入って明らかになった違反について宇都宮店の担当者(責任者、該当の整備担当者、自動車検査員など)に事実確認をおこないます。違反の内容や台数などに間違いがないか? ということですね」

「それで間違いがないことがわかると、行政処分の手続きに進みます」

速度計の誤差測定なぜ実施せず?

速度計の誤差測定とは速度計が正しい速度を示しているかどうかの検査である。誤差が許容範囲であれば保安基準適合とみなされるが、誤差が基準値を外れていれば車検には通らない。

ユーザー車検をしたことがある人ならわかると思うが、ローラーの上にクルマをのせてアクセルを踏み込み、スピードメーターが40km/hを示したところでパッシングなどで合図をする。平成19年以降の車両では、その時の正しい速度が31km/h-42.5km/hであれば合格だ。

熊本浜線店も宇都宮南店も「検査項目である速度計の誤差の検査を実施していなかったのに、基準に適合しているとして保安基準適合証を交付した」ことが指定取り消しの行政処分につながっている。

では、なぜ検査をしなかったのか? これについては2021年秋までビッグモーター熊本浜線店で車検を担当していた(現在は退職)整備士の方々に以前聞いていたので改めてまとめてみよう。

「車検台数のノルマをこなすため、手間のかかることはしなくていい、という指導がありました」

4WD車の場合は、専用の器具が必要でその器具を持ってくるのに手間がかかるため測っていませんでした」

「また、輸入車の中には測りにくい構造の車種もあり、強制的にローラーに載せてはかろうとすると輸入車特有の敏感なセンサー類が異常を検知(ブレーキ系統やABS異常)して警告が表示されてしまうんです。そうすると、診断機を繋いでその警告を消す作業をしなくてはなりません」

「そこでも作業がとまってしまい手間が増えます。だから最初から輸入車の速度計は誤差の測定をおこなっていなかったのです」

指定取り消しになったらどうなる?

ビッグモーターとしては今回、2件目となる「指定取り消し」。車検不正に関する処分の中でもっとも重い処分といってよいだろう。

そもそも、「指定自動車整備事業」とはいわゆる「民間車検場」のことで、規定の検査設備を有するなど一定の要件を満たした場合に地方運輸局長から指定を受けて車検事業をおこなうことができる。

運輸支局に持ち込んで車検をおこなう必要はない。つまり、国に代わって車検整備がすべて自店舗内の工場で実施できる。

国が認可する整備工場には指定工場の下に位置する「認証工場」があるが、認証工場では分解整備など車検に関わる整備をおこなうことはできるものの、車検じたいは最寄りの運輸支局などに出向いて検査ラインを通す必要がある。

指定を取り消されると1台ずつ、運輸支局に持ち込んで車検を通すことになり、大変な手間と時間を要することになる。

指定工場の資格を再度取得するには最低でも2年が必要とのことなので、ビッグモーター宇都宮南店ではこれから最低でも2年間は栃木運輸支局などに持ち込んで車検を通すことになる。

3月に指定取り消しの処分を受けた熊本浜線店でも取り消し以降、熊本運輸支局などに積載車に載せるなどして車両を運んで、車検を通しているとのこと。

なお宇都宮南店で検査項目を実施していなかった58台はこれから再度車検を受けることになる。ビッグモーターもこの車検のやり直しに関しては、費用を徴収することはないとは思うが……。指定工場としてのコンプライアンスなど著しく低い、というかゼロに等しい会社であるので油断はできない。

車検に限らず、クルマの購入/買取/車検/整備/保険などあらゆる面で不正が堂々とおこなわれている現状を目の当たりにしている。

その店が優良な店かどうか? 正しい整備や車検がおこなわれているか? グーグル・マップ上のクチコミ(★1つなど低い点数)などを参照して十分に自衛して臨んで欲しい。


中古車販売最大手ビッグモーター またも民間車検「指定取り消し」行政処分 処分までの経緯は