北朝鮮の板門店(パンムンジョム)代表部に配置されていた政治将校2人が、今月15日、1級機密漏えいの疑いにより逮捕されたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

2人は軍保衛部に拘束され予審を受けているというが、重罰に処されるのはまず間違いない状況だということだ。

事件のきっかけは、ある下級兵士の他愛のない行動だった。

この兵士は軍総政治局に親戚がおり、そのコネを頼って、勤務環境が良く安全な板門店代表部に配属されていた。また日ごろから、上官である将校たちの自宅にも出入りしていたという。将校らの使い走りをしながら、食事などをご馳走になるなどしていたようだ。

そんな風に甘やかされていた兵士は、全国民が総動員される「田植え戦闘」で代表部の業務が暇になったのに合わせ、故郷で休暇を過ごしたいと、件の政治将校のうち1人に頼んだようだ。

しかし、田植え戦闘への動員は板門店代表も対象になっており、受け入れられる話ではなかった。将校は「全国民が苦労しているときに、自分だけ休暇など話にならない」と拒絶し、兵士の非常識さを強く????ったという。

兵士はこれを根に持ち、この政治将校と、もうひとりの将校の日ごろの言動を事細かに手紙に書き、総政治局に送ったのだ。それによると、2人は会うたびに韓国の発展ぶりを礼賛し、北朝鮮のダメさかげんを嘆いていたという。

これを受け、総政治局は軍保衛部の要員を現地に派遣し、2人を調べさせた。そこで何も出なければ、助かったかもしれない。しかし彼らの自宅からは機密資料のコピー束や、韓流コンテンツや脱北者が登場する映像ファイルなどが大量に見つかったという。

こうなると、どんな申し開きも通用しない。

それにしても気になるのは、2人がどうして機密資料をコピーして持っていたかだ。ただの「いたずら心」で持っていたとしたら、あまりにも危険な行為だ。

もしかしたら脱北を計画し、韓国へ行った際に役立てようと思っていたのだろうか。あるいは、すでに韓国当局との間で、何らかのコミュニケーションがあったのだろうか。

日ごろから米韓側と間近で接する板門店の将兵らは、韓国の影響を受けやすい。だからこそ、思想的に強靭なエリートが配属されるのだが、そんな人材であっても、現実には抵抗できないということだろう。

朝鮮人民軍の女性兵士(資料写真)