櫻坂46がグループ史上初、一期生と二期生の全員(※)で表題曲を作り上げた6thシングル「Start over!」をリリース。フォーメーション発表では、一期生の小池美波が先輩としての役割をかみ締めた一方、二期生の大沼晶保は自身初の表題曲入りながら「悔しさ」を味わっていた。2人が、本作のパフォーマンスに懸ける思いとは。表題曲をステージ初披露した「櫻坂46 3rd TOUR 2023」の振り返り、7月に控える初の海外ライブ「Japan Expo Paris 2023」への思いと共に聞いた(※二期生の遠藤光莉は、休養中のため制作に不参加)。

【写真】新制服姿の小池美波&大沼晶保 撮り下ろしカット(10枚)

■ファンの声でイントロの音がかき消された

――全国ツアー「櫻坂46 3rd TOUR 2023」千秋楽の大阪公演。コロナ禍を経て声出しを解禁した会場で、表題曲「Start over!」をアンコールで初披露しました。

大沼:めちゃめちゃ緊張しました。全員で合わせ始めたのが(本番の)3日前で、本番までの時間がなく「3日後に、皆さんの前で披露するのか」と緊張を抱えながら練習して。期待に応えられるようにと思ったし、リハーサルで(センターの藤吉)夏鈴ちゃんの表現したいものを感じ取ったので、自分も一員として表現できるように、歌詞の意味もじっくり考えて臨みました。

小池:私も緊張して。初パフォーマンスは私たちにとっても、ファンの方々にとっても一生残るものだし、MVのコメントから今まで以上に期待されているのは感じていたので、いいものを届けなきゃという気持ちでいっぱいでした。アンコールがスタートして前方のお客さんが「ワーッ!」と盛り上がっているのがイヤモニ越しで聞こえてきて、その瞬間、メンバーみんなのバイブスが上がったのが分かりました。

大沼:ファンの皆さんの声でイントロ(の音)がかき消されたのは初めてで、ビックリしました。

小池:イヤモニはメンバーみんなの声も聴こえていて、(イントロでの)夏鈴ちゃんの息づかいがいつもよりちょっと荒い感じだったのもあり、私だけではなく、ほかのメンバーも「頑張るぞ!」という気持ちだったと思います。

――藤吉さんのパフォーマンスはまさに“全身全霊”という感じでした。

大沼:本番の夏鈴ちゃんはすごくて、感情が爆発しているのを感じました。曲の終盤、みんなで円を描いて回る場面で、夏鈴ちゃんだけは円に入らず、ずっと前に立っていたんです。その姿を見て「きょうの主人公はこうなんだ」と感動して、パフォーマンスごとに変化があるし、感情のままに変えられるのがすごいと思いました。ステージでは別人格になっていたし、当日の初披露を映像で振り返っても、そのときしか出せない表情を常にしていたので、何度も見返したくなります。

小池:最後のサビで、夏鈴ちゃんが手を抑える振り付けがあるんですけど、フリーで踊っていたんです。これからパフォーマンスのたびに変えていくだろうし、振り付けと考えていないんだろうと思って。ステージの後ろ姿からも楽しんでいるのが伝わってきたし、勇ましい背中を近くで見てたくましく感じました。

■「ギャル」と「狂気的な役」を演じた表題曲のMV


――一期生と二期生による、表題曲のMV撮影は初。感想は?

小池:一期生と二期生で表題曲を作りたい思いがあったし、ライブでは一緒にステージを作ってきたので、それぞれ成長して、みんなの色を出せるタイミングで作れたのはうれしかったです。楽屋では、普段と同じで楽しそうにしている安心感もあり、今回の表題曲はそれぞれの役があったので、役づくりしているのを見る楽しさもありました。

――役が決まっていたんですね。小池さんの役柄は?

小池:ギャルです(笑)。監督の加藤ヒデジンさんから、1人1人に対して「この役でお願いします」と指示があって、私は前シングル収録のカップリング曲「Cool」で「ギャル味があってよかった。今回も出してほしい」と言われて、ヘアスタイルもギャルに寄せて「ギャルはこうかな」と考えながら演じました。イメージで、ヤンキーに近いギャルを演じました。

――かたや、大沼さんはいかがでしたか?

大沼:参加できて、うれしかったです。監督から役についての資料も頂いて、それぞれ異なるキャラクターを演じているので、カットごとに「この子はこの役だから、この表情なのか」と、楽しんでいただけると思います。

――ちなみに、大沼さんの役柄は?

大沼:私は「BACKS LIVE!!」での「流れ弾」が「唯一無二でよかった」とおっしゃっていただいて、そこから「狂気的な役を」と説明されて…。みんなが自由な表情になる最後のシーンで「狂気的な表情をしてほしい」と言われました(笑)。

小池:唯一無二って感じ。クールに歌うのではなく首をかしげたり、ちょっとした表情が「沼ちゃん(大沼)らしいな」と思いました(笑)。

――(笑)。激しく体を動かしている最後のサビのシーンでは、皆さんの表情が印象的でした。

大沼:監督が1人1人に「この人は本当の笑顔」「この人は違う笑顔」と指示を与えてくださって、表情がそれぞれ違うんです。

小池:私はギャルとして、笑うのではなく「クールな目線でいてほしい」と言われました。曲の終盤なので、普段ならめちゃくちゃ笑いたいところですけど、感情を抑えるのはむしろ新鮮だったし、みんなを下に見るような感じが楽しかったです(笑)。

大沼:(笑)。私は、与えられた「狂気」って「何だろう?」と終盤まで考えていました。監督に撮影前から「狂気」と繰り返し言われていたので、その答えとして、強い目力を意識して。目は笑っていないけど、口元は笑っているという相反した表情を意識しています。「流れ弾」の主人公のように、裏切られても「自分は強く笑ってやる」と考える強い女性を演じました。

――ほかにも象徴的なシーンが。1番のサビでは、メンバーが体を寄せ合って作った土台を藤吉さんが登っていきます。

小池:あのシーンはキレイに土台を組まないと夏鈴ちゃんが安全に登れず、成功しないんです。リハーサルで何度も失敗しちゃって、メンバー間の距離やすき間の作り方でも状況が変わってしまうので、何度もやり直した上での1カットがMVに残りました。

大沼:何十回もメンバーの組み合わせを変えて。夏鈴ちゃんがキレイに登れたときは、下を向きながら「よっしゃ!」とうれしくなったし、幸せな重みでした(笑)。

■フォーメーションへの思い 「悔しさ」と「一期生の役割」


――本作で初の表題曲歌唱メンバーとなった大沼さんは、フォーメーション発表後、ブログで「自分の力で掴みとることができなかった」と悔しさを明かしていました。

大沼:前作の5thシングル「桜月」の活動期間で「絶対に表題曲に選ばれるようになりたい」と思っていろいろと挑戦していたので、特別に選ばれたわけではないと思い、気持ちが迷子になってしまったんです。でも今は、フォーメーション発表後にファンの皆さんから頂いた言葉もあり、前向きな気持ちで頑張っています。

――大沼さんが挑戦していたこと、とは?

大沼:好きなものを発信したり、ブログで海に飛び込む姿を動画で投稿したり(笑)。レギュラー番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京/毎週日曜24時35分)でたびたび披露している自作の「沼ソング」も、自分を知ってもらおうとして発信していたことでした。

――かたや、小池さんは一期生が5人、二期生が12人という環境での2列目に。ポジションへの思いは?

小池:フロントメンバーの二期生は過去に表題曲を任されていたメンバーで、その後ろ、2列目ではゆいぽん(小林由依)を中心に一期生3人が、(増本)綺良ちゃんとまつりちゃん(松田里奈)に挟まれているんです。どのポジションでも「自分の中のセンターにしたい」という個人的な思いは変わらないんですけど、フォーメーションには意図があるのかなと考えています。欅坂46時代からの8年間(※)で培ったものを出せるタイミングで、二期生には伸び伸びと活動してほしい気持ちがあったので、一期生らしさも出しつつ支えたいと思っています(※グループは2015年8月に欅坂46として結成。2020年10月に櫻坂46に改名)。

――小池さんたち、一期生が「培ったもの」とは?

小池:気持ちの面、とか。私たちが経験してきたものを、二期生のメンバーが今まさに経験していると感じる瞬間があるんです。これからの櫻坂46では、二期生と三期生の存在が大事になってくると思っています。自分に「自信がない」と思っている子もいるかもしれないけど、自分らしさがあればいいし、その子のパフォーマンスがいいと思う人たちもたくさんいるので、自信を持ってほしいです。

■ツアー完走を経て挑むフランス、パリでの初の海外ライブ


――表題曲の初披露もあった「3rd TOUR 2023」では、4〜6月にかけて全国5都市11公演を巡りました。振り返ってみて、いかがでしたか?

小池:リハーサルで関係者の方々が、「2nd TOUR 2022 “As you know?”」(2022年9〜11月)を「超える」とおっしゃっていて、照明やステージングにも表れていました。ダンスではオリジナルと同じ振り付けがほぼなく、会場でメンバーが各所に登場したり、ファンの皆さんへ近づけるようにしたり、オリジナルの楽曲よりパワーアップしたものをお届けする工夫もたくさんあったんです。

だから、前回を超えるものをという思いを、私たちがどれだけモノにできるかと考えていました。「1st TOUR 2021」(2021年9〜10月)では「皆さんと一緒にライブを作り、楽しむ」のをテーマにして、「2nd」と「3rd」は皆さんとライブを作るのは変わらず、櫻坂46は「こういうグループだ」とより明確にするためのツアーだったので、変化もあったと思います。

大沼:「2nd」から「3rd」への期間が短かったので、その間に成長したグループをファンの皆さんに届けられるかという不安もありました。披露曲の「Cool」でメンバーが照明で描かれた瓶の中に入っていたり、センターの(大園)玲ちゃんがデジタルスキャンされたりと、演出面もたくさんこだわってくださって。声出し解禁で「それが愛なのね」ではこれまで以上に盛り上がり、「夏の近道」でもファンの皆さんの声がたくさん聴こえて、ライブがパワーアップしたと思いました。

本編後半はたたみかけるような曲が続いたので、リハーサルで体力を検証しながら、ギリギリまで突き詰めたんです。ライブアレンジして一期生〜三期生で披露した「BAN」では間奏のダンスが追加されていて、体力面でのつらさはあったんですけど、間奏で私たちの叫ぶ「ヘイ!」の掛け声がいつも以上に大きくて、メンバーみんなのパワーを感じました。

――ツアー完走を経て、7月15日にはフランス、パリで「Japan Expo Paris 2023」に出演。櫻坂46として、初の海外ライブです。

小池:公式YouTubeのコメント欄で海外からのコメントもたくさん頂いていて、いつか海外でライブがしたいと思っていたんです。その1歩目は大きなステージですけど、今の私たちをそのまま見せるのではなく、櫻坂46が世界でも通用するグループになれるように、本番までにより大きく成長していたいと思います。

大沼:グループとして「海外でパフォーマンスしたい」とずっと言ってきて、初めての舞台がパリというのはビックリしました。日本を代表するグループとして参加できるのがありがたいし、うれしいです。言語が違うので、気持ちやパフォーマンスで「櫻坂46らしさ」を伝えて、グループの輪を海外にも広めていきたいです。

――期待しています。ちなみに、パリは初めてですか?

大沼:えっと…。旅ですか?

――いえ、パリです(笑)。

大沼:あ、パリ(笑)。初めてです。

小池:私も初めて。

大沼:美波さん、めっちゃ似合いそう。

小池:え、なんで!?

大沼:フランス人形のような見た目だし、現地の人って言われても信じますよ。

小池:たしかに、髪色は溶け込めるかもしれない(笑)。

大沼:溶け込めます、絶対。エッフェル塔の前で写真を撮ってほしいです!

(取材・文:カネコシュウヘイ、編集部 写真:上野留加)

 櫻坂46 6thシングル「Start over!」は発売中。

(左から)櫻坂46・大沼晶保、小池美波  クランクイン! 写真:上野留加