1月にスタートしたバラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ系/毎週月曜~金曜11時50分)で、ハライチ岩井勇気、澤部佑と共にMCを務めるフリーアナウンサーの神田愛花。明るい雰囲気があふれ、気取らずにお昼のひとときを楽しく過ごせると人気を集める同番組はもちろん、2012年のNHK退局後、『ワイドナショー』や『まっちゃんねる』など、フィールドを問わない活躍を続ける。さまざまな番組でその個性と華を輝かせ、多くの人に愛される神田に話を聞くと、真面目で素直な人柄が伝わるエピソードや“バラエティには向いていない”という意外な自己分析が返ってきた。

【写真】神田愛花、周囲を明るくする笑顔が魅力!

◆“まとまらない3人”が送る『ぽかぽか』 自身の役割は“プレイヤー”

――『ぽかぽか』番組開始から半年が経ちましたが、手応えはいかがですか。

神田:何よりありがたいのは、スタッフの皆さんのやる気と元気と士気が、半年経っても変わらないこと。我々MC3人(神田、ハライチ岩井勇気・澤部佑)が毎日元気をもらっている感じなんです。

――「目指せ300g 牛肉ぴったんこチャレンジ」など、名物企画も育っていますね。

神田:お肉のコーナーが一番面白いって言われていて(笑)。お肉を食べる時は300gを選ぶようにして練習していますが、放送では意外と(肉との)距離が遠いので、毎日見ていても難しいんです。このコーナー、こんなに続ける予定じゃなかったのにすっかり名物になってしまって。悔しいですよね、人間としては(笑)。「これをやりに来た」という方もいらっしゃるみたいで。

――『ぽかぽか』に『笑っていいとも!』の空気を思い出すという声も多いです。

神田:そういうご指摘も頂きますが、フジテレビさんの大事な歴史を作ってきた枠を自分のような者がやらせてもらえているとは思えないので、自分自身としては正直、全然実感がありませんでした。

ただ、先日、中高時代の友人4人で1泊2日のお泊まり女子会をやったとき、友人がサプライズをしてくれたんです。その子たちはいつも中高時代のままの私でいればいいと思ってくれていて、日頃、仕事のことは一切言わないのですが、みんなで料理を作っているときに他の3人が1回ホテルの部屋から出ていって。なんだろうと思っていたら、『笑っていいとも!』のオープニング曲を携帯で流しながら、金のくす玉と共に登場して。それで、歌詞を打ったカンペを作っていて、隠し持っていた偽物のマイクと黒いサングラスを私に渡し、「歌って!」と言うんです。そこで私は「あ、私がタモリさんなんだ」と思い、ちょっと真似をしながらやったんです。

――すてきなエピソードですね!

神田:はい! それでそのときに初めて、自分がバラエティの伝統的な枠で番組MCをさせてもらっているという実感が湧いたんですよね。くす玉の「おめでとう」の文字を見て初めてこれは大変なことだったんだと自覚しました。今まで半年やってきて、すでに自分の生活の一部に『ぽかぽか』がありますが、そこからもっと特別な毎日なんだと改めて気づき、さらに1個ギアを上げたトップギアを見つけた気がしています。

――ハライチさんと3人の役割分担はどのようにされているんですか。

神田:私は仕切り役ではなくて、「プレイヤー」として呼んでもらっていて。仕切りを任されている澤部さん、笑いを積極的に取りに行く岩井さんと違い、私がやるべき役割は早い段階から考えて実践していました。具体的に言うと、面白かったら大きな声で率先して笑う、拍手のタイミングも誰よりも最初に自分が大きく打つなどで、場を盛り上げていくこと。それを自分なりに実践していたら、演出の方に「ムードメーカー」と言っていただけて、私の役割が明確に見えた気がしましたね。

――もともと「プレイヤー」としてのオファーだったんですね。

神田:「それ、一体なんですか?」とはプロデューサーや演出の方に聞いたんですけど、「そのままでいいです」という答えなんですよね。「アナウンサーはいますから、アナウンサーの役割は全く求めていません、毎日楽しんでいただければ大丈夫です」と言っていただいて、「そんなことでお金って稼げるもの?」と思い、つかめないまま番組のスタートを迎えました。でも、それではプロとしてさすがにダメだと思い、自分の役割を考えながら必死にやってきた半年でした。

――MC3人は、どんな3人組ですか。

神田:全然まとまらない3人です(笑)。たまに2人が同じ方向に行っても、日によってまた違うほうに針が向いて、それを誰かがワーッと追いかけるみたいな感じなんです。毎日会うので、「私達ってこうだよね」というのが固まってくると、私も安心してしまうんですが、そうじゃなく、あの2人もハチャメチャで、そこに自分も入っていくと、もっと訳分からないことになっていて。それが飽きないというか。同じ番組なのに、毎日別の番組を見ているような、アメーバみたいに常に変わっていく番組ととらえていただけたらうれしいです。

◆思ったことを言っているだけで、面白いことを言っているわけではない


――ご家族(バナナマン日村勇紀)からのアドバイスはありますか。

神田:夫はああいう人なので、アドバイスはありませんが、「家にいる愛花のままでもっとやったら」とはよく言われます。でも、家にいる私というのが、自分で理解できていないので。“緊張をなくす”とか、“家で見せている自分をもっと出すと個性が出ていいと思うよ”と言ってくれるんですが、どうしてもロジスティックに考える頭なので、家にいる自分がまだ分析できていなくて。夫はヘビー視聴者の1人という感じですね。

――オンオフを切り替えるタイプではないのですか。

神田:そうですね。顔は、多少オンオフ入れていますが。ぼーっとした顔は見られたもんじゃないので。もしかしたら、そうしたオンオフも外せるぐらい余裕ができたら、アドバイスを取り入れられるかもしれません。

――インタビューでは「面白い人」枠で呼ばれることにプレッシャーがあるとおっしゃっていたこともありました。

神田:そうしたプレッシャーは今も変わらないです。月曜日にはときどきお悩み解決のアドバイザーのコーナー(「家庭のお悩み解決!ベストアドバイザー」)がありまして。あれ、私の中ではほとんど大喜利なんですよ。でも、芸人さんがいらっしゃるので、笑いを取りに行くのは芸人さんの役割で、私は到底勝てないので、自分なりにやれることを考え、より私らしい答えを書くようにしていて。

それがたまに世間の皆さんとズレがあって、「ウケを狙っているんじゃないか」とか「汚い」とか「下品だ」とか言われることがあるんですけど、私としては本気なんですよね。それを澤部さんや伊集院(光)さんがイジって笑いにしてくださったときに、私のフリップがやっと面白く昇華できるというか。ただ、お客様がシーンとしちゃうときはあるんですよね。ごめんなさいと思いますが、その発想が普段の私なので、早く浸透したら良いなと思っています。

――イメージとギャップが大きいと言われるようになったのは、いつ頃からですか。

神田:NHKを辞めてフリーになってからですね。しかも、最初の3~4年間は「NHKの元アナウンサー」でやらなければと思っていたんですが、このままでは仕事が来ないと思い、明日クビになっても仕方ないと覚悟を決めて、思ったことを言うようにしていったところ、「イメージと違って変なこと言う」みたいに言われ始めて。と同時に、周りに戸惑う方も出始めたんですが、そのほうが自分としては楽だったので、続けてきました。

――昔から「面白い子だね」と言われていたわけではないですか。

神田:男の子とデートをした時に、「神田さん面白いね」とか「愛花ちゃん面白いね」と言っていただいたことはありました。でも、そういう方はだいたい逃げちゃうんです。面白いと言われるのはうれしかったですが、それを言われたら最後通告だと思っていました。

でも、夫と付き合ったとき、夫は私を面白いと言ってくれながらも、私の3倍以上面白く乗っかって返してくれたんですよ。乗っかってくれて、さらに面白く盛り上がっていくのが初めてで、うれしかったです。

――ご自身の面白さを自覚して、プラスに変えられたのは日村さんの影響ですか。

神田:それはあるかもしれません。ただ、もっと言いますと、私は思ったことを言っているだけで、面白いことを言っているわけではないんです。それを面白がってくれ、イジってくれる人がそばにいると、私が面白い人に見えるだけですから。

◆意外な自己分析「バラエティには向いてない」


――神田さんといえば、『まっちゃんねる』での「IPPON女子グランプリ」は衝撃でした。

神田:あれも別室にいた芸人さん達ががわちゃわちゃ言ってくださっているのを編集で入れてくださっているから、私が面白く見えてますけど、会場はそんなに笑っていない(苦笑)。ルールも本当に分かっていなかったんですから。

――でも、これだけバラエティで売れっ子になると、ある程度計算してしまったり、ウケを狙いたくなったりという欲も出ませんか。

神田:狙いに行っちゃうときは、 3~4年前には一度ありました。制作の方から、 「今日面白かったです」と言われ、「こういうのが面白いんだ。じゃあ今度はこういうこと言おう」みたいに何回かやったことがあったんですけど、誰にも響かず、どなたもイジってくださらなくて。

それで、よくマネージャーにも相談していたんですけど、マネージャーは「分からないなら、分からないままでいいんじゃないですか」と言ってくれて、「じゃあ1回分かんないままやってみよう」と思ったんです。それで、 そのまま言っていたら今に至りました。

たぶん分かっちゃうと、私なんかはすぐに「このパターン」「あのパターン」と型にはめたくなるんですが、生身の人間のトークはパターンにならないから。バラエティにはその道の天才の皆さんが来ていますから、自分の想像通りになんて行くわけがないんですよね。だから、今は「考えない」ようにしています。放送もほぼ見ません。そもそも苦手なんです、バラエティが。

――ご自身にバラエティが向いているとは、今も思っていない、と?

神田:私は向いてないと思っています。私としては、自分の時間を与えられてしゃべることができるコメンテーターのお仕事が、自分の中でダントツに向いていることです。前日にニュース項目が来ますし、それを自分で調べて自分の考えを文章でまとめたものを発表するというのは、NHK的でもあり、成果も出しやすい。バラエティは向いていないので、呼んでいただいている間は出られるぐらいの気持ちです。

――『IPPON女子グランプリ』でしのぎを削った王林さんや渋谷凪咲さん、滝沢カレンさんなどがライバル的存在なのかと思っていました。

神田:皆さん、方向性は全然違うけど、天才なんですよ。カレンちゃんなんて天才過ぎちゃって、思ったことをそのままポンと出すだけで惹きつける人ですが、私はそんなレベルではないので。

◆目標は変わらず安藤優子 『ぽかぽか』でもジャーナリズムを勉強


――以前、目標として安藤優子さんを挙げていらっしゃいましたが、その理想像は変化しましたか。

神田:安藤優子さんのように、女性が1人で月~金の帯の報道番組を任せられるような存在になりたいという思いは変わりません。それには、視聴者の皆さんと制作の皆さん、両方から信頼を得ていないと任せてもらえないと思うんですけど、60代でも良いので、将来的になりたいですね。実は『ぽかぽか』もそのための勉強なんです。

――『ぽかぽか』は安藤優子さんへの道の一歩だったのですね!

神田:『ぽかぽか』は、自分の中では2時間のドキュメンタリーだと思っていて。生放送なので、リアクションも、どうツッコまれるかも、誰がどう動き始めるかも決まっていない、分からない。そんなドキュメンタリーの場にいると思って毎日臨んでいます。

――バラエティで売れっ子になって、理想像が変化したわけではないのですね。

神田:理想像に近づく難しさは実感しています。昔は「40代には報道番組や情報番組をやれていたら良いな」と思っていましたが、今は『ぽかぽか』におりますので、夢をさらに20年後ぐらいに再設定し、60歳ぐらいでなれたらと思っています。その間ずっと『ぽかぽか』を20年でも30年でもやらせていただき、『ぽかぽか』の場をお借りしながらジャーナリズムを勉強して、神田だったら任せられると思ってもらえるように鍛錬していきたいです。

――今のご自身の強みとは?

神田:43歳になりまして、自分の中でおばさんだという認識が100パーセントできるようになったことです。開き直れる、怖いものがないことをすごく明るく感じておりまして。年齢を重ねると共に恥ずかしさを取っ払うことで、共感してくださったり、面白いと思ってくださったりする方が増えたと感じています。

――逆に今のご自身にとって課題はありますか。

神田:『ぽかぽか』をもっと多くの方に見ていただくことです。これだけスタッフさんの雰囲気が良くて、熱量がある番組は、今の時代に数えるほどしかないと思うんですよ。現場に怒号など飛ぶことなく、みんな前向きに、とにかく今日の生放送を面白くしようとしている、そのエネルギーが画面から出ている番組だということをできるだけ多くの方に伝えるのが自分の課題です。

――3時間生放送のゴールデン特番『ぽかぽかゴールデン』も放送されます。見どころを教えて下さい。

神田:「ぽいぽいトーク」を中心に展開する3時間生放送ですが、体がもう2時間に慣れてしまったので、3時間をまた全力でお伝えできるよう調整していきます。2分だけでも見ていただければ、どんな方でも明るい気持ちになれる番組だと思うので、絶対に期待は裏切りません。一人でも多くの方に見ていただきたいです。

(取材・文:田幸和歌子 写真:高野広美)

 『ぽかぽか』は、フジテレビ系にて毎週月曜~金曜11時50分放送。『ぽかぽかゴールデン』は、同局系にて6月29日19時放送。

神田愛花  クランクイン! 写真:高野広美