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 アメリカ・フロリダ州の消防署には、赤ちゃんを産んだものの諸事情で育てられない親が、匿名で子供を預けることができる「セーフヘブン・ベビーボックス(Safe Heaven Baby Box)」が設置されている。日本でいうところの赤ちゃんポストのようなものだ。

 今年1月、同署で夜勤をしていた消防士は、午前2時に警報音で目が覚めた。その音は、誰かが赤ちゃんポストに子供を託した時になる音だ。

 ボックスから取り出して抱き上げた赤ちゃんと目が合った瞬間、消防士は不思議な縁を感じたという。第一発見者である彼は、妻に連絡をし、自分たち夫婦の子供として迎え入れることを決めた。

 現在6か月の女の子の赤ちゃんは元気に成長している。第一発見者であり親となった消防士は、産みの親が、健康で幸せに暮らしていることを知ってくれたらうれしいと話している。

【画像】 赤ちゃんポストに託された赤ちゃん

Florida firefighter adopts baby left in "Safe Haven Baby Box" at Ocala fire station.

 フロリダ州オカラ消防署に勤務する消防士(本人の意思により匿名)は、今年1月にゾーイと名付けられた愛らしい女の赤ちゃんを養子にした。

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 オカラ消防署に設置されてある赤ちゃんポスト「セーフヘブン・ベビーボックス(Safe Heaven Baby Box)」に、赤ちゃんが放置されたことがきっかけだ。

 夜勤中だったその消防士は、午前2時頃に消防署で警報が鳴るのを聞いた。

 その音は、誰かがポストに子供を預けたことを意味していたが、誤報は今までにもよくあった。

 消防士が念のために中を覗いてみると、小さな赤ちゃんが静かに哺乳瓶を握り、彼を見つめていたのだ。

赤ちゃんは、小さな哺乳瓶を持って、リラックスしている様子でした。

私は、彼女を抱き上げました。すると目が合ったんです。ただそれだけでしたが、私はその赤ちゃんのことが一瞬で大好きになりました。
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pixabay

10年間子供を望んでいた夫婦との巡り合わせ

 実はその消防士夫婦は、子供を望んでいたのだが、なかなか妊娠・出産に至らず、10年以上も努力を続けていたという。

 消防士は、赤ちゃんポストに放置された女児との偶然の出会いを運命の巡り合わせだと感じ、即座にその赤ちゃんを養子にするという考えが芽生えたという。

 後のメディア取材で、消防士はこのように語っている。

寝ている妻を起こしたくなかったので、すぐには電話しませんでしたが、妻が私の考えに賛成することはわかっていました。

  ゾーイを病院に搬送した後、消防士は管理者宛てに届くよう、養子縁組の希望と準備を表明するメモを残した。

私は、そのメモに妻と私が10年間赤ちゃんを作ろうと努力してきたと説明しました。フロリダ州での養子縁組クラスにもすべて参加し、登録をしたことも伝えました。

私たちに必要なのは、子供だけだったのです。

 その後、消防士から連絡を受けてこのことを聞いた妻は、電話口で涙を流したそうだ。

「まだはっきりとは決まっていないから、興奮しすぎないように」と妻に言いました。

私が一番恐れていたのは、私が書いたメモがゾーイの手元に残らず、彼女がどこかにいなくなってしまうのではないかということでした。

管理者から連絡があるのを待っている数日間は、かなりストレスに感じました。

 しかしその数日後、ゾーイを無事に家に迎え入れることができ、4月には正式に娘になることが決まった。

私がゾーイを見つけたのは、神によるお導きだったと思っています。
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image credit: youtube

生みの親にゾーイが幸せであることを知ってほしい

 消防士は、今回この話をメディアで共有することにした理由を、次のように語った。

ゾーイの実の母親が報道を見て、産んだ子供が養育環境にあること、幸せに暮らしていることを知ってくれたら、と思ったのです。

私たちはゾーイの実の母親に、自分の子供が大切にされていること、言葉では言い表せないほど愛されていることを知って安心してもらいたいのです。

 現在、ゾーイは生後6か月になった。

 夫婦の愛を一身に受け、すくすくと元気に成長中だ。

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全米に148か所設置されている赤ちゃんポスト

 セーフヘブン・ベビーボックス(赤ちゃんポスト)は、インディアナ州に拠点を置く非営利団体で、諸事情により子供を育てられない母親が安全に子供を託す場所を提供することで、新生児の放棄を防ぐことを目的とした活動を続けている。

 ウェブサイトによると、現在アメリカ全土にSafe Haven Baby Boxは148か所あり、これまで31人の乳児が無事に引き渡されたという。

 赤ちゃんポストの中は温度管理されていて、内部にはバシネット型のベッドがあり、取り出しが簡単な仕組みになっている。

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 プログラムの創設者モニカ・ケルシーさんは、ゾーイが発見された後、子供を安全な場所に残してくれた見知らぬ母親に感謝した。

私たちは、この幼児を合法的に引き渡した両親に「ありがとう」と伝えたいです。

子供の安全を守ってくれて、ありがとう。この子の世話がきちんとなされる場所に子供を連れてきてくれて、ありがとう。そして、自分が最善だと思うことをしてくれて、ありがとう。

 加えて、ケルシーさんは、ゾーイは赤ちゃんポストが「きちんと機能し、必要とされている」ことをさらに証明していると述べた。

 同組織は、ゾーイのような赤ちゃんが、生命を脅かす恐ろしい状況に直面する必要なく、赤ちゃんを適切に愛情をもって世話できる家族と巡り合うことを心より願っており、そのために日々尽力している。

 ちなみに日本では赤ちゃんポストは、熊本県北海道に2カ所(2022年5月時点)にあるそうだ。

 熊本県熊本市西区にある慈恵病院では「こうのとりゆりかご」という名称を使用しており、北海道石狩郡当別町の施設は市民団体「こどもSOSほっかいどう」が2022年5月に開設し、「ベビーボックス」という名称となっている。

 いずれも親は匿名で子どもを託すことができ、手渡し又は屋内の部屋に預け入れの形を採用しているそうだ。

References:Newborn baby left in Safe Haven Baby Box was adopted by the firefighter who found her/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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消防署に設置された赤ちゃんポストに置かれた子を、最初に発見した消防士が我が子に迎え入れる