「アトリエ」シリーズと言えば、昨年に発売25周年を迎えた長寿シリーズだ。直近では、3月発売の最新作ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~』、そして7月頭より放送が始まるテレビアニメライザのアトリエが記憶に新しい。

 そして、7月にはもうひとつ、「アトリエ」シリーズで大きな動きがある。
 1997年発売のシリーズ第1作マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~(以下、マリーのアトリエ)のリメイク版、マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~(以下、『マリーのアトリエ Remake』)が発売されるのだ。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_001

 今回、そんな『マリーのアトリエ Remake』の先行プレイの機会に恵まれた。
 恵まれた……のだが。

 筆者、「アトリエ」シリーズは2012年発売のアーシャのアトリエ ~黄昏の大地の錬金術士~(以下、『アーシャのアトリエ』)しかプレイ経験がない。シリーズを追いかけたい意欲は『アーシャのアトリエ』を遊んで以降、あるにはあった。
 しかし、なかなかその機会が作れず、気がつけば2023年の今。

 それでも、ちょっとは踏み出そうということで昨年の夏、Nintendo Switchソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~ DX』を買ったりした。
 しかし、本稿を書いている今もなお未開封のままである。

 すみません、本当にごめんなさい。
 どうぞ、お構いなくメガクラフトを投げつけてください。樽でも構いません。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_002
本稿が掲載された時、自分は始めているのだろうか……。

 そんな中で、今回の事前レビューのお話が来たので、正直後ろめたさを感じている。
 しかし、シリーズの始まりにして原点に触れられる、またとない好機なのも事実!

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_003

 「許せ、ソフィー!これ書き終わったら必ず始めるから!」と心の中で謝罪した上で、生まれ変わった『マリーのアトリエ』の特徴、逆にここからオリジナル版を遊んでみて気づいたリメイク版の見所などを取り上げていきたい。

文/シェループ

『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』公式サイトはこちら

リンク

リンク

リンク

26年の時を経て現代に蘇る『マリーのアトリエ』

 最初にオリジナル版のことを。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_004

 オリジナル版『マリーのアトリエ』は1997年5月23日、初代PlayStation向けに発売された。後に一部、新要素を加えたセガサターン版、それを元にしたPlayStation版マリーのアトリエ Plus ~ザールブルグの錬金術士~』も発売されている。

 ちなみに2000年にはマリーのアトリエGB』なる、ゲームボーイゲームボーイカラー)版も発売されている。実のところ、筆者がアトリエの名を知ったのは同作からである。あくまでも当時購読していたゲーム雑誌を見て知った感じで、実際にシリーズを遊んだのは、それからだいぶ先のことだったのだが……。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_005

 それはともかく。本作のストーリーを端的に紹介すると、王立魔術学校(通称:アカデミー)にて錬金術士を目指して勉強中の主人公「マルローネ」(マリー)が落第の危機を脱するため、教師イングリドより課せられた卒業試験に挑むというもの。期限は5年間。それまでにイングリドが評価に値する高レベルのアイテムを何かひとつ作り出す、というのが最終目標となる。

 本作が発売された1990年代当時と言えば、世界を支配せんとする魔王の野望を打ち砕くため、勇者になって冒険を繰り広げていくというストーリーがRPGのお約束として定着しつつあった。
 だが、そこから外れたものもいくつか誕生している。モンスターの図鑑の完成を目指すものなどがその一例だ。
 1996~1997年頃なら、幼稚園児がご近所を冒険するRPGというようなものもあった。

 本作もそんなお約束を外したRPGのひとつとして誕生。
 内容についても、アイテムを作り出すことに主眼を置いたシステムと、それを依頼に応じて作ったり、納品したりするマネジメント系シミュレーションゲームを彷彿とさせるプレイ感を特徴としている。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_006

 アイテムを作り出す一連の過程は「調合」と称されている。「調合」は、マリーが試練のためにイングリドより与えられたアトリエ「工房」で実施。作るには材料となるアイテムのほか、調合道具、レシピなどが必要になってくる。言うまでもなく、それらを手に入れるためにはお金(銀貨)が必須。そのため、特定のアイテムを納品する「依頼」の仕事などに従事していかなくてはならない。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_007

 もうひとつの材料は、拠点の街「ザールブルグ」にあるお店、もしくは街の外に点在する「採取地」で手に入れる形。後者に出向く際には護衛となるキャラクターを雇い、同行させる必要がある。基本、「ザールブルグ」の街中で、該当するキャラクターに話しかけ、「やとう」のコマンドを選べばそのまま同行してくれる。同行可能な人数は2人までとなる。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_008

 「採取地」にはモンスターも徘徊しており、材料を探している際に遭遇すると戦闘になる。戦闘はコマンド選択型で、行動順はステータスや選んだコマンドの種類に応じて決定される。また、「前衛」「後衛」の概念があり、どちらかに立つことで物理、魔法の攻撃に補正がかかるようになっている。
 最終的に相手を全滅させられれば勝利だ。逆にこちらが全滅すると「工房」へと強制的に戻されてしまう。並行して「日数」も経過。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_009

 5年間の期限が物語る通り、本編は「調合」と「採取」、「採取地」への移動時などで日数が経過。それと共に季節が変わったり、固有のイベントが発生するが、依頼の期日も減っていく。万が一、期日を過ぎてしまえば失敗、もしくは報酬減少などのペナルティが課せられてしまうのだ。
 そうした事態に至らぬよう、その依頼ではどれだけの時間を要するのかなど、先を見据えた判断と無駄が出すぎない行動を取っていくことが求められてくる。

 こうした一見、平和的ながらも日数管理に神経を配ることが試される、ユニークなRPGに仕上げられている。一連の特徴は本作の後に出た『アトリエ』シリーズにも継承されていったもので、筆者も『アーシャのアトリエ』の時に体験済み。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_010

 当時もいろいろ先の出来事を想定し、行動していく流れに脳味噌フル回転となり、「やることが……やることが多い……!!」な状態になった覚えがある。考えなければならないことが多いなりに中毒性も高く、気づいた時には3~4時間が溶けていたこともしばしば。

 同じ中毒性は『マリーのアトリエ』でも健在で、今回のリメイク版でも再び味わうに至っている。

遊びやすさに全振りしたリメイク版。おかげで時間は溶けに溶ける!

 筆者個人としては、数年ぶりの『アトリエ』でもあったが、改めて感じたことは次の通りである。

 やはり『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!
 そして、やればやるほど無中になれる!

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_011

 とにかく、一度「依頼」の達成と「採取」が始まると止まらなくなる。「次はこれをやろう」「これもしよう」「ちょっと探索範囲を広げよう」「戦闘をこなして成長させよう」など、次から次へとやりたいことが噴出しては時間が溶けていく。

 初めて遊んだ『アーシャのアトリエ』の時も、こんな具合に止まらない恐怖を味わったなと、その頃の記憶が蘇った次第である。あと、アーシャの妹(ニオ)を救出する過程で倒さなくてはならない大ボスがやたら強くて悩まされたことも。
 むしろ、そっちの記憶が勝っているような、そうでもないような……。

 遊んでいた時の感想はそんな具合で、リメイク版全体の作りに話題を移すと、遊びやすさ重視で設計されているのが印象的だ。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_012

 特にゲーム本編を開始してからのチュートリアルが非常に丁寧。基本的な操作、システムの解説から、どんな風に進めていけばいいのかといったガイドも挿入されるため、しっかり基礎知識を学んでから本番へと入っていける。

 「イングリド先生の課題」と「実績」によって、「最低限これはこなしておこう」という行動指針が立てられ、なおかつそれが常に画面上に残り続けるのも良心的だ。基本、ストーリーを進めるに当たって重要な「依頼」をこなすかは任意で、受けたくない時は受けない選択も取れるため、次の目的が無くなってしまうこともある。だが、この2つがあることによって、たとえ小さいものであっても何かしら目的は残る。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_013

 そんな「次に何をすればいいのか分からなくなる」という事態を解消するための施策として、この2つは非常に効果的に作用している印象を抱いた。もちろん、2つをこなせばちゃんと報酬が得られる。課題なら銀貨、実績ならマリーを始めとするキャラクターたちのステータスアップだ。なので、取り組んだところで絶対に無駄とはならない。

 地味な要素かもしれないが、このおかげでプレイ中、やるべきことが欠けても「だったら、こちらに取り組もう」と、目的意識を維持しながら遊び続けられるのは、本作の大きな強みになっていると感じるところだ。これとは別に設けられた、本編で発生するイベントのすべてをまとめた「イベントリスト」も同様の効力を発揮している。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_014

 逆に言えば、その反動で中毒性もマシマシなのだが。

 同じ遊びやすさへの配慮は操作性、ゲームテンポ、難易度にも表れている。とりわけ戦闘は、4つのボタンごとにコマンドが割り振られているため、即座に行動に移れるのが快適。戦闘速度の調整にも対応しているので、設定次第では瞬時に決着するようになっている。

 また、近年の「アトリエ」シリーズは日数制限の撤廃がスタンダードになっているという。伝聞風に書いたのは、筆者が唯一遊んだ『アーシャのアトリエ』には日数制限があったためだ。その後は撤廃される新作が誕生していると小耳に挟んでいる。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_015

 かくいう本作も「無期限モード」として、日数制限なしで遊ぶ選択肢が設けられている。逆に制限のある「通常モード」もあって、昔ながらのスタイルで楽しむのも可能だ。この辺りは、制限を廃した近年のシリーズに慣れ親しんだ世代に配慮した形である。なお、制限ありか否かはゲームを始める前に限って設定できる。本番開始以降は不可能なので注意いただきたい。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_016

 それ以外で戦闘の難易度も変更可能だが、これは本編開始以降も切り替え可能。なので、ストーリーだけを楽しみたいというプレイスタイルにもバッチリ対応している。常に手ごたえを感じながら遊びたい欲求にお応えする「HARD」もあるため、どんな風に遊ぶかはプレイヤーそれぞれの十人十色だ。

 他にも「依頼」で指定されている材料にアイコンが表示されたり、拠点の「ザールブルグ」の街はフィールドマップとメニュー移動の2種類を用意。「採取地」もフィールドマップを移動しながらの材料集めと、「簡易採取」なる探索を省いてその場で材料をランダムで手に入れる2種類を用意したりと、遊びやすさを重視した工夫は至るところで図られている。

 ちなみに筆者が『アーシャのアトリエ』の時に初めて体験し、それ以来好印象を持っている先制攻撃の要素もある。「採取地」に登場する敵シンボルに攻撃を加える(杖をスイングして当てる)と、プレイヤーが先制で戦闘が始まるというものだ。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_017

 本作でもそれは採用されていて、意識すればスピーディに戦闘をこなしていける。敵シンボルの言葉が指す通り、戦闘の発生はシンボルエンカウント形式。なので、戦闘に挑むか挑まないかは基本的に任意だ。

 こうした工夫のおかげで、プレイ中にストレスを感じたことはほとんどなかった。同時に数々の配慮によって、本作が「アトリエ」シリーズの入門編として盤石に仕上げられているとの印象を強く感じた次第だ。実際、始まった時のチュートリアルから各種オプションの充実により、シリーズをまったく遊んだことのない人でも安心して遊べる環境が構築されている。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_018

 もし、これから「アトリエ」シリーズを始める、できれば原点から……との思いを持つ人には、このリメイク版が優先的な候補になると言っても大げさではないほどだ。それほど、遊びやすさを重視した仕上がりになっている。

 そして、その反動で中毒性もマシマシで、時間が溶けまくるゲームにもなっている。
 まさに『アトリエ』の真髄と原点、ここにありと言わんばかりの内容だ。

あえてオリジナル版へとさかのぼってみた結果、実は全然変わっていないところも?

 「逆にここからオリジナル版を遊んでみると、どうなのだろう?」

 そんな興味を持った筆者はPlayStation Vitaを引っ張り出し、ゲームアーカイブス版『マリーのアトリエ Plus ~ザールブルグの錬金術士~』をポチっとした。

 ……なんだかソフィーに睨まれた気がするが、気にしないことにしよう。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_019

 2023年現在もオリジナル版『マリーのアトリエ』はPlayStation Storeゲームアーカイブス版が販売(ただし、購入はPlayStation Vita、もしくはPlayStation 3内蔵のPlayStation Storeを経由する形に限られ、WEBの方からの購入はできない。)、スマートフォン(iOS / Android)で配信されているほか、本作のDigital Deluxe版にも同梱されている。
 もし、今回のリメイク版の前にオリジナル版で予習しておきたいと思っている場合は、本作とオリジナル版を一緒に購入できるDigital Deluxe版をぜひ確認してほしい。

 逆順序でオリジナル版に触れて感じたのは、当たり前とも言えるが、リメイク版での著しい進化だ。特にオリジナル版にはない、リメイク版の新要素「イングリド先生の課題」「実績」「イベントリスト」の存在は大きい。これだけでも遊び応えに違いがある。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_020

 「ザールブルグ」の街、「採取地」に移動可能なフィールドマップが設けられたのも大きい。また、いずれもメニューからの移動(簡易探索)にも対応している所には、それらが存在しないオリジナル版への敬意が感じられる。
 さらに、求める材料が固有の場所で必ず手に入るようになり、依頼がこなしやすくなっているのも難易度の緩和、遊びやすさの向上に一役買っている印象だ。

 ただ、少し意外に感じた部分で、ストーリーはオリジナルをほぼそのままというのがあった。ここまでのスクリーンショットの通り、イベントでのキャラクターの立ち絵は、現代向けにすべて一新。マリー自身も会話イベントで登場するようになっている。

 しかし、思いのほか……と言ってよいのか。リメイク版の加筆部分は少ない。そこを最も色濃く表しているのが、「採取地」の護衛として雇えるキャラクターたちだ。一部を除いて、出会いの過程がだいぶザックリしている。さして前振りのイベントもなく、あっという間に仲間になってしまうキャラクターもいる。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_021

 一応、仲間との交流を通して「友好度」を上げていけば、その掘り下げは行われる。しかし、この辺りはもう少し加筆しても良かったのでは、と思ってしまった。オリジナルが発売された1990年代なら、こういう表現になるのも分からなくはない。だが、現代の視点で見ると、絵的な情報量が増えている反動もあって、物足りなさが出てしまっている。

 とりわけ、キャラクターの深掘りが当たり前になっている近年の「アトリエ」シリーズしか知らない世代からすれば、そのような印象を抱くのは避けられないだろう。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_022

 筆者も、比較的近年のシリーズ(とは言え、もう11年前の作品になるが)となる『アーシャのアトリエ』を知るクチのため、本作のやたらザックリした書き方には違和感を禁じ得なかった。オリジナルなら、「まあ、その時代のゲームなら……」と納得できるが、さすがにリメイク版でも同じでは、前述の物足りなさが際立ってしまう。

 逆に言えば、オリジナル版を高レベルで尊重した仕上がりではある。
 それを象徴する部分として、キャラクターボイスがあり、なんとオリジナルの音源をそのまま使用。そのため、子安武人立木文彦といった、いまやベテランとなった声優さんたちの若かりし頃の演技を楽しめる。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_023
小杉十郎太氏のナレーションによるオープニングも健在。それでいて、演出は豪華になっている。

 兼任するキャラクターが多いのもちょっとした見所で、場合によっては同じ声優さんが演じるキャラクター同士でパーティが組めてしまうのも面白い。

 それに冒険に同行できるキャラクター全員にオリジナルにはなかったエピソードも追加されているので、加筆が皆無ということでもない。ただ、もうちょっと踏み込んでもよかったのでは、と双方をプレイしたところでは感じた次第だ。

 その意味では、リメイク版はまさによくも悪くも現代仕様の『マリーのアトリエ』だ。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_024
突然の横スクロールアクション!

 この一部イベントで発生する、アクションゲームやパズルゲームなどのミニゲームが、そのまま残されているのがそのことを物語っている。

これから「アトリエ」シリーズの原点を遊ぶ(知る)となればこの1本!

 リメイク版を先に遊び、その後にオリジナル版を遊ぶという逆順序を辿ってみたが、あらためて思うのは、本作は現代ならではの遊びやすさに振り切った『マリーのアトリエ』だ。ストーリー、演出周りはグラフィック、イベントの立ち絵こそ今風に改められているものの、1990年代らしさが強く、近年のシリーズを知る世代には賛否が分かれやすい。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_025

 また、今回の事前レビューで筆者は1周を日数制限ありの「通常モード」でやりきったのだが、「イベントリスト」に象徴されるガイドが豊富なためか、終盤付近には最終目標を達成し、残りは消化試合みたいになってしまうこともあった。

 おそらく難易度はオリジナル版よりも下げられている……と思う。一応、戦闘難易度を高くすれば話は変わるかもしれないが、これもこれでオリジナル版を知る経験者には賛否が分かれるかもしれない。

 とは言え、ゲームとしての出来は盤石だ。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_026

 なので、これから『マリーのアトリエ』を遊びたい、シリーズの原点を知りたいとなれば、今回のリメイクはまさに最適な一品だ。悪く言えば、1990年代の古臭さが出ているストーリーなどの部分も、当時の雰囲気をそのまま味わえる部分となっている。オリジナル版経験者にとっても、あの当時のままというのは強くお薦めできるポイントだ。

 フィールドマップとシンボルエンカウントの導入でさらに遊びやすくなった「採取」、難易度変更や日数制限の撤廃などの要素も備わり、現代的な遊びやすさを獲得した『マリーのアトリエ』として完成されている。近年のシリーズから入った世代も、この今風でありながらも昔っぽさも感じ取れる、「アトリエ」シリーズの原点を楽しんでみよう。

『アトリエ』というゲームは時間泥棒だ!『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』はやればやるほど無中になれる_027

 事前レビューとはいえ、結果的に筆者は時間を割いて遊んで、オリジナル版にも触れてその違いを楽しむといったところまでやってしまった。なるほど、これが「アトリエ」シリーズの原点かと、色々発見があった感じだ。

 そして、改めてこのシリーズを追いかけようとの決心がついたところである。

 そんな訳で、積んでいる『ソフィーのアトリエ DX』を急ぎ始めたいと思う。気付けば元祖に触れてしまったが、もうこうなった以上始める以外になし!そして、その次にも『アーシャのアトリエ』からなる、黄昏シリーズの未プレイ2作に挑む!

 このような記事に携わってしまった以上、積むことは許されない!
 絶対に攻略しなければならない積みゲーがそこにある!
 (こんな締め方でよかったのか……?)

©1997-2023 コーエーテクモゲームス All rights reserved.

『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』公式サイトはこちら

リンク

リンク

リンク