交差点に進入した救急車と一般のクルマが衝突する事件が後を絶ちません。原因のひとつに「サイレンが聞こえず気づかなかった」というものがありますが、交通ルール上は何が問題となってくるのでしょうか。

救急車は必要に応じ赤信号で進入するが

交差点に進入した救急車と一般のクルマが衝突する事件が後を絶ちません。2022年はSNS上で救急隊員が「お願いですから緊急車両へ道を譲ってください。聞こえないかのように無反応の車もいます」と切実に訴え、話題にもなりました。

救急車側が赤信号、一般車側が青信号」であっても、緊急車両緊急走行中は、こちらが交差点へ進入せず進路を譲る必要があり、こちらが青信号だからと突っ込むと、緊急車両と衝突する危険性が高くなります。

急いでいた、行けると思ったなど様々な原因はありますが、中には「そもそもサイレンなどが聞こえず、まさか赤信号で救急車が入って来るとは思わなかった」というケースもあります。

サイレンの音量は、道路運送車両法の保安基準で「前方20mの位置において90dB以上120dB以下」と定められています。90dBでも工場内部やカラオケ中の人の歌声などのレベル。これがドライバーに聞こえないというのは余程の理由が必要ですが、そのひとつが「車内で大音響で音楽などを流していた」「イヤホンをしていた」というものです。

前者はもちろん車外にも騒音が迷惑ですが、必要な外部の音を聴きもらしてしまう状況で運転するは、明らかに危険な行為です。交通ルール上ではどう取り締まられているのでしょうか。

イヤホン等禁止は「都道府県のルール」にある

道路交通法では第70条で「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」としています。第71条では「運転手が遵守しなければならない事項」としていわゆる「ながらスマホ」の禁止などを挙げ、残りは各都道府県の公安委員会の定めるところとしています。

都道府県が具体的に定めているルール「道路交通法施行細則」「道路交通規則」などを見ていきましょう。沖縄県では2009(平成21)年の改正で「高音量でカーラジオ、カーステレオ等を聞き、ヘッドホン又はイヤホンを使用して音楽等を聞くなど、安全な運転に必要な交通に関する音声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと」と規定されています。

東京都では「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」と規定。京都府でも「大きな音量でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン、ヘッドホン等を使用しているため、安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような状態」を禁止しているなど、多くの都道府県でほぼ同じような条文が盛り込まれています。

いずれも「こういう音楽の聴き方をしているからセーフ・アウト」ということではなく、客観的に「安全に運転できるかどうか」によって判断されることとなります。

違反した場合、直接的に道路交通法第71条の「公安委員会遵守事項違反」に当てはまると判断されれば、普通車で反則金6000円(違反点数なし)。ただし同第70条の「安全運転義務違反」と判断され、反則金が9000円(違反点数2点)となる可能性もあります。さらに刑事告訴されれば「5万円以下の罰金」となる場合も。救急隊員の安全を守れなくなるだけでなく、取り返しのつかない交通事故を防ぐためにも、音量はほどほどにしたいところです。

緊急走行中の救急車と、一般車が衝突する事故が多発(画像:写真AC)。