乃木坂46久保史緒里が、伊藤沙莉主演の映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』に、ホストに熱を上げる新宿・歌舞伎町キャバクラ嬢・絢香役で出演する。3月発売の乃木坂46のシングル「人は夢を二度見る」で山下美月と共にセンターポジションを務めたトップアイドルでありながら、2022年に『左様なら今晩は』で映画初出演にして初主演を務め上げ、2023年には『どうする家康』でNHK大河ドラマへの出演を果たすなど、女優としても目覚ましい活躍を見せる久保。本作を通して得た価値観や、グループの近況と3期生メンバーとしての現在の思いを語ってくれた。

【写真】まるで天使! 久保史緒里、撮り下ろしショット

◆アイドル・久保史緒里と“ホスト狂いのキャバクラ嬢”「似ている部分もありました」

 本作は、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『ミッドナイトスワン』や阿部寛主演『異動辞令は音楽隊!』を手掛けた内田英治監督と、佐藤二朗主演『さがす』や配信ドラマ『ガンニバル』が話題を呼んだ片山慎三監督がタッグを組んだ、奇想天外な探偵エンタテイメント。久保は本作への出演を経て「素直にいい子で生きることが全てじゃないと、新宿の地に教えてもらえた気がします」とコメントを寄せていた。

――今作の“ホスト狂いのキャバクラ嬢”という役柄は、アイドルの久保さんとはギャップのあるキャスティングにも思えます。ご自身ではどう感じていましたか。

久保:自分がこういう役をやらせていただけるとは思っていなかったので、お話を聞いた時にはすごく驚きました。内田英治監督、片山慎三監督はお2人とも、個人的にすごく好きな監督だったので、お名前を聞いた時にはすごくうれしかったです。お2人の元で、自分にとって挑戦尽くしな撮影が始まるんだと思うと、驚きと同時にワクワクドキドキが止まらなかったです。

――久保さんのシーンは内田監督が担当されたということですが、現場はいかがでしたか。

久保:私自身、映画の経験が少ないということもあって、内田監督は本当に細かく演出してくださいました。嘘や作ったものにならないよう、「絢香を演じてるんじゃなくて、絢香なんだ」と、どのシーンでも教えていただきました。自分でも気付いてないうちに嘘が生じてしまった時に、すぐに言葉で正してくださる方なんです。大きなスクリーンで流れると、ちょっとの嘘は全部バレてしまうので、相手の言葉を受けて、感じて、どう動くかということを教えていただきました。

――絢香と久保さんには共通点もありましたか。

久保:似ている部分もありました。絢香は純粋に夢を見て歌舞伎町に来たと思うんですが、私も夢を見て東京に来たという部分では一緒です。それから、不器用なところも似ています。頼ればいいし、弱い部分も見せていいのに、強気な態度を取ってしまって、「助けてほしい」と言えないところ。私も「助けて」とあまり言えないので、絢香もそれが言えたらもっと楽に生きられたんだろうな、と考えながら役と向き合っていました。

◆「いい子で生きることが全てじゃない」歌舞伎町で生きた絢香に学んだこと


――久保さんが作品に向けた「素直にいい子で生きることが全てじゃないと、新宿の地に教えてもらえた気がします」というコメントが印象的でした。

久保:例えば、受験をして良い大学に行って...というような人生を選択するのも1つの道だと思うんですが、私には絢香は自分の生きたいように生きていたように見えました。大人に提示された“正解の道”もあったはずだけど、そこに従わなかった。あくまで自分が生きたい道を生きていたことが、自分にはすごく格好良く、勇者のようにも見えたんです。私も中学校の時に東京に来るという決断をしましたが、きっとこの先の人生で何か選択を迫られる時が来るかもしれません。生きたい道を生きた絢香の人生は幸せだったんだろうなと思ったんです。

――久保さんはこれまで、いわゆる“正解の道”を選ぶことが多かったのでしょうか。

久保:そうかもしれません。受験の際には進学校に進もうとしていましたし、「自分が何をやりたいか」という明確なものはなくて、「とりあえず勉強しなきゃ」と毎日を過ごしていました。でも「乃木坂46に入ること」が本当に自分がやりたいことになって、受験をやめて乃木坂46に入った。親は進学校に進んでほしかったと思うけど、私は1人で東京に来る道を選んだので、そういう意味では絢香に似ているところがあるかもしれません。

――安定した道ではなかったかもしれませんね。

久保:やっぱり波もあるし、この先どうなるかなんて分からなかったけど、とりあえず東京に飛び込んでみたんです。絢香の飛び込む先は、きっと歌舞伎町だったんですよね。その違いだけなのかもしれません。

乃木坂46を牽引する3期生の在り方「“サポートするだけの人”になるのは違う」


――先日、齋藤飛鳥さんの卒業コンサートも終え、改めて3期生が乃木坂46の先頭に立つという実感が湧いたのではないかと思いますが、現在はグループ内でのご自身の立場についてどう感じていますか。自分は「助けて」とあまり言えないともおっしゃっていました。

久保:今まではSOSを言葉で出せなくても、言葉よりも先に涙が出てしまったり、暗い表情をしてしまっていたりした時に、すぐに気付いて駆け寄ってくれる先輩という存在がいてくださいました。でも7年目にして、昔よりも強くなったなと思う部分もあるし、今まで駆け寄ってくださっていた先輩に自分はすごく救われていたので、これからは自分も「助けて」と言えない子たちに駆け寄れる存在になりたいなと思っています。

――2月に行われた「乃木坂46 11th YEAR BIRTHDAY LIVE」の3期生単独ライブでは、久保さんが「3期生にもまだまだやれることがある」とおっしゃっていました。あの言葉に込められた思いを伺っても良いでしょうか。

久保:今、話したように後輩のケアや後輩が活動しやすい環境を先輩として作っていくということは、組織としてもちろん大事なことだと思うんですが、だからといって3期生が“サポートするだけの人”になるのは違うなと思っているんです。自分たちから輝いてもいいし、自分たちのやりたいことをやってもいいと思っています。3期生は7年目だけど、まだまだ3期生がこれからの新しい道を開拓していくのもすごくいいことだと思うんです。だから「やれることがある」。

その1つが自分にとってはお芝居の道だったりもするんです。グループに新しい風を吹かせるのは若い子たちじゃなきゃいけないかというと、必ずしもそうではないなと思っています。山下(美月)は朝ドラに出演したことで新しい風を吹かせてくれたし、そういうことって、3期生にもまだできることなんだと信じています。

――先輩という立場になると後輩に活躍を譲るようになることも多い印象もあり、それはどこか寂しい気がすることもあります。

久保:もちろん後輩が活躍してくれることはグループにとって何よりもうれしいことです。だけど、譲るんじゃなくて抜かしてほしい。それが組織としては一番良い形なんじゃないかなと思っています。

――素敵な考え方だと思います。

◆挑戦の続く久保史緒里の2023年「覚悟を持てるようになった年」


――今年、久保さんは1st写真集の発売が決定し、秋には劇団☆新感線の『天號星』への出演も控えています。久保さんにとって2023年はどんな年になりそうですか。

久保:私は1人で外の現場で挑戦させていただけるようになるまでに、すごく時間が掛かりました。ようやくいろいろな方と一緒にお仕事をさせていただけるようになってきて、特に2023年は、自分にとって初めての挑戦がすごく多いんです。今までだったら怖気づいてしまっていたかもしれませんが、今年は「やるっきゃない!」と腹をくくって挑めていることが、今までの自分から変われたところだなと思います。覚悟を持てるようになった年ですね。

――ありがとうございます。では最後に改めて、本作を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

久保:今回、私が演じさせていただいた絢香という人は、すごく純粋で、純粋だからこそ歌舞伎町という街に染まりきれなかった、どこか切ない女の子だと思います。バー「カールモール」を中心に、歌舞伎町の1人1人にいろいろな人生があって、その中の1つとして、歌舞伎町に染まりきれなかった絢香が過ごした人生を見届けてもらえたらうれしいです。

(取材・文・写真:山田健史)

 映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』は公開中。

乃木坂46・久保史緒里  クランクイン! 写真:山田健史