米アマゾン・ドット・コム傘下の自動運転技術開発企業、米ズークス(Zoox)が雇用を増やしている。この分野のライバル企業が相次ぎ人員を削減するなか、ズークスの動きは対照的だ。

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16%増員、年後半も同ペースで雇用拡大

 ロイター通信によると、2023年初めに1900人だったズークスの従業員数は約16%増の2200人になった。幹部の話で明らかになったという。

 ズークスは23年6月16日から、米西部ネバダ州ラスベガスで、自動運転車の試験走行を本格化させた。ハンドルやペダル類を備えないこの自動運転車は、同社の従業員を乗せて公道を走行している。

 ズークスのジェシー・レビンソンCTO(最高技術責任者)によると、同社の自動運転車はまだラスベガスのメインストリートで走行する予定はないものの、すでに信号や交差点でテスト走行しており、公道を最高時速35マイル(約56キロメートル)で走っていると述べた。

 これに先立ち同社は、ネバダ州車両管理局(DMV:Department of Motor Vehicles)から自動運転公道試験走行の許可を取得していた。

 同社はラスベガスの施設へ投資も計画しており、機材や試験車両を収容するための倉庫を追加する予定だ。

 レビンソンCTOは、「私たちは商用サービスの立ち上げを計画しており、人員の増強は重要だ」と述べた。同社は年内、これまでと同様のペースで人員を増やしていくという。

20年にアマゾンが買収 12億ドル

 ズークスは、米カリフォルニア州フォスターシティーに本社を置く企業で、創業は2014年だ。電気自動車(EV)をベースにした配車サービス用自動運転のハードウエアとソフトウエアを手がけている。利用者がスマートフォンアプリで予約を入れると、指定した場所と時間に無人車両がやってくる、いわゆるロボタクシーを開発している。

 20年にアマゾンが推計12億ドル(当時の為替レートで約1300億円)で買収した後、アマゾンのデバイス・サービス部門に加わった。この部門には家庭用ロボットなど先進ハードウエアの研究開発部門「Amazon Lab126」や音声アシスタント「Amazon Alexa(アレクサ)」、低軌道衛星を使ったインターネット通信サービス「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」といった事業がある。

 アマゾンは、EVのスタートアップの米リヴィアン・オートモーティブや自動運転技術開発の米オーロラ・イノベーションに出資している。アマゾンはこうしたモビリティー分野に注力し、物流事業の効率化やコスト削減、規模拡大を狙うほか、気候変動対策の一環と位置付け、投資を続けている。

ライバル企業、相次ぐ人員削減の動き

 資金調達の制約と景気の不透明感が、完全自動運転開発の阻害要因となっており、ズークスの雇用拡大は、業界全体の動きとは対照的だとロイターは報じている。

 米フォード・モーターと独フォルクスワーゲン(VW)は22年10月、共同出資していた自動運転スタートアップ企業の米アルゴAIを清算し、より早期のリターンが見込める運転支援技術に注力すると発表した。

 米メディアのジ・インフォメーションは23年3月、米アルファベット子会社で自動運転開発の米ウェイモが、23年に入って2回目の整理解雇(リストラ)を実施し、約140人を削減をしたと報じた

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Zooxの自動運転車(写真:ロイター/アフロ)