2023年春アニメとして放送が始まり、瞬く間に人気に火がついた、テレビアニメ『推しの子』。新エピソード放送時には常にSNSでトレンド入り、主題歌であるYOASOBI「アイドル」も抜群の成績を残しています。

そんな『推しの子』は、日本だけでなく、海外でも高い人気を獲得しています。その理由は一体どこにあるのでしょうか?

TVアニメ『推しの子』キービジュアル

TVアニメ『推しの子』キービジュアル

最初はイマイチ乗り切れない? 海外勢は“ある言葉”が気になる様子

アニメ『推しの子』は、熱烈なアイドルオタクの産婦人科医・ゴローの元に、推しのアイドルである「B小町」の星野アイが患者として訪れたことから物語が幕を開けます。アイドルが芸能界のスターダムを駆け上がっていく様を描くのと同時に、ミステリアスで不穏な空気を纏った芸能界の“闇”も描かれており、単なるアイドルアニメでは終わらないダークな側面も人気を博した要因となっています。

そんな日本の芸能事情をアイドル文化にあまり精通していない海外の視聴者は、本作に対してどんな印象を抱いたのでしょう。

Blu-ray【推しの子】1巻(KADOKAWAアニメーション)

Blu-ray【推しの子】1巻(KADOKAWAアニメーション)

YouTubeにリアクション動画を投稿している熱狂的アニメファンの3人組YaBoyRoshiは、「何も知識がなく、どんな作品なのかもわからない。でも、みんなが絶対に流行るって言うから観てみることにするぜ」と前置き。すでに『推しの子』のファンである友人あるいは視聴者から薦められて、視聴することに決めたようです。

普段、ジャンプ系のバトルアニメを好んで視聴している3人のため、最初はあまりハマり切れていないような様子でした。ゴロー看護師からロリコン”と揶揄する場面ではあからさまに冷めた表情を浮かべるなど、いつものようには熱中できていません。海外では“ロリコン”だとか、そういった話題に嫌悪感を抱く傾向があるのです。

1話ラストに絶叫「どうしてこうなった!?」「こんな話だったのか」

しかしながら、中央に座るドワイトが唐突に「この病院に飛び込んで彼女の子供として転生したい」と冗談っぽくコメント。彼らは、まさかこのコメントが後に伏線として回収されることを知る由もありませんでした。その後も劇中に登場する炭酸飲料「8UP」やラムレーズン味のアイスに対する意見を述べるなど、本編とは異なる部分にばかり話が及び、あまり乗り切れていない様子が伺えます。

そんな中、ゴローアクアとしてアイの子供に転生したことや妹のルビーはかつて病によってこの世を去ってしまった天道寺さりな であることが明らかになると彼らは驚愕。まさか本当に自分が言ったようなストーリーになるとは信じていなかったのか、心なしか前のめりになって視聴するようになります。

CD『アイドル』YOASOBI (SME)

CD『アイドル』YOASOBI (SME

どんどん作品の虜になっていく3人は、アイがファンに刺されて命を落とすラストになると唖然。どうしてこうなった!?何があったんだ!」と目を背けてしまうなど、衝撃を超えてもはや戦慄しているようにさえ見えます。

そして「最終的には素晴らしかった!ミステリーになっていくんだね。ダークだった。まさかこんな話だったとは!」と、日本の初見勢と同じような印象を受けたようでした。やはり『推しの子』の最大の魅力は予想もつかないドラマ展開であることが証明されましたね。

 日本の芸能事情、海外の視聴者には理解が難しい?

とはいえ、本作で描かれている日本の芸能界に対しては、少しギャップのようなものを感じているように見えました。特にそういった意見が顕著に聞かれたのは、アイがドラマの撮影に挑む場面。

CD『メフィスト』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

CD『メフィスト』(ソニーミュージックレーベルズ)

まず、アイのためにアクアが監督に挨拶するシーンで、監督が早熟なアクアに名刺を渡す瞬間がありますが、そこで思わず「1歳児に労働させるつもりか」とコメントしています。

海外、特に近年のハリウッドでは、子役を起用する際の条件が一昔前と比べて非常にシビアになっている現状があり、スカウトのような形で子供にいきなり名刺を渡すという描写にはカルチャーショックを受けているようでした。

アイにかつての名優を重ねる視聴者も

また、アイが脇役として存在感を示す場面では「かつてのクリストフ・ヴァルツを思い出した。彼も最初は脇役だった」と、映画『イングロリアス・バスターズ』という作品で鮮烈な印象を残し、その後スターダムを駆け上がった名優と比較。

しかしながらアイの登場シーンがカットされるという事態になってしまった瞬間、理解できないと言いたげな表情に変わってしまいました。

ハリウッドにも力のあるエージェントとそうでないエージェントがあるのは同じですが、日本のキャスティング事情とは大きく異なる部分があります。

『アイドル』YOASOBI

『アイドル』YOASOBI

もしも主役級のキャストよりも目立っている、力のある存在がいるとしたらカットするということはほとんど無く、むしろ主役級の俳優に対して、さらにスキルアップを促す存在として起用することが多いのです。

これはリアクション動画を視聴した筆者の推察に過ぎないのですが、日本の芸能界は新しい才能を発掘するというよりも、事務所がゴリ押しする女優のみを大々的に使う傾向があり、そのあたりのキャスティングに対する根本的な考え方に「?」が灯っていたのではないでしょうか。

あかねの演技にリアクター達が絶句…!

海外のリアクターたちは、“ドルオタ”の狂信っぷりにも驚いていた様子です。そんな海外の視聴者が最も衝撃を受けていたエピソードは、おそらく第7話。

アニメ【推しの子】ティザービジュアル

アニメ【推しの子】ティザービジュアル

黒川あかねがアイと生き写しの姿で現れるラストです。先行きの気になるクリフハンガーで幕を閉じることの多い『推しの子』の中でも、とりわけ衝撃的な展開で幕を閉じたエピソードで、リアクターのほとんどが絶句しているのが印象的でした。

中には「あかねは演技が上手いだけ? それともアイの生まれ変わりなの?」と考察するファンも存在していたようです。

普段触れることがない日本のアイドル事情が垣間見える作品として、海外でも注目度が日に日に増している印象の『推しの子』。彼らもまた日本のファンと同じように、ストーリーの行く末をあれこれ考えながら楽しんでいるようでした。

(執筆:zash)

アニメ【推しの子】作品概要

アニメ【推しの子】メインビジュアル

アニメ【推しの子】メインビジュアル

 

<INTRODUCTION>
「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」
地方都市で働く産婦人科医・ゴロー
ある日"推し"のアイドル「B小町」のアイが彼の前に現れた。
彼女はある禁断の秘密を抱えており…。
そんな二人の"最悪"の出会いから、運命が動き出していく―。
<STAFF>
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ集英社週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:平牧大輔
助監督:猫富ちゃお
シリーズ構成・脚本:田中 仁
キャラクターデザイン:平山寛菜
サブキャラクターデザイン:澤井 駿
総作画監督:平山寛菜、吉川真帆、渥美智也、松元美季
メインアニメーター:納 武史、沢田犬二、早川麻美、横山穂乃花、水野公彰、室賀彩花
美術監督:宇佐美哲也(スタジオイースター)
美術設定:水本浩太(スタジオイースター)
色彩設計:石黒けい
撮影監督:桒野貴文
編集:坪根健太郎
音楽:伊賀拓郎
音響監督:高寺たけし
音響効果:川田清貴
アニメーション制作:動画工房

<CAST>
アイ:高橋李依
アクア大塚剛央
ルビー伊駒ゆりえ
ゴロー伊東健人
さりな:高柳知葉
アクア(幼少期):内山夕実
有馬かな潘めぐみ

<公式サイト>
https://ichigoproduction.com/

<公式Twitter>
https://twitter.com/anime_oshinoko

<原作情報>
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