生きるうえで「食事」は必要不可欠。摂取した栄養素は長い道のりを経て、身体のために機能します。本連載では、ボディビル世界大会で3位に入賞した経験もあり、日本体育大学体育学部の教授を務める岡田隆氏の著書『世界一細かすぎる筋トレ栄養事典』から、「食事×筋トレ」を主軸とした「理想のカラダづくり」について解説します。

炭水化物のボディメイク的メリット&デメリット

炭水化物

炭水化物は、脂質、タンパク質と並ぶ、エネルギー産生の重要な栄養素

1gあたり約4kcalを得られます。炭素、水素、酸素から構成されるため、タンパク質のように代謝時に毒素が発生せず、消化器に優しいことが特徴です。

炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられ、糖質は消化・吸収によって体内に取り込まれる一方、食物繊維は人間の消化酵素では分解されない性質を持ちます。

つまり、トレーニングのエネルギー源となるのは糖質です。糖質は直接、血糖として身体や脳に行き渡るため、スピーディーにエネルギー補給ができることが、大きなメリット。

糖質は主に、最小単位である「単糖」のつながり方によって、「単糖類」「二糖類」「多糖類」に分類されます。単糖類は消化吸収が最も早いため、特に即効型のエネルギーといえます。

一方の食物繊維も、ボディメイクには欠かせません。効果を発揮するのは主に腸内で、食後における血糖値上昇の抑制、腸内環境の改善など、体調のコントロールに貢献。

日本人は食物繊維が不足しがちなので、積極的に摂取しましょう。

糖質は即効型のエネルギー

糖質のボディメイク的なメリットって?

■メリット

消化・吸収がとにかく早い

1gあたり約4kcalのエネルギーを即座に吸収できる糖質は、トレーニング前に摂取することで、筋収縮の動力源となってくれる。余った分は中性脂肪として長期保存型のエネルギー源としても活用が可能。

■デメリット

過剰摂取で脂肪が増える

食べすぎると太るだけでなく、血糖値の急変動、ミネラルの排出、ビタミンの浪費を引き起こしてしまう。過剰摂取が長期化すると消化器の不調にもつながってしまうため、分量や種類を見極めよう。

バズーカメモ

食物繊維を含めて6大栄養素

見落とされがちな食物繊維だが、5大栄養素につぐ第6の栄養素ともいわれるほど重要だ。小腸における栄養素の吸収速度を緩やかにし、血糖値の急上昇を抑えることに加え、コレステロール値を下げる、肥満を予防するなど、多くの効果を期待できる。

本稿では、特に即効型のエネルギーとなる「単糖類」について以下、抜粋して紹介する。

ブドウ糖(グルコース)

単糖類の中で、自然界に最も多く存在するのが「ブドウ糖(グルコース)」。

果物のぶどうから発見されたことから命名された。他の単糖類と結びつくことで「ショ糖」「乳糖」「デンプン」などを構成する、糖質の主役のような存在だ。

摂取された糖質の多くは、最終的にはブドウ糖に分解され、エネルギー源として利用される。また、脳がエネルギーとして利用できる物質であることからも、欠かせない栄養素だといえる。

余ったブドウ糖は脂肪細胞で貯蔵される

血液中でブドウ糖は「血糖」として存在し、インスリンの働きで濃度がコントロールされている。血中のブドウ糖濃度が上がるとインスリンにより中性脂肪に変わり、脂肪細胞に蓄えられてしまうため、過剰摂取に要注意だ。

バズーカメモ

糖質は、タンパク質や脂質よりも早く分解・吸収されることが特徴。激しい運動で消耗した際に糖質を過剰に摂取すると、インスリンの大量分泌で血糖値が低くなりすぎる「インスリンショック」が生じるが、適量を適切に摂取し素早くエネルギーを補給することで、血糖値も上げることができる。

果糖(フルクトース)

「果糖(フルクトース)」は、果物に多く含まれる栄養素

単糖類であるため消化・吸収は早いが、物質を輸送する「輸送担体」が異なることから、ブドウ糖と比べるとやや遅い。

吸収された果糖は肝臓へ運ばれ、酵素「フルクトキナーゼ」によって「フルクトース-1-リン酸」に変わり、解糖系に組み込まれる。このフルクトキナーゼはインスリンの影響を受けないため、果糖はブドウ糖よりも早く代謝される。

バズーカメモ

代謝の早い果糖は肝グリコーゲンとなり、余剰分が中性脂肪に変わりやすいので気をつけよう。

ガラクトース

単糖類の1つ「ガラクトース」は、乳製品から摂取できる栄養素

自然界にある食材では単独で摂取できないことが特徴で、「ガラクトースを摂る=乳製品を摂る」と理解していい。

ガラクトースとブドウ糖が結合してできる二糖類の「乳糖」は、摂取されると小腸で酵素「ラクターゼ」により分解され、肝臓に流入する。肝臓で代謝された後はグリコーゲンに変わり、エネルギー源として機能する。

バズーカメモ

ガラクトースは乳製品に含まれる乳糖から摂取するため、乳糖不耐症の人は下痢を引き起こしてしまうことがある。

岡田 隆

日本体育大学体育学部

教授・ボディビルダー

(※写真はイメージです/PIXTA)