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はじめに

メルセデスAMGが50周年を祝った2017年のジュネーブショーで、ボスのトビアス・ムアースはSLSとGTに続く第3の自主開発スポーツカーを公開した。

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メルセデスAMG GTコンセプトというネーミングは、アファルターバッハのモデルレンジにおいて、どのような役割を意図しているのかをはっきり示すものではなかった。それは、AMG専用車としては初の4ドアモデルだったのだが。

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テスト車:メルセデスAMG GT63S Eパフォーマンス

しかし、このクルマでもっとも興味深い点は、その実用性ではなくパワートレインだった。AMGで一般的な手組みのV8単体ではなく、パフォーマンス志向のハイブリッドで、しかも4WD。最高出力は800psをわずかに超えていた。

それから6年、メルセデスAMGは別の方向を目指す会社のように感じられた。しかしついに、市販を公言していたAMGの電動化モデルであるスーパーハイブリッドが登場した。今回のGT 4ドアである。

賛否ある新型4気筒を積むC63に先駆け、2022年発売のGT63S EパフォーマンスはAMG初の市販PHEVとなった。AMGの量産車最強モデルでもあり、自社開発のハイパフォーマンスなバッテリーテクノロジーを採用。ハイブリッド駆動のコンセプトも、これまでのクルマには見られなかったものだ。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

2018年にデビューしたGT 4ドアは、直6マイルドハイブリッドとV8ターボが用意された。そのスタイリングは、2シーターのGTをストレッチしたような見栄え。それこそ、このデザインのもっとも奇抜な点だ。

実際には、現行のCクラスやEクラス、CLSに用いられる第1世代のMRAプラットフォームがベースとなっている。2シーターのGTは軽量高剛性のスペースフレーム的な構造だが、GT 4ドアはもっと一般的な乗用車用モノコックが基礎になっている。

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Eパフォーマンスのエンジンは既存のV8ツインターボで、駆動系もほぼそのまま。2速ギアボックスを組み合わせたモーターは、リアデフを直接駆動するレイアウトだ。

GT63S Eパフォーマンスは、既存のGTのメカニカルなパッケージに、パワートレインの電動化技術が追加されている。変速機以降にモーターを配置するP3スタイルのレイアウトで、ポールスター1などのようなエンジンとリアモーターで電気式4WDを構成するP4スタイルとは異なる。

通常のGT63Sが積むM177型こと縦置きV8ツインターボをはじめ、9速多板クラッチATや機械式4WDシステムの4マチック+、電子制御リアLSDはそのまま使用。これに204psの永久磁石同期モーターと2速ATのパッケージを追加し、4WDシステムのリアデフへダイレクトに駆動力を送り込む。システム全体での最高出力は843ps、最大トルクは149.9kg-mだ。

エンジンとの接続を切れば、電力のみでの4WD走行も可能だ。これは、P4スタイルのハイブリッドにはできないことだ。

モーターへの電力は、AMGがこのクルマの主要な技術的イノベーションだと自負する、高電圧バッテリーから供給される。リアアクスルの直上に置かれ、コンパクトで軽量だが、容量は6.1kWhに過ぎない。しかし、キモはエネルギー密度だ。また、ハイパフォーマンスな電動化モデルが必要とする、急速充電と放電の優れたポテンシャルも備えている。

複雑な直接液冷システムは、バッテリーのケースではなくセルそれぞれを冷やし、90kgを切る重量に寄与する。AMGによれば、エネルギー密度は既製バッテリーのおよそ倍だという。

Eパフォーマンスのハイブリッドシステムは重量削減を図ったのかもしれないが、V8エンジンと機械式4WDシステムはそういうわけにはいかなかった。結果として、テスト車の実測重量は2339kgと、2019年に計測したGT63 4ドアに対し300kg増加している。2020年にテストしたポールスター1も、これよりはわずかながら軽かった。

内装 ★★★★★★★★☆☆

コクピットを見回すと、GT63S Eパフォーマンスの調整可能な箇所の多さに目眩がしそうだ。これは、前後とも大人がきちんと乗れるスペースを備えた正真正銘に4シーターGTで、後席にはキルト仕上げのレザーシートだけでなく、ドリンクホルダーにまでヒーターがつくラウンジパックもオプション設定される。

しかし前席周りに、無駄な余地はこれっぽっちも見つからない。高さがあり目を引くトランスミッショントンネルにも、さまざまなスイッチを配したステアリングホイールのスポークにも、だ。

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コクピット周りに数多く配置されたスイッチ類には、選択したモードの表示を組み合わせたものも多く、そのときの状態がわかりやすくなっている。

タッチスイッチの多くには小さなディスプレイが組み込まれ、選択中の状態や機能がわかりやすくなっている。レイアウトに、直感的なヒエラルキーはあまりない。走行モードを選ぶトグルはステアリングボスのそばにあり、反対側には好きな機能を割り当てできるセレクターが設置される。

キャビンの仕上げは効果そうだが、最近の速いメルセデスの文法どおりデコレーションが過剰だ。ダークカラーのレザーに、コントラストのはっきりしたマルチカラーのアンビエントライト、ふんだんに使われたツヤのあるクローム、ピアノブラック、鏡面仕上げのカーボンなどが氾濫している。素材の質感は高いが、小物入れはややタイトだ。

荷室は、バッテリーを追加した影響が明らかだ。335Lという容量は、非ハイブリッドモデルの461Lに対し25%以上少ない。それでも小型のスーツケースふたつが積める程度のスペースはあり、これほど野心的な技術を用いるクルマで、キャビンのパッケージにこれほど妥協を見せないものは少ない。

走り ★★★★★★★☆☆☆

843psのメルセデスAMGだ、スターターボタンを押せば、ドラマティックなサウンドを予想するだろう。ところが、最初は期待を裏切られる。合成された電気パルスが、ハイブリッドパワートレインの準備完了を告げ、デフォルトのモードでは、電力のみで静かに走り出す。走行モードをよりハードなほうへ変えると、V8はようやく吠えはじめる。

ファルターバッハが、このクルマで実現しようとした能力の幅は広大なものがある。走行モードは、コンフォートと電動モードのELにはじまり、対極にはスポーツ+やレース、ドリフトモードさえ用意したのだ。

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全開にすれば間違いなく速いが、サウンドや、パワートレインの制御には不満が残る。AMGには、もっと気持ちよくエンジンが回るクルマもあるのだ。

たしかに、このGTの走りにおける多様性そのものは、野心的かつ印象的ではある。しかし、細部の煮詰めには妥協があると気付くのに、長い時間は要さない。

たとえば、低中速でのコンフォートモードは、ギアボックスからのスナッチや、低速域でのスロットルレスポンスにおける遅れを感じることがときどきある。スロットルペダルを踏む足に力を込めると、ハイブリッドシステムは力強く急激なブーストを効かせることもあるが、そうではないときもある。

また、リアに積まれた高電圧の電気系からは、高周波ノイズがかなり多く発生する。音量は低く断続的だが、それでもやはり気に触る。NVH担当のエンジニアなら、間違いなくサウンドではなくノイズと呼ぶ、高級GTであれば遮音すべき類の音だ。

スポーツかスポーツ+の各モードでは、少なくともAMGのスーパーセダンに期待する雷鳴のようなV8サウンドが、幾らか耳に届くようになる。しかしそうなっても、GTの内燃エンジンはサウンドに個性が満ちているとはいえない。

車外で聞くと、とくにグリルが閉じているときは、ほとんどベルトや冷却ファンの唸り、そしてターボの吸気音しか耳に入らない。ただし、クルマの背後に立てば、AMGご自慢のスポーツエキゾーストが、はるかに豊かな音を聞かせてくれるが。

パフォーマンスそのものは当然ながら、的を外すようなことはない。圧倒的だ。ゼロスタートでは、97km/hまでたったの2.9秒、161km/hにも6.6秒で到達する。ゼロヨンは10.9秒、変速ありでの48−113km/hはわずか2.5秒だ。2021年に、満点を獲得したBMW M5CSが打ち立てたベンチマークを、ほぼほぼ破ってみせたのだ。

全開加速では、獰猛さをむき出しにする。中回転域では力強く突進し、レスポンスにも優れる。そのまま6000rpmを超えるまで、そこそこよく回り続ける。とはいえ、パワーデリバリーにピーキーさこそないものの、かなりストレスのかかった内燃エンジンに走らされている感覚だ。AMGには、もっと活発で遮るものなく回るV8もある。

ただし、よりスポーティな走行モードを選んだ際に、そのドライバビリティのもっとも奇妙なクセは、電動リアアクスルによるブーストの半分くらいが、追い越し加速のために残されているように感じられる点だ。その残りのパワーは、キックダウンスイッチを押すくらいでないと使うことができない。

F1のトップドライバーが予選ラップを走るような気分を味わいたいなら、それもいいだろう。しかし、公道上では走りをわかりにくくするだけだ。サーキットでも、限界域でのドライビングを、必要以上に難しくしてしまう。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

メルセデスの中ではデビューから時間が経っているほうなので、最新のCクラスやSクラスに比べると、インフォテインメントシステムに実体コントロールは多い。センターコンソールにはタッチ式の入力デバイスがあり、そのすぐ前方にショートカットボタンが並ぶ。

やや操作しづらいが、常にそこにある操作系は、すべてタッチ画面に組み込まれているより使い勝手がいい。その画面上のカーソルは、ステアリングホイールのスポーク上から動かせる。

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最新世代ではないインフォテインメントシステムは、ハードスイッチや実体入力デバイスが残され、タッチ画面式より使いやすい。

標準装備は充実している。表示の調整が効く2面の12.3インチディスプレイや、ヘッドアップディスプレイ、出力640Wでフロントバスウーファーを含む14スピーカーのブルメスター製プレミアムオーディオに追加コストは不要だ。

純正ナビはARの方向支持機能を備える。ただし、センターディスプレイに表示すると目障りで使いにくく、ヘッドアップディスプレイに表示したほうがよさそうだ。

ワイヤレス充電はセンターアームレスト内のパッドで行うのだが、携帯電話が熱を持って、それもかなり高温になりがちだった。そのため、われわれは充電ケーブルを使うようにした。

燈火類

アダプティブハイビームアシスト付きのマルチビームLEDヘッドライトは標準装備。自動減光機能は、対向車の防眩に十分なレスポンスを見せた。ハイビームの明るさはすばらしい。

ステアリングとペダル

ペダルは右寄りで、これはエンジン縦置きのメルセデスにありがち。しかし、ペダル同士の間隔に悩まされたテスターはいなかった。

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

このクルマの重さ、狙ったさまざまな役割、そしてハイブリッドパワートレインの複雑さは、ここ30年ほどで最高レベルのスーパーサルーンやGTが見せてきたような走りの魅力を追求する上では、どれも多少の制限が必要だった。

このクルマの実力を測るには、運動性の高い水準に照らしてしまう。なにしろメルセデスAMG史上最強のロードカーなのだ。その先入観なしに判断することは難しい。センセーショナルな動力性能を目にした後だが、ドライビングのきらめきがやや失われはじめたところとあっては、そこを再考する意味は大きい。

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V8ハイブリッドのパワーはとてつもないが、それを多少は犠牲にしてでも、曲がりくねったB級道路での路面からステアリングホイールへのフィードバックが増してほしい。

アダプティブエアサスペンションが見せる走りは、選んだモードによって、そこそこ快適からそこそこ硬めまで変化する。ボディコントロールは日常使いに向いたもので、上下方向も横方向も、非常識なほどスピードを出すか、過酷なカントリーロードやサーキットでも走るかしない限り、スタビリティやグリップに問題を起こさないレベルの振幅で済む。

ツーリングでの快適性もまずまずで、客観的に見ても長距離走行に堪える沈着さはかなりのものだ。しかし、路面を感じ取れるフィールは、意味をなすほどには備わっていない。タイヤには、前後アクスルにどれくらい負荷がかかっているか判断するのに必要な一体感がほとんどない。路面への食いつきも不足気味だ。ドライバーに自信を与えてくれるようなダンピングは、備わっているのだが。

それらがすべて高得点だったスーパーサルーンは、今のところBMW M5CSが最後だ。

GT63S Eパフォーマンスのスタリングはかなり重く、驚くほどダイレクトさがある。しかし、役に立つフィードバックが手元に感じられるのは、ほんの一瞬だ。ギア比はクイックなはずだが、ハンドリングバランスはややダルく、大抵の走行モードでは鼻先主導の動きを見せる。気楽に付き合える身のこなしや、生まれ持ったような敏捷性には欠ける。どこまでアジャストが効いて、どこまで無理を受け入れてくれるのか、とことん突き詰めたくなるようなハンドリングの精密さも見出せなかった。

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

GT63Sに、ベントレーのように高級な走りを求めるユーザーはまずいないだろう。にもかかわらず、ハイブリッドパワートレインの遮音性が欠けていたのには、一同驚かされた。とくに、低速でのEVモードで散々走った際に、悩まされたのが高周波だったことは、先に述べたとおりだ。

クルージングでV8エンジンが回っていると、それとわからないほど静かなこともしばしば。それでも、113km/hでの室内騒音は70dBAに達した。これは、ベントレー・フライングスパー・ハイブリッドより3dBA大きい。走行ノイズはもっと遮音できたはずだし、もっとマナーのいいものにできたはずだ。AMGの典型的な顧客も、もう少し静かなほうが好みだろう。

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パフォーマンスカーとはいえ高級GTでもあるので、遮音性は改善を望みたい。とくにハイブリッドシステムの高周波ノイズと、巡航時の室内騒音は小さくしてほしい。

運転席は快適だが、飛び抜けているほどではない。シートの調整機能には、もうひとつふたつ足りないと思わせるところがある。キャビンの広さは、より一般的なサルーンよりヘッドルームが不足していて、後席に大人が座るとそれを痛感するが、それ以外は、こちらのほうがやや上だ。

購入と維持 ★★★★★★☆☆☆☆

もしも4座スーパーハイブリッドGTに20万ポンド(約3660万円)を払える余裕があれば、PHEVならではのランニングコスト節約が購入の動機にはならないはずだ。GT63S Eパフォーマンスの購入者なら、余禄程度に過ぎないはずだ。というのも、これはEV走行距離の長さや、給油回数の少なさといったメリットを享受できるクルマではないからだ。

軽さや、激しく走らせたときの頑強さに主眼を置いたバッテリーゆえに、EV走行距離の公称値は13kmに過ぎないし、テストでは10kmほどしか走れなかった。市街地でエンジンの爆音を撒き散らさずに走るだけなら十分かもしれないが、職場への往復を電力だけで済ませるコミューターにはなり得ない。

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残価予想は、主なライバルたちより値落ちが急激で、結果として高くつくことを示している。

EV走行時には、パフォーマンスも限定的だ。0−97km/h加速は、10秒をわずかに超える。エンジンを切ってのドライバビリティは、ハプティックペダルでなんとかやりくりされる。余分な入力には抵抗して、モーター走行範囲のギリギリで止めるのだが、十分に直感的だ。

無論、EV走行距離がもっと長ければ、燃費の改善も見込めたはずだ。テスト時の平均は7.5km/L、ツーリングでは8.5km/Lという結果は、843psの4シーターとしてはたいしたものだ。とはいえ、低燃費とは言い難い。

スペック

レイアウト

AMG GT 4ドアの既存シャシーには、リアに液冷リチウムイオン駆動用バッテリーと、4WDシステムのリアデフを駆動する204psの電気モーターが追加された。モーターには、2速ギアボックスが備わる。

車両重量は2339kg、前後重量配分は49:51だった。

エンジン

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液冷リチウムイオン駆動用バッテリー204psの電気モーターが追加されたAMG GT 4ドア。テスト車で実測した車両重量は2339kg、前後重量配分は49:51だ。

駆動方式:フロント縦置き+リアモーター縦置き四輪駆動
形式:V型8気筒3982ccツインターボチャージャー、ガソリン
ブロック/ヘッド:-/-
ボア×ストローク:φ-×-mm
圧縮比:8.6:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:639ps/-rpm
最大トルク:91.8kg-m/-rpm
エンジン許容回転数:-rpm
ハイブリッドアシスト:永久磁石同期モーター
モーター最高出力:204ps
モーター最大トルク:32.6kg-m
システム総合出力:843ps/-rpm
システム総合トルク:149.9kg-m/-rpm
馬力荷重比:366ps/t
トルク荷重比:65.0kg-m/t
エンジン比出力:160ps/L

ボディ/シャシー

全長:5054mm
ホイールベース:2951mm
オーバーハング(前):911mm
オーバーハング(後):1192mm

全幅(ミラー含む):2070mm
全幅(両ドア開き):3700mm

全高:1447mm
全高:(テールゲート開き):1930mm

足元長さ(前席):最大1120mm
足元長さ(後席):750mm
座面~天井(前席):最大940mm
座面~天井(後席):930mm

積載容量:335L

構造:アルミ+スティール・モノコックボディ
車両重量:2305kg(公称値)/2339kg(実測値)
抗力係数:0.37
ホイール前/後:9.0Jx21/10.5Jx21
タイヤ前/後:275/35 ZR21 103Y/315/30 ZR21 105Y
ミシュラン・パイロットスポーツ4S MO1
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:9速AT
1速:5.36/7.7 
2速:3.25/12.9 
3速:2.25/18.5 
4速:1.64/25.4 
5速:1.21/34.4 
6速:1.00/41.7           
7速:0.86/48.4 
8速:0.72/57.8
9速:0.60/69.4           

最終減速比:3.27:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:7.5km/L
ツーリング:8.5km/L
動力性能計測時:2.6km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/L
中速(郊外):-km/L
高速(高速道路):-km/L
超高速:-km/L
混合:12.7km/L
エンジン単体:8.3km/L
EV航続距離:13km

燃料タンク容量:43L
駆動用バッテリーニッケル水素・14.2/12.9kWh(総量/実用量)
現実的な航続距離(モーターのみ):10km
現実的な航続距離(エンジンのみ):-km
現実的な航続距離(エンジン+モーター):560km
CO2排出量:180g/km

サスペンション

前:マルチリンク/エアスプリング、アダプティダンパー、スタビライザ
後: マルチリンク/エアスプリング、アダプティダンパー、スタビライザ

ステアリング

形式:可変レシオ式、ラック&ピニオン、アクティブ4WS
ロック・トゥ・ロック:1.6回転(据え切り時)
最小回転直径:12.2m

ブレーキ

前:420mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
後:380mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
制御装置:ABS、ブレーキアシスト
ハンドブレーキ:電動、ステアリングコラム右側にスイッチ配置

静粛性

アイドリング:51dBA
全開時(3速):84dBA
48km/h走行時:63dBA
80km/h走行時:66dBA
113km/h走行時:70dBA

安全装備

ABS/BAS/ESP/ABA/ALKA/BSA
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
歩行者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温19℃
0-30マイル/時(48km/h):1.3秒
0-40(64):1.8秒
0-50(80):2.3秒
0-60(97):2.9秒
0-70(113):3.8秒
0-80(129):4.6秒
0-90(145):5.6秒
0-100(161):6.6秒
0-110(177):7.8秒
0-120(193):9.1秒
0-130(209):10.7秒
0-140(225):12.6秒
0-150(241):14.7秒
0-160(257):17.5秒
0-170(273):21.4秒
0-402m発進加速:10.9秒(到達速度:211.8km/h)
0-1000m発進加速:19.9秒(到達速度:268.4km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
BMW M5CS(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温22℃
0-30マイル/時(48km/h):1.4秒
0-40(64):1.9秒
0-50(80):2.4秒
0-60(97):3.0秒
0-70(113):3.8秒
0-80(129):4.7秒
0-90(145):5.7秒
0-100(161):6.8秒
0-110(177):8.2秒
0-120(193):9.6秒
0-130(209):11.4秒
0-140(225):13.9秒
0-150(241):16.4秒
0-160(257):19.4秒
0-170(273):23.2秒
0-402m発進加速:11.1秒(到達速度:207.3km/h)
0-1000m発進加速:20.3秒(到達速度:261.5km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.2秒(2速)/1.5秒(3速)

30-50(48-80):1.1秒(2速)/1.4秒(3速)/1.9秒(4速)/2.2秒(5速)

40-60(64-97):1.2秒(2速)/1.3秒(3速)/1.8秒(4速)/2.3秒(5速)/2.7秒(6速)

50-70(80-113):1.4秒(3速)/1.7秒(4速)/2.3秒(5速)/2.8秒(6速)/3.2秒(7速)

60-80(97-129):1.6秒(3速)/1.9秒(4速)/2.4秒(5速)/3.0秒(6速)/3.6秒(7速)/4.5秒(8速)

70-90(113-145):1.9秒(3速)/2.0秒(4速)/2.4秒(5速)/2.9秒(6速)/2.5秒(7速)/4.6秒(8速)/5.3秒(9速)

80-100(129-161):2.0秒(4速)/2.4秒(5速)/2.8秒(6速)/3.2秒(7速)/4.2秒(8速)/5.7秒(9速)

90-110(145-177):2.2秒(4速)/2.5秒(5速)/2.9秒(6速)/3.4秒(7速)/4.1秒(8速)/6.2秒(9速)

100-120(161-193):2.5秒(4速)/2.8秒(5速)/3.1秒(6速)/3.6秒(7速)/4.5秒(8速)/7.8秒(9速)

110-130(177-209):3.0秒(5速)/3.4秒(6速)/3.9秒(7速)/5.8秒(8速)/9.9秒(9速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温19℃
30-0マイル/時(48km/h):8.6m
50-0マイル/時(64km/h):22.8m
70-0マイル/時(80km/h):44.4m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.80秒

ライバルの制動距離

BMW M5CS(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温22℃
30-0マイル/時(48km/h):7.6m
50-0マイル/時(64km/h):21.0m
70-0マイル/時(80km/h):40.8m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

エンジニアリング的に達成したものを考えれば、メルセデスAMG GT63S Eパフォーマンスはみごとな仕事ぶりだ。

これほどパワフルなプラグインハイブリッドパワートレインを産み出し、しかもサーキットで見せるスタミナも驚異的なのだから、その点ではアファルターバッハを称賛するほかはない。同じドイツ勢のライバルにも、ここまでやってのけたものはない。最近のF1での経験があればこそ、成し遂げられたのだろう。

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結論:ロケットのようなGTが、驚くべきパワートレインを手に入れた。それでも、走らせ甲斐が希薄なのは相変わらずだ。

おそらく、この手の技術を用いて開発されると、ハード面の感覚的な部分は見落とされがちになるのだろう。もしくは、ゼロエミッションのトランスポーターから獰猛なV8マシンまでを1台に共存させようとしたキャラクターの幅広さが、ホットロッド的なカリスマ性を失わせたのかもしれない。二兎を追う者は一兎をも得ず、ということか。

V8を搭載しているものの、このクルマははっきり言って、ドライバーを激しくその気にさせるものではない。843psのメルセデスAMGであれば、もっと強烈にソソるものになるはずなのだが。

このことからはっきりわかるのは、多面的な複雑さは、正真正銘のドライバーズカーが持つ、真に深い味わいと引き換えにするには弱いということだ。そのことは、完全電動化へ近づくにつれ、アファルターバッハにとっては本腰を入れて取り組むべき課題となってきている。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

カリスマ的なV8エンジンが騒々しくても、走っているときはもちろん、アイドリングや信号で止まっているときでさえ問題になるとは思わないだろう。ところが、無音で走っていると、GT63Sは大事なものを奪われたように感じられる。ちょっと無意味な感じさえする。そんなわけで、運転している間はほぼずっと、エンジンオンで走るスポーツモードを選んだ。

マット・ソーンダース

トラックペースアプリはレースエンジニアスタイルのブーストデプロイメントストラテジーを備える。アファルターバッハが開発したもので、世界中のサーキットでよく知られているものだ。これは周回中のどこでモーターのトルクを解放すればいいか、正確に教えてくれる。残念ながら、われわれがテストを実施するMIRAのドライハンドリングコースは、対象のサーキットではなかったのだが。

オプション追加のアドバイス

可動式スポイラーがお気に召さないなら、3000ポンド(約55万円)のエアロダイナミックボディキットを選ぶといい。また、2100ポンド(約38万円)のドライビングアシスタンスプラスパッケージは追加をお忘れなく。ユーザーが求めるだろう機能が揃う。

改善してほしいポイント

・よりハードなカップタイヤを、サーキット性能を求めるユーザーのために用意してほしい。
・電動アクスルの洗練性に問題あり。修正を求む。
・ステアリングにもっと手応えのあるフィードバックを。限界域でのボディコントロールも改善を願うところだ。


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