企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』シリーズなど、多くの人気小説を執筆している作家・真山仁氏。

そんな真山氏には、他人と異なる視点や価値観で物事を見て、小説に生かすために自分に課していることがあるという。それは世間が「正しい」と思っているものを疑うという姿勢だ。その姿勢を持ち続けてきたことが、今の真山氏をつくったと言えるという。

これは訓練すれば、誰でも身につけられる。どのようにすれば、その姿勢は身につくのか。
『“正しい”を疑え!』(真山仁著、岩波書店刊)では、世間が「正しい」と思っているものを疑い、自分を信じて自分らしく生きるためのヒントを紹介している。では、一体どんなことが書かれているのか。

■本当にそれは正しいのか? 情報を鵜吞みにしないために

「疑う力」を身につけているということは、人の言うことをすぐに受け入れるのではなく、時間をかけて評価するということだ。そして、疑うべきは、人ではなく言葉だと真山氏。

たとえば、信頼している親友の言葉がすべて正しいとは限らない。たまたま親友が間違った情報を聞いて、それを自分に伝えるということも起こりえる。どんなに信頼した相手でも、言葉や情報を時々疑ってみることは、良い人間関係を築くうえでも健全だ。

また、フェイクニュースに振り回されない、根拠もなく不安になることを防ぐためにも、疑う力を養う必要がある。

では、疑う力を養うにはどうすればいいのか? 相手の話や情報に接したとき、何を疑えばいいかのヒントが「違和感」だ。この違和感のイメージは「怪我をしているわけじゃないけど、普段と少し違う」状態だという。情報を耳にしたり、読んだりしたときに「あれ?」と一瞬思う違和感を大事にしよう。

正しいかどうかを考えるときに、反射的に「その通り」「それは違う」と反応することは危険なことだ。その発言や情報が何を言おうとしているのか理解しなければ、何の判断もできない。
そんな時に「違和感」を持てば、何が正しいかに疑問を抱くことができるだけでなく、自分が何を知っているか、知らないかにも目を向けることができるようになるはずだ。

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現実社会では、多くの人が真実だと信じていたことがウソだったり、ウソみたいな話が現実だったりすることがある。
正しいと言われていることやフェイクニュースなどに振り回されないためにも、真山氏の述べる「正しいを疑う力」を養ってはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

『“正しい”を疑え!』(岩波書店刊)