病院で処方箋をもらう際、問診票に「ジェネリック医薬品を希望されますか?」といった文言を目にする機会があります。なんとなく「はい」と回答するものの、その効果や安全性を十分に理解している人は少ないでしょう。そこで、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師が、理解しておくべき「ジェネリック医薬品の効果と安全性」について解説します。

「ジェネリック医薬品」と「先発医薬品」の違い

ジェネリックにしますか?」

薬局に行った際、一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。

ジェネリック医薬品とは、「後発医薬品」のことを指します。本来、医薬品は研究開発して臨床研究が行われた「先発医薬品」と、先発医薬品の特許期間が過ぎたために成分は同じで他の会社が安価に作ることができる「後発医薬品」に分けられます。

開発費が少なく済むことから安価で購入できるため、国内におけるジェネリック医薬品の使用割合(全国平均/2021年9月期)は79.24%にのぼっています。

しかし、ジェネリック医薬品となるとメーカーもさまざまで、見た目も大幅に変わることもしばしばあります。

すると、それまで先発医薬品を使っていた方からすると「いままでの薬と違うけど、効果や安全性は一緒なの?」と不安に思われるのも当然です。

ジェネリック医薬品は、本当にその効果や安全性に関して先発医薬品と同じくらい担保されているのでしょうか。

ジェネリック医薬品の「効果」

ジェネリック医薬品(後発医薬品)を厳密にいうと、「先発医薬品と同一の有効成分を、同一量含む同一剤形の製剤で、用法用量も等しい医薬品」と定義されています。

医薬品というのは、ある製薬会社によって年月をかけて開発され、国による厳しい審査を経てようやく市場に出るものです。しかしその後特許が切れると、他の製薬会社でも製造・販売ができるようになります。このうち、最初に売り出された薬が「先発医薬品(新薬)」、あとから別の製薬会社から売り出されるようになったものが「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」といいます。

一般的に、ジェネリック医薬品のほうが研究開発に要する費用が低く抑えられることから、薬価も低く設定されています。さらに、先発医薬品を改良して、飲みやすいように味や大きさが工夫されることもあります。

ジェネリック医薬品ができるまで

ジェネリック医薬品といっても「同一成分だから販売OK」とすぐに決まるようなものではありません。さまざまな試験を経て、ようやく承認されるのです。行われる試験には、主に下記のようなものがあります。

●有効成分の純度や量が先発医薬品と同じであるかを確認する試験 ●先発品と同じように体内で溶けるか確認する試験 ●先発品と同じ速さで同じ量の有効成分が体内に吸収されるか確認する試験 ●長期に保存しても問題ないか確認する試験

これらすべての試験をパスした医薬品だけが、「ジェネリック医薬品」として世に出ることになります。

なお、ジェネリック医薬品は先発医薬品と異なる添加剤を使用する場合もありますが、医薬品に使用する添加剤というのはもともと前例があり、安全性が確認されているもののみが使用されます。したがって、「新薬にはない添加剤が入っているから危険だ」と過剰に心配する必要はありません。

ジェネリック医薬品の効果は新薬と「まったく一緒」?

では、ジェネリック医薬品の効果は先発医薬品とまったく同じなのでしょうか。

結論からいうと、「同一でない場合もある」というのが正しいです。

たとえば、後発品が製造販売承認を得る際の条件は、「その薬の体内で吸収されたり、分解されたり、目的の効果を出す過程が先発品と80~125%同じであること」となっています。これはつまり、20~25%の誤差であれば許容されるということです。

「20~25%も誤差があって大丈夫なのか?」と思いますよね。

実際、多少血中濃度に誤差があっても問題がない薬が非常に多いです。なぜかというと、有効でかつ安全な濃度の範囲が広く設定されているためです。

しかし、なかには有効で安全な濃度域が狭いタイプの薬があります。例をあげると、一部のてんかん治療薬や免疫を抑制する薬、不整脈の薬などです。このような薬については、患者さんの肝腎機能や薬の飲み合わせなどで濃度域が変動するため、診療の際に採血で薬の血中濃度を確認し、効果と副作用を評価される場合があります。

日本小児神経学会・日本てんかん学会は、抗てんかん薬のジェネリック医薬品への変更に関して以下のように注意喚起しています。

”てんかん発作治療における多くの抗てんかん薬は治療域が狭く、少量の変化で発作の再発や副作用が懸念される。もし先発医薬品と後発医薬品とのあいだに治療的な差があれば、長く発作の抑制されている患者で急にこれらを入れ替えると、思わぬ発作の再発や副作用を発来することがありうる”

てんかん治療薬のように厳密な血中濃度を求められる場合は、先発医薬品からジェネリック医薬品への切替えの際には注意が必要です。複数の薬をいちどに切り替えるといったことは、避けたほうがいいかもしれません。

ただし、治療を始める段階からジェネリック医薬品を使用すれば問題はありませんし、発作が抑制されていない場合も問題は少ないでしょう。

ジェネリック医薬品の“安心・安全”を脅かす「例外」

では、ジェネリック医薬品の品質管理は本当に「安心・安全」といえるものなのでしょうか。これは、「ほとんどの場合は『安心・安全』といえるが、例外は存在する」というのがおおむね正しい認識です。

たとえば、近年ジェネリック医薬品の問題が明らかになった事件として「爪水虫治療薬の薬物混入事件」が挙げられます。

これは2020年、ジェネリック医薬品メーカーが製造した爪水虫の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入しており、意識障害などの健康被害が150件以上、なかには死亡した例もあったという事件です。厚生労働省が認めた製造手順のダブルチェック、品質検査が行われていなかったことで、ジェネリック医薬品の信用を落とす事態となりました。

近年注目の「オーソライズド・ジェネリック」

こうしたなか、先発医薬品メーカーとほとんど同等の条件で製造される「オーソライズド・ジェネリック(AG;Authorized Generic)」が注目されはじめています。

「オーソライズド・ジェネリック」とは、通常、先発医薬品メーカーから許諾を得て、先発医薬品と原薬や添加物、製造方法などを同一にした後発医薬品のことをいいます。包装も先発医薬品のデザインが踏襲される場合が多く、抵抗感が少ないかもしれません。

通常のジェネリック医薬品でも問題になることは少ないと思いますが、ジェネリック医薬品に不安を覚える方はぜひ「オーソライズド・ジェネリックをお願いします」と聞いてみてください。ジェネリック医薬品についてよく知っている薬剤師さんでしたら、薬局できちんと対応してくれると思います。

まとめ

ジェネリック医薬品は一概に危険ということではありません。しかし、特定の病気にかかっている方や添加剤に過敏な反応を示してしまう方など、一部慎重に検討したほうがいい場ケースが存在します。

ご自身の服用している薬がジェネリック医薬品に切り替わっても問題ないのかどうか、気になる方は主治医の先生や薬局へ確認してみてくださいね。

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医  

(※写真はイメージです/PIXTA)