女性が一人でキャンプ音楽フェス、旅行などへ行く機会が増えました。夏休みなどを利用して、そういった“ソロ活”をする女性も多いと思います。6月に女性ソロキャンパーが、キャンプ中に男性からナンパされた上、断ったらどう喝されるという悪質な“ナンパ被害”のニュースもありました。こういった悪質な“ナンパ行為”は法的に問題はないのでしょうか。また、訴えることはできるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所・弁護士の佐藤みのりさんに聞きました。

悪質なナンパは、逮捕の可能性も

Q.ずばり、迷惑なナンパ行為は犯罪にあたるのでしょうか。

佐藤さん「一般的なナンパ行為が犯罪にあたることはありませんが、度を越したナンパ行為は犯罪になる可能性があります。

軽犯罪法1条28号は、『他人の進路に立ちふさがって、もしくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、または不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者』について、『拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑)または科料(1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑)に処する』と定めています。ナンパの際、立ちふさがって進路をふさいだり何人かで囲んだりすると、この規定に触れ、軽犯罪法違反の罪に問われる可能性があります。

その他、『断ったらどうなるかな? だからホテル行こう』などと脅しともとれる発言があると、脅迫罪(刑法222条)や強要罪(刑法223条)に問われることも考えられます。

一時的なナンパ行為にとどまらず、特定の相手を待ち伏せして、繰り返しナンパするといったケースでは、ストーカー規制法や自治体の定める迷惑防止条例に触れることもあり得ます。

ナンパ目的の声かけ自体が違法になることは考えにくいものの、相手が不安や迷惑に思うような声かけは控えましょう。特に、周囲に人がほとんどいない野営場で、ソロキャンプ中の女性に声をかけると、街中で声をかける場合に比べ、相手が恐怖心を抱きやすいものです。特に、夜間には声掛けを控えるなど、相手の気持ちを想像しながら行動することが大切です。

Q.ナンパ行為をされた時に、訴えたりすることはできるのでしょうか。

佐藤さん「一般的なナンパ行為には違法性がなく、仮に損害賠償請求の訴えを起こしても認められないでしょう。また、1回きりのナンパを受けただけでは、通常、相手の素性が分からず、訴訟を起こすことは現実的ではありません。

 ただし、ナンパからストーカー被害に発展しているようなケースでは、精神的損害も大きくなり、慰謝料請求することも可能です。このようなケースでは、弁護士に依頼し、相手と直接会うことなく、交渉を進めるのがよいと思います」

Q.女性ソロキャンパーへの悪質なナンパ行為以外に、迷惑なナンパ行為で逮捕者が出た事件などはあったのでしょうか。

佐藤さん「東京都新宿区の路上で、男性が『スカウトですけど、興味ありませんか』などと言いながら女性にしつこく声をかけ、60メートルにわたって執拗(しつよう)につきまとい、勧誘したとして、東京都迷惑防止条例違反の疑いで現行犯逮捕された事例があります。

男性は、『ナンパを断られたので、スカウトを名乗って声をかけた』『ナンパしたかった』と供述したと報じられています。

ナンパ目的での声掛けが、思わぬ形で逮捕につながることもあり得るので、気を付けましょう」

オトナンサー編集部

悪質なナンパ行為は法的に問題ないの?