キズナアイ6月30日をもって活動6周年を迎えた。本人は活動休止中だが、歌唱特化型AI・KZNや、アニメプロジェクト『絆のアリル』、そして後輩であるLoveちゃんなど、直属の存在はいまなお動いている。Twitterにはお祝いの言葉も飛んでおり、いまなお「最初の一人」として愛されていることがうかがえる。

 そして、今年から6月30日は正式に「キズナアイが生まれた日」になったようだ。日本記念日協会に申請した結果、記念日として認められたのである。「バーチャルYouTuber」を生み出した最初の一人が生まれた日として、今後もファンや業界が祝福することになるだろう。

参考:キズナアイ、6年間の活動は「夢のようだった」 スリープ前ラストインタビュー

 「にじさんじ」の夏がはじまった。毎年恒例の『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』対戦企画「にじさんじ甲子園」が、今年も開催のはこびとなった。「監督」として参加するにじさんじ所属タレントが、ほかのタレントを「ドラフト」で選出し、ゲーム機能で選手キャラクターとして作成・育成し、チームを組んで対戦する人気イベントだ。毎年幾多のドラマを生むeスポーツイベントであり、今年も多くの人が育成期間から見届けることになるだろう。

 また、「にじさんじはにわかにマクドナルドにも進出した。6月30日から7月13日まで、店内放送に叶、不破湊ベルモンド・バンデラスの3名が、新メニュー「大人のご当地てりやき」をプロモーションする放送内容で出演するというコラボだ。いよいよここまでのメジャーゾーンに「にじさんじ」が現れる時期に入ってきている。

 一方で、VTuberを悩ませているのは誹謗中傷である。そしてこれはVTuberに限らず、クリエイターやインフルエンサー全般にあてはまる問題だ。6月28日、「ホロライブプロダクション」のカバーと、「にじさんじ」のANYCOLORは、一般社団法人クリエイターエコノミー協会が設置する「誹謗中傷対策検討会」への参画を表明した。

 このほかにもグーグル(YouTube)、note、UUUMといった企業が名を連ねており、クリエイターの誹謗中傷対策の意見交換を行いつつ、ともに課題に取り組むとのことだ。カバーとANYCOLORは、以前から協働して誹謗中傷対策に取り組んできており、加害者に対して強い姿勢を示している。「いかなる理由であれ誹謗中傷は許されない」という意識が、こうしたところから社会全体へ広まることを期待したい。

 キズナアイが生まれて6年。VTuberは当初からは考えられないほど、社会にタレント・インフルエンサーとして溶け込み始めている。そして、社会に浸透すればするほど、多くの人が悩む問題に晒される。そこに、リアルとバーチャルの境目などない。「生きた存在」を尊重し、適切な言葉を使うリテラシー教育が、社会全体に求められる。

〈VRスポーツの熱気をリアルへ。東京タワーのイベントが切り開くソーシャルVRの世界〉

 社会へ溶け込み始めたVTuberに対し、ソーシャルVRメタバースの世界はまだまだ社会へ知られ始めた段階だ。草の根の活動はまだまだ続いている。

 いまこの領域で熱を強く帯び始めているのは、スポーツの世界だ。VRデバイスを身に着け、バーチャル空間で未知なるスポーツに挑む人々は、eスポーツの文脈から、そしてフィットネスの文脈からも着実に増えている。

 そうしたVRスポーツが一挙に集結するイベントが、東京タワーで開かれる。VRスポーツイベント『SPARK LINK』は、7月8日に「RED° TOKYO TOWER」にて開催される。全5種のVRスポーツの大会が実施され、来場者は競技者の様子を実際に目の当たりにすることができる。初心者向けの大会も開催されるようで、当日の飛び入り参加もOKだそうだ。

 「無重力空間で行うディスク版バスケットボール」や、「VR空間で行うPUBGのようなバトロワ」など、VRならではの競技もあれば、先日韓国ストリーマーの企画で大きな話題になったリアル志向ボクシングVRCボクシング大会」など、VRスポーツといっても幅が広い。しかしいずれにせよ、身体をフル活用することは必至だ。コントローラーを握るゲームから一歩進んだ新たなeスポーツコンテンツは、独自の熱気を帯びている。

 『SPARK LINK』ではほかにも、「cluster」で同時開催される音楽ライブが、会場現地へ生中継される。VTuberシーンとはまた異なる、VRアーティストたちのパフォーマンスをリアルにいながら観覧できるタイミングもなかなかない。東京タワーという「リアルの場」で、VR生まれのスポーツと音楽を一挙に楽しめる機会は、なかなかに貴重だ。

 ちなみに、この『SPARK LINK』を主催するのは、4つのユーザーコミュニティが共同運営する非営利団体だ。初期のVTuberもそうだが、企業だけでなく、熱気あふれる一般人たちが、こうしたカルチャーの草分けを行っていくものだ。そのさきにどんな光景が待っているか、筆者もじっくりと追いかけていきたい。

(文=浅田カズラ)

キズナアイ6周年を祝う、KizunaAI株式会社のツイートより