7月は、犯罪や非行をした人の立ち直りについて理解を深める「社会を明るくする運動」の強化月間だ。各自治体では、イベントが開催される。

会場には、更生保護のマスコットキャラクター「更生ペンギンのホゴちゃん」の着ぐるみが姿を現すこともある。丸いフォルムのボディに小ぶりの蝶ネクタイが特徴的だ。

ところが、2019年に世田谷区に現れたホゴちゃんは一風変わっていた。スレンダー体型に大きな蝶ネクタイ。丸いというより「縦長」だ。記事の写真を見た読者からも「顔色が悪い」「本物なのか?」などの声が寄せられた。

着ぐるみに「偽物」がいるのだろうか。真相を確かめるべく、法務省に話を聞いた。

●「更生ペンギンのホゴちゃん」は2014年生まれ

法務省保護局(以下、保護局)の担当者によると、ホゴちゃんは、ゆるキャラの活用を検討する中で、2014年に誕生した。2010年に広報啓発宣伝資料に初登場したキャラクター「更生ペンギン」を現行イラストにリニューアルし、当時の保護局長が名前をつけた。日本更生保護協会が「更生ペンギンのホゴちゃん」として商標出願し、2015年に登録されている。

ホゴちゃんは、もともとは悪いことばかりする「非行ペンギン」だった。このころは、スレンダー体型のペンギンとして描かれている。犯罪や非行をした人の立ち直りを支える保護司であるクジラ先生や、協力雇用主のアシタカ親方に救われ、現在の「更生ペンギン」になったという設定だ。2015年には、4コマ漫画もつくられた。

こうしてみると、2019年に世田谷区のイベントに現れた着ぐるみはイラストと似てはいるものの、体型に違いがみられる。はたして「同一人物(ペンギン)」なのだろうか。

着ぐるみに「ニセモノ」はいない!

話を聞いてみると、ホゴちゃんの着ぐるみに「ニセモノ」は存在しないことがわかった。担当者は「着ぐるみは国費で買っているものではなく、各地の更生保護協会などで作っています。そのため、若干デザインに違いがある」と説明する。

業者に依頼することもあれば、自作することもあるという。世田谷区の担当者によると、イベントに現れたホゴちゃんは「手作りの可能性がある」とのことだ。

保護局のツイッターでは、岩手県の久慈地区保護司会の手作り着ぐるみも紹介されている。世田谷区とはまたすこし違うデザインだ。

ちなみに、法務省保護局がつくった「本家」のホゴちゃんも存在する。国費ではなく、更生保護関係団体などから集めた寄付金を使って業者に発注したものだという。

日本中に何種類の着ぐるみがあるのかは、保護局でも「すべてを把握しきれてはいない」。ただし、すべての自治体にはないため、イベントで出動させたいときは「本家」または隣県から借りるなどしているという。

●7月は大忙し!イベントで引っ張りだこに

今年で73回目を迎える「社会を明るくする運動」の起源は、戦後間もない1949年7月まで遡る。生活に余裕がない人びとや戦災孤児などによる犯罪や非行がみられ、混沌としていた時代だ。同じ年に更生保護について定める「犯罪者予防更生法」(当時)が施行されたことを記念して、東京・銀座の商店街の有志が「銀座フェアー」を開催したという。

翌年の1950年には、法施行1周年を記念して、有志による街頭宣伝活動や映画会などの啓発活動を実施する「矯正保護キャンペーン」がおこなわれた。

一連の活動をみて、犯罪や非行をした人たちの立ち直りや犯罪防止に市民の理解と協力が必要と考えた法務省(当時:法務府)は、この取り組みを「社会を明るくする運動」と名づけ、世に広げたとされている。

ホゴちゃんは毎年7月になるとイベントで引っ張りだこになり、多忙を極めるという。どんなデザインや表情であっても、すべての着ぐるみは、犯罪や非行をした人の立ち直りや犯罪防止を願う人たちの思いがこもった「本物」だ。強化月間中にみかけることができれば、それだけでラッキーなのかもしれない。

法務省ゆるキャラ「ホゴちゃん」ニセモノ出現か?「非行しないペンギン」着ぐるみの謎