THE ALFEEによるライブツアー【THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代】の東京公演が5月27日と28日、東京・NHKホールにて開催された。

 本ツアーは4月6日、埼玉・川口リリア メインホールを皮切りに全国27公演を開催。東京公演はその中盤で、筆者が観たのは27日。会場の外には、「チケット譲ってください」の紙を持った老若男女が溢れかえっており、THE ALFEEの幅広く根強い人気を改めて思い知らされた。

 定刻となり、暗転したホール内にロマンティックなインストゥルメンタル曲が大きく鳴り響く。それが次第に勇ましいマーチへと変化していく中、バックライトに照らされた桜井賢、坂崎幸之助、そして高見沢俊彦のシルエットがステージ中央に現れると、客席からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 まずは1984年にリリースされた通算8枚目のアルバム『THE RENAISSANCE』より、「鋼鉄の巨人」からライブはスタート。サポートメンバー吉田太郎による激しいドラミングに導かれ、高見沢による高速カッティングが宙を切り裂いていく。その鉄壁のアンサンブルに支えられ、桜井の伸びやかなハイトーンボイスがスリリングなメロディを歌い上げると、早くもフロアのボルテージは最高潮に。サビでの3人のハーモニー、タッピングを駆使した高見沢の超絶ソロなど「これぞTHE ALFEE!」と快哉をあげたくなるような展開が目白押しのこの曲は、リリースから30年近く経つ今もライブの定番だ。

 間髪入れずに披露された「恋の炎」は、通算4枚目のアルバム『FOR YOUR LOVE』(1985年)収録曲。真っ赤な照明の下で高見沢がヘヴィーなギターリフを繰り出した瞬間、フロアからは怒涛の歓声が上がる。この曲は坂崎と高見沢のスイッチボーカルが見どころの一つで、ギターを置きハンドマイクになった坂崎がステージを練り歩きながら客席に向かって笑顔で歌いかけると、オーディエンスもそれにハンドクラップで応えている。すると高見沢も負けじとギターを持ったままステージ前方へ、ヘッドセットマイクに向かって超ハイトーンボイスで歌いながら、シグネチャーギター「FLYING ANGEL -Fantasia-」を操る姿はカリスマ性たっぷりで、思わず目が釘付けになる。

 「2023年春ツアー【風の時代】、NHKホールに帰ってまいりました! THE ALFEEのライブを初めてみる人も、何十年、何百回と来られている方も、動き回る『生のTHE ALFEE』を楽しんでもらいたいと思います。そして、今回からライブの声出しもOKになったということで、みなさまの3年分の熱い声援を期待しております!」と坂崎が挨拶をすると、客席からは割れんばかりの声援が巻き起こった。

 ツアーのタイトルにもなっている「風の時代」は、2022年にリリースされた最新アルバム『天地創造』収録曲。セクションごとに目まぐるしく転調していくプログレッシヴなナンバーだ。物質主義的な「地の時代」から、モノに縛られない、型にはまらないものが重視される「風の時代」へと変化していくこの世界を歌った歌詞の世界が印象的。<風の時代/形あるモノは壊れ/古い価値のすべてが終わる><君の時代/変わる時は今なのさ>という歌詞が象徴するように、新しい時代へと躊躇なく飛び込んでいこうとする3人の姿は、もうすぐ70歳を迎えるとは思えぬほど若々しい。

 アニメ映画銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー』の主題歌として書き下ろされた「Brave Love ~Galaxy Express 999」は、壮大で哀愁味あふれるメロディが特長の高見沢の「真骨頂」とも言える楽曲だ。続く、アカペラハーモニーではじまるロックオペラ「THE AGES」(1986年にリリースされた通算11枚目のアルバム表題曲)は、サポートメンバーただすけによる ELOを彷彿とさせるスペイシーなシンセサイザーが印象的だ。

 「ライブでは久しぶりに披露する」と言いつつ披露した1996年のシングル曲「Love Never Dies」(アルバム『LOVE』収録)は、クラシックやプログレッシヴロックからの影響を大きく受けた、美しくも力強いメロディラインが印象的。さらに、高見沢がギターをエモーショナルにかき鳴らす2017年発表67枚目のシングル「人間だから悲しいんだ」(2019年『Battle Starship Alfee』にも収録)を経て「GLORIOUS」では、〈時代は変わって行くけど/俺は今もここで愛を歌っている〉と力強く宣言。バンド結成40周年を迎えた2013年にリリースされた楽曲だが、そこから10年の歳月が経ち結成50周年を迎える今、彼らがこの歌詞を歌うことに大いなる自信と、説得力を感じてしまった。

 ライブ後半では、最新シングルのカップリング曲「Never Say Die」を披露。ヘヴィかつスピード感あふれるアンサンブルを下から支える、地響きのようなキックサウンドが、まるで腹を蹴り上げるように響いてくる。クライマックスは「組曲:時の方舟」(アルバム『天地創造』収録)。ピンク・フロイドイエスといった往年のロックバンドから、ガロや吉田拓郎といった70年代フォークまで、高見沢インスパイアされたルーツミュージックが全編にわたって反映された8章からなる壮大な組曲にひたすら圧倒される。

 さらに「COUNT DOWN 1999」(1990年ARCADIA』収録)を経て最新曲で、ドラマ『グランマの憂鬱』主題歌の「鋼の騎士Q」を演奏し本編は終了。アンコールでは「暁のパラダイス・ロード」(1983年)を披露した後、恒例のコントを挟み、「星空のディスタンス」(1984年)、「SWEAT & TEARS」(1986年)そして「恋人になりたい」(1980年)と初期名曲をたたみかけ、鳴り止まぬアンコールに応えて「See You Again」(1982年)をオーディエンスと共にシンガロングし、この日の幕を閉じた。

 先日行ったインタビューで桜井は、「ライブをずっとやり続けている事で、昭和生まれの方も平成生まれの方も、一緒に楽しめるコンサートができるようになったのも「幸せだな」と思います」と語っていた。20代の若者から70代のリアルタイム世代まで、性別や年齢、初心者/常連問わず誰もが楽しめるステージになっているのは、まさに彼らが現役のまま今日まで走り続けてきたからだろう。前人未到の境地を切り開き続けるTHE ALFEEの、底力を見せつけるような圧巻のライブだった。

Text by 黒田隆憲


◎公演情報
THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代】
2023年5月27日(土)
東京・NHKホール

<ライブレポート>THE ALFEE、新境地を切り開く底力を見せた【THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代】東京公演