株式会社帝国データバンクは、全国2万7,771社を対象に2023年6月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。

<調査結果のポイント>

  1. 2023年6月の景気DIは前月比0.4ポイント減の45.0となり、5カ月ぶりに悪化した。景気は、長びく人手不足インフレ傾向などがマイナス要因となり、回復傾向が一時的にストップした。今後は、ポストコロナへの対応を進めつつ、緩やかに回復しながら推移していくとみられる

  2. 原材料価格やエネルギー価格の高騰、食品などの値上げによる買い控えなどが悪材料となり、10業界中7業界、51業種中34業種で悪化した。地域別では、前月までの全地域改善から一転し、10地域中7地域が悪化、2地域が改善、1地域が横ばいとなった。天候要因や物価高などの影響が表れたほか、各地域で個人消費関連が低調だったこともあり、29都府県が悪化した。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が6カ月ぶりにそろって悪化した

  3. 今後の円安進行による価格の上昇分に対する価格転嫁へ懸念を示す声が多く聞かれた。企業の想定為替レートは平均1ドル=127.61円(2023年4月調査時)

調査期間:2023年6月19日6月30日(インターネット調査)
調査対象:2万7,771社、有効回答企業11,105社、回答率40.0%
調査機関:株式会社帝国データバンク

< 2023年6月の動向 : 回復傾向が一時ストップ >

2023年6月の景気DIは前月比0.4ポイント減の45.0となり、5カ月ぶりに悪化した。経済活動や社会生活の正常化に向けた動きがさらに加速するなかで、景気は、長引く人手不足インフレ傾向などがマイナス要因となり、回復傾向が一時的にストップした。

食品など生活必需品の値上げや電気代を含むエネルギー価格の高騰などが悪材料となった。またインフレに賃上げのペースが追いつかず買い控えの動きも表れるなど、個人消費が低調だった。観光産業では、国や自治体の支援策が一部で販売終了となったほか、平年よりも早い梅雨入りなど天候による影響もみられた。他方、インバウンドや人出の増加、新型コロナ禍からのリベンジ消費、半導体の不足が緩和したことなどはプラス材料だった。

< 今後の見通し : 緩やかな回復傾向で推移 >

今後1年間の国内景気は、ポストコロナ時代に向けた経済・社会システムの構築に対する動きが加速するなかで推移するとみられる。悪材料として海外経済の減速やウクライナ情勢などは先行き不透明な状態が続く。さらに生活必需品や電気代の値上げ、人手不足、為替レートの変動なども懸念される。他方、ボーナスを含む賃上げの広がりや消費マインドの改善、夏の観光などがプラス材料となろう。DXの推進や脱炭素化などの設備投資は着実に進むと見込まれ、インフレ傾向は徐々に鈍化していくと期待される。今後は、ポストコロナへの対応を進めつつ、緩やかに回復しながら推移していくとみられる。

業界別:10業界中7業界が悪化、人出の増加で好調も値上げの影響が重しに

人出の増加とともにリベンジ消費などは続いている一方で、原材料価格やエネルギー価格の高騰、食品などの値上げによる買い控えなどが悪材料となり、10業界中7業界、51業種中34業種で悪化した。加えて長期的な人手不足による機会損失も下押し要因となった。

『運輸・倉庫』(42.2):前月比1.2ポイント減。4カ月ぶりに悪化。「燃料高、ドライバー不足が強く影響している」(一般貨物自動車運送)というように貨物輸送を中心に燃料費の高騰や人材確保に苦戦している。さらに整備部品の高騰も下押し要因となった。また「円安と中国経済の低迷で、輸入貨物の取り扱い量が前年に比べ3割ダウンしている」(港湾運送)といった声も聞かれた。一方で、結婚式や懇親会の復活、インバウンドの増加などでタクシー利用が徐々に増えているなど明るい声があげられた。

『卸売』(42.5):同1.2ポイント減。5カ月ぶりに悪化。「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(同1.1ポイント減)は住宅着工戸数の減少ほか、物価高騰のため耐久消費財の需要低迷などにより2カ月連続で悪化した。紙の値上げによるペーパーレスが加速という声もあり「紙類・文具・書籍卸売」(同3.8ポイント)は6カ月ぶりに悪化に転じた。「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(同3.7ポイント減)は「需要は増えているが、人員不足による供給力不足、原材料高による利益の圧迫がある」(下着類卸売)というように11カ月ぶりに下向いた。『卸売』は1年5カ月ぶりに全9業種で悪化となった。

『小売』(42.0):同0.4ポイント減。2カ月連続で悪化。総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同0.9ポイント減)は、商品価格の値上げにより買い控え行動が表れ2カ月連続で悪化した。同様に消費は回復しているが、必要な物しか買わない傾向が強くなったとの声も聞かれる「飲食料品小売」(同3.1ポイント減)は4カ月ぶりに悪化。「家電・情報機器小売」(同1.9ポイント減)も2カ月ぶりに悪化に転じ、再び30台となった。一方で、アパレルなどを含む「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同2.1ポイント増)は、外出機会の増加に起因して2カ月連続で改善した。とりわけ、婦人服などで回復が目立った。

『サービス』(51.6):同横ばい。引き続きインバウンド需要は活発であるが、全国旅行支援の一部販売終了などで「旅館・ホテル」(同4.7ポイント減)は2カ月連続で悪化した。天候に左右されたゴルフ場などを含む「娯楽サービス」(同2.8ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。「値上げなどで外食費を抑えていると強く感じる」(酒場,ビヤホール)というように「飲食店」(同3.1ポイント減)は5カ月ぶりに下向いた。一方で、「情報サービス」(同0.6ポイント増)は「DX推進における補助金も多種ありIT投資意欲が旺盛」(ソフト受託開発)といった声が多く、5カ月連続で改善した。

規模別:全規模が6カ月ぶりにそろって悪化、物価高の影響続く

大企業」「中小企業」「小規模企業」が6カ月ぶりにそろって悪化した。物価高が続くなか、素材関係の落ち込みが目立ったほか、消費者の節約志向の高まりも下押し要因だった。

大企業」(47.7):前月比0.4ポイント減。4カ月ぶりに悪化。『運輸・倉庫』は、「荷動きが少ない」といった声が多く、加えて低調な価格転嫁なども悪材料となった。一方で、「受注がやや上向きつつある」といった声も聞かれる『製造』は4カ月連続で上向いた。

中小企業」(44.5):同0.4ポイント減。5カ月ぶりに悪化。「紙の値上げによりペーパーレス化が加速した」など、価格上昇による顧客離れがみられた。また、値上げなどの影響が表れた『小売』が2カ月連続で悪化したほか、『卸売』は素材関係の落ち込みが目立った。

「小規模企業」(43.6):同0.3ポイント減。5カ月ぶりに悪化。物価高が続くなか「消費者の買い控えが顕著で売り上げが伸びない」など、節約志向の高まりによる影響が『卸売』などに広がった。『不動産』は空室率の上昇もあり6カ月ぶりの低下となった。

地域別:全10地域中7地域が悪化、各地域で個人消費関連が低調

前月までの全地域改善から一転し、『近畿』『四国』など10地域中7地域が悪化、『北海道』『東北』が改善、『南関東』が横ばいとなった。天候要因や物価高などの影響が表れたほか、各地域で個人消費関連が低調だったこともあり、29都府県が悪化した。

『近畿』(43.9):前月比1.5ポイント減。4カ月ぶりに悪化。域内2府4県のうち「和歌山」が改善したものの、2府3県が悪化した。全規模がそろって落ち込んだのは5カ月ぶり。個人消費関連が不調に推移し『小売』『サービス』などが大幅に低下した。

『四国』(41.7):同1.3ポイント減。4カ月ぶりに悪化。域内4県のうち「高知」「香川」「徳島」の3県が悪化した。平年より梅雨入りが早かったうえ、「販売価格の低迷」「来客数の減少」など『小売』の落ち込みが目立った。他方、『建設』は堅調に推移した。

北海道』(43.9):同0.9ポイント増。5カ月連続で改善。道東エリアが2カ月ぶりに上向いた。「中小企業」の持ち直し傾向が続くなか、特に「小規模企業」が大きく改善。好調な観光産業のほか、鶏卵価格の高騰が好材料となった『農・林・水産』がけん引した。

【今月のポイント(1)】 円安に関する影響

今後の円安進行による価格の上昇分に対する価格転嫁へ懸念を示す声が多数あがっている

2023年4月時点における、企業の想定為替レートは平均1ドル=127.61円。前年同月時点の119.69円から7円92銭の円安水準を想定していた

【今月のポイント(2)】原材料価格高騰などにともなう値上げと価格転嫁に関する影響

総合スーパーなどの「各種商品小売」について直近の仕入販売ギャップは小さくなっており、価格転嫁が進んでいると考えられる

値上げの状況が進むなか、幅広い業種から消費者の買い控えの声が聞こえている

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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