ニューカッスルは3日、ミランからイタリア代表MFサンドロ・トナーリの完全移籍加入を発表した。23歳の若き司令塔はイタリア国籍の選手として史上最高額の移籍金7000万ユーロ(約110億円)で加わることとなったが、果たして彼はプレミアリーグの舞台で活躍できるのだろうか。そのヒントを探るべく、プレミアリーグに挑戦した過去のイタリア人選手の系譜を見てみよう。

 プレミアリーグの公式HPによると、これまで実に76名ものイタリア人選手がプレミアリーグの舞台に立ってきた。これはあくまでプレミアリーグで試合に出場した選手であり、1度もピッチに立てずにクラブを去った者もいる。例えば、元ニューカッスルのFWファビオ・ザンブレラもその一人だ。

 2008年冬にアタランタアカデミーからニューカッスルに加入した元U-19イタリア代表FWは、イングランドでは全く出番を得られなかった。サンプドリアローマへのレンタル移籍を経て、2011年夏にニューカッスルを退団した。

[写真]=Getty Images

◆■ニューカッスルイタリア

 ザンブレラを含め、過去に5名のイタリア人がニューカッスルに所属してきた。最も有名なのは元イタリア代表DFダヴィデ・サントンだろう。インテルでプロ選手の道を歩き始めたサントンは、18歳でイタリア代表デビューを果たすなど将来を嘱望される選手だった。そして2011年夏、20歳にしてニューカッスルに加入。両サイドバックをこなせるサントンは、プレミアリーグで通算82試合に出場したが、徐々に出番を失って2015年冬に母国イタリアへと戻った。

 DFアレッサンドロ・ピストーネもインテルから加入したサイドバックだった。1997年夏にニューカッスルへ加入すると即座にレギュラーに定着するも、翌年に彼を獲得したケニー・ダルグリッシュ監督が解任され、ピストーネも出番を失った。それでも再びポジションを奪い返し、ニューカッスル時代にプレミアリーグ通算で46試合に出場。2000年夏にエヴァートンへ移籍すると、その後もイングランドプレーを続け、結局2クラブでプレミアリーグ通算149試合に出場した。これはイタリア人選手としてはプレミアリーグで歴代7位の記録となっている。

 元イタリア代表FWジュゼッペ・ロッシもニューカッスルプレーした経験を持つ。若くしてマンチェスター・Uに引き抜かれた小兵アタッカーは、2006-07シーズンに半年のローン契約でニューカッスルに加入。即戦力として活躍が期待されたものの、奪ったゴールはリーグカップでの1点のみ。リーグ戦では11試合0ゴールと不発に終わり、半年でクラブを離れた。

 DFアントニオ・バッレーカもわずか半年でニューカッスルを去ったイタリア人選手だ。2019年1月にモナコからレンタル移籍にて加入した左サイドバックは、同年2月のプレミアリーグ第25節トッテナム戦で86分から投入されてニューカッスルでのデビューを果たすが、彼がピッチに立ったのはその試合の4分間のみ。その後は出場機会を貰えず、わずか1試合の出場でレンタル移籍期間が満了してニューカッスルを去ったのだ。

 このように、ニューカッスルで活躍したイタリア人は少ないのだが、果たしてトナーリはどうなるのだろうか?

◆■プレミアで輝いたイタリア

 ニューカッスル以外のクラブに目を向ければ、プレミアリーグで結果を残したイタリア人選手は少なからず存在する。その筆頭格がチェルシーで活躍した“小さな巨人”ことFWジャンフランコ・ゾラだ。1996年11月にパルマから加入したストライカーは、168㎝と小柄ながら類稀なテクニックでプレミアリーグを席捲。チェルシーの歴代最高プレーヤーの1人に挙げられるほどの活躍を見せた。

 チェルシーでは2003年夏に退団するまでの7シーズンで2度のFAカップ制覇やカップウィナーズカップ優勝など数々の栄冠を手にし、1998-99シーズンと2002-03シーズンにはチェルシーのクラブ年間最優秀選手に選ばれた。プレミアリーグでは通算229試合59ゴール。出場数はプレミアリーグイタリア人として歴代1位、得点数も2位の記録となっている。ゾラは2005年の引退後、ウェストハムやワトフォードで監督を務め、2018年から1年ほどマウリツィオ・サッリ政権のチェルシーコーチも務めた。

 3年前にプレミアリーグの公式HPで行われた「プレミアリーグ史上最高のイタリア人選手」のアンケートでも、ゾラは60%の得票率を誇って断トツで1位に選ばれた。そのアンケートで2位に入ったのは、イタリア人によるプレミアリーグ歴代最多ゴール数を誇るFWパオロ・ディ・カーニオだった。

 ディ・カーニオはラツィオユヴェントスナポリミランと渡り歩いたのち、スコットランドセルティックを経て1997年夏にシェフィールド・ウェンズデイに加入すると、1年目からプレミアリーグで12ゴールの活躍。だが翌シーズン、審判を突き飛ばして11試合もの出場停止処分を受けることとなってしまった。そこで心機一転、1999年1月にウェストハムに移籍すると、“ハマーズ”でレジェンド級の活躍を見せるのだった。

 当時ウェストハムを率いていたハリー・レドナップ監督が「夢の中でしかできないようなプレーをする」と絶賛したストライカーは、2000年3月のプレミアリーグ第30節ウィンブルドン戦で本当に夢のようなシュートを決める。斜め後ろからのクロスに対し、飛び上がるとシザーズキックでジャンピングボレー。美しい一撃がファーサイドのゴールネットに突き刺さった。このシュートは英国放送局『BBC』の年間ベストゴールに選ばれたほどだ。

 さらにディ・カーニオは2000年12月のプレミアリーグ第18節エヴァートン戦で、敵GKがひざを痛めて倒れ込んでいたため、決勝ゴールを奪うチャンスにもかかわらずクロスを手でキャッチして試合を止めた。これにはエヴァートンのサポーターもスタンディングオベーション。このプレーでディ・カーニオはFIFAのフェアプレー賞を受賞した。そんな印象的なプレーをたくさん披露したディ・カーニオは、その後チャールトンでもプレー。最終的にはプレミアリーグでゾラに次ぐイタリア人歴代2位の190試合に出場。ともにイタリア人史上最多となる66ゴールと49アシストを記録した。

 ちなみに、プレミアリーグにおけるイタリア人の出場数ランクで3位に入っているのは、昨季ウェストハムでヨーロッパカンファレンスリーグ優勝に貢献したDFアンジェロ・オグボンナだ。同選手は190試合に出場している。また、6位にはチェルシーアーセナルで157試合に出場してきたイタリア代表MFジョルジーニョがランクインした。

 その他にも、プレミアリーグで活躍したイタリア人としては、元チェルシーのMFロベルト・ディ・マッテオやFWジャンルカ・ヴィアッリ、ミドルズブラでゴールを量産したFWファブリッツィオ・ラバネッリ、さらに元シェフィールド・ウェンズデイのFWベニート・カルボーネなどが挙げられる。

 果たして、トナーリもニューカッスルで英雄と称えられるほどの活躍ができるのか。新シーズンはイタリア人史上最高額のプレーヤーにも注目したい。

(記事/Footmedia)

これまでプレミアでプレーしたイタリア人選手たち [写真]=Getty Images