持ち味の力で圧倒するピッチングをここにきて見せ始めている藤浪。メジャーでも違いを見せ始めているパワーアームの去就はにわかに騒がしくなってきている。(C)Getty Images

 文字通りの“虎退治”によって、藤浪晋太郎の米球界での評価は変わりつつある。

 現地7月2日に敵地で行なわれたタイガース戦に藤浪は3番手で登板。三者連続三振を奪う圧巻の投球で相手打線をねじ伏せ、チームトップの今季5勝目を掴んだ。

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 開幕当初は長く苦心してきた制球難によって乱調を繰り返した藤浪。開幕1か月での防御率が13.00にまで落ち込んだために4月末に先発ローテーションから外され、中継ぎへと配置転換。試行錯誤の日々を送ってきた。

 だが、ここにきて日本球界屈指のパワーアームたる所以を発揮してきている。このタイガース戦でも才能の片鱗は十分に見られた。100マイル(約160.9キロ)を超える直球主体の投球で相手に付け入る隙を与えなかった背番号11は、2死からメジャー通算3127安打、508本塁打を誇る強打者ミゲル・カブレラと対峙。全盛期よりも衰えたとはいえ、実力と経験値では格上である大ベテランに対しても、物おじせずに自信を持って力勝負に徹した。

 初球から101.3マイル(約163キロ)と100.7マイル(約162キロ)の4シームで追い込んだ藤浪は最後に102.1マイル(約164.3キロ)の直球をインコース低めにズバッと投げ込み、空振り三振を奪取。さしもカブレラも振り遅れる球威のある渾身の一球だった。

 強打者にも“らしさ”を発揮した藤浪。もっとも、直近5登板では好成績をマークしており、復調の兆しは見せていた。防御率こそ3.18とやや気になる数値ではあるものの、奪三振率は11.12と向上。さらに与四球がゼロと課題だった制球面も一定の成果をあげているのだ。

 依然として課題は少なくないが、中継ぎで特大のポテンシャルをようやく発揮し始めた感がある藤浪。となれば、おのずと気になってくるのが去就だ。

 そもそもアスレティックスは高額年俸選手を売り、若手の有望株、もしくは低年俸の実力派を獲得するのを球団経営の常に行ってきた。ゆえにチームで5番目に高い年俸で締結した藤浪との契約にトレードの可能性が含まれていたのは言うまでもない。これは日本球界では考えにくいが、下位に低迷したチームが再建に踏み切るうえでの常套手段ではある。

 開幕直後の大不振は誤算だったに違いない。しかし、メジャーの水に慣れはじめ、マウンドで支配力を見せつつある藤浪の存在は、プレーオフ進出に向けた戦力強化を図りたい球団にとっては、魅力的に映るはずだ。彼らにとっては325万ドルの年俸も格安と言えるだろう。

 実際、現地でも藤浪放出の予想をする識者は少なくない。米専門メディア『A’s Unleashed』のカール・ブスチェック記者は「フジナミは、ここ15試合で防御率3.45。15回2/3を投げて17奪三振。トレードに使える一員だ」と電撃プランを提唱している。

 一時は「球団史上で最悪の補強の一人」とも揶揄され、壮絶なバッシングを受けた藤浪。ここにきて真価を発揮している29歳の剛腕は、トレード市場の「掘り出しモノ」として注目を集めそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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