凛(りん)とした透明感あふれる佇(たたず)まいが魅力的で、実力派女優として話題作への出演を重ねている清原果耶。監督・山下敦弘と脚本・宮藤官九郎が初タッグを組み、第57回台湾アカデミー賞最多受賞作をリメイクした映画『1秒先の彼』では、岡田将生とNHK連続テレビ小説なつぞら』(NHK総合)以来の共演を果たし、テンポの違う男女が繰り広げる愛らしいラブストーリーに身を投じている。10代の頃は「頑張らなきゃ、ちゃんとしなきゃと気負っていた」という清原。21歳となった今のモットーや、岡田との再共演について語った。

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清原果耶はテンポが遅いor早い?

 本作は、何をするにも人よりテンポが“1秒早い”ハジメ(岡田)と、“1秒遅い”レイカ(清原)による“ある1日”を、それぞれの視点で描くラブストーリー。チャーミングな登場人物と、“ある1日が消えてしまう”というファンタジックなストーリー、次第に明らかとなる2人の過去など、目の離せない展開にあふれた一作だ。

 宮藤による脚本を読んだ清原は、「魔法がかかったような脚本」と、特別な魅力を持つキャラクターが描かれている点に面白みを感じたという。「みんなに個性があって、脚本を読んだ時には『優しく温かい映画ができるのだろうな』と思っていましたが、完成した作品を見ると、宮藤さんの描く人間同士のつながり、言葉の優しさのようなものを感じて、『こんなにもピュアな心を持って帰らせてくれる映画になったのだな。とてもステキだな』と思いました」としみじみ。

 人よりテンポが遅いレイカを演じたが、清原自身は「どちらかというと、せっかちなタイプ。私生活では、『何時から何時までにこれをやって、次はここに行って』など大まかに決めておきたい」のだとか。

 自分とは違う性質を持つレイカを演じる上では、「“ぽやっとする”努力をしました」とほほ笑んだ。「レイカは表面に感情が出にくいキャラクターで、驚くほどセリフも少ない。だからこそ、いろいろとやりようのある役なのではないかと」と多くを語らないからこそ、難しい役でもあるという。

 「私自身、黙っていると“クール”、“強そう”という印象を持たれることが多いのですが、山下監督とも『レイカとしては、“強そう”という印象になるのは違いますよね』と話し合いをしながら、どうやったら“ぽやっと”した顔になるのか、口を少し開けてみようかなど、毎日悩んでいました」と楽しそうに話す。「ぽやっとしているレイカだけれど、それは表面上の部分。その裏には自分の好きなものに対して一直線という一途さが隠れている。とても強い女の子です」。

岡田将生は「お兄ちゃんのような安心感のある存在」

 相手役のハジメを演じた岡田とは、2019年放送の『なつぞら』で、兄妹役を演じた。数年ぶりの共演について、「『岡田さんがいるから大丈夫』という安心感があった」と切り出した清原は、「少しでも迷ったり、どうしようかなと思う時には、岡田さんがいつもそばで話を聞いてくださる。そして『こうしたらいいんじゃないかな』と相談に乗ってくださるのです。『なつぞら』でお会いした時からイメージはまったく変わらず、優しく、謙虚で、丁寧な方。本作ではお兄ちゃんではないのですが、お兄ちゃんのような安心感のある存在です」と信頼感を寄せている様子。

 テンポのちぐはぐな2人を演じたが、撮影現場では「ハジメくんがこれだけ早かったら、レイカはもう少し遅いほうがいい」と彼らのテンポ感の妙を表現するために、いろいろな試行錯誤があったと話す。また、キャラクターのやり取りにも楽しいシーンが満載で、とりわけレイカがハジメを人力車に乗せて走り出すシーンは印象的だ。

 「脚本を読んで、『人力車を引くの?』とびっくりしました。生きていて、人力車を引くことができるなんてまずないですよね。最高だなと思って」と清原はにっこり。「踏ん張る練習や、止める練習など、事前にいろいろと練習をしました。でも、レイカは人力車を引くのがうまいという設定ではないので、ハジメくんを乗せた人力車を下ろす瞬間に、“ガン!”と勢いよく地面につけてしまうのですよね。撮影前には、岡田さんにも『すみません、これから“ガン!”ってやります』と謝って。いろいろとご協力いただきました」と振り返った。「こんな経験、一生に一回だと思います。脚本に書いていただいて、本当によかったです」とあらゆる初体験にチャレンジできることも、女優業の醍醐味(だいごみ)だという。

◼“スマホとうまく距離を取る”21歳のリフレッシュ術と仕事論

 情報化社会の中で、世の中の変化のスピードも加速している。本作を見ていると、「自分はどんなペースで生きているのだろう?」と考える人も多いはずだ。清原は「探してみないと、自分にはどんなペースが合っているのかわからない。まずは自分のペースを見つけることが大事」と持論を述べた。

 「私は、“人と違うということを恐れない、怖がらない”ということを大切にしています。もちろん社会人の方でも学生さんでも『この場ならこうしなきゃいけない』『この空気に合わせないといけない』と思うことはたくさんあると思いますが、その全てに自分を合わせていこうとすると、気づいたら『しんどいな』と思うことが増えてしまうかもしれません。無理をせずに、人と合わせることから離れてみて、自分をリフレッシュさせる方法を確立することも大事だなと思います」。

 また、「スマホとうまく距離を取ることも大事にしています」とも明かした。「スマホをずっと見ていると肩も凝るし、頭も痛くなっちゃう。スマホを置いて、ふわっとした気持ちになれることを探したり、自分にはどんなことがリラックスになるのかを探す時間も大切にしたいなと思っています」。

■10代の頃は「今よりももっと頑固だった」

 2015年、中学生の頃にNHK連続テレビ小説あさが来た』(NHK総合)で女優デビューして以来、着実にキャリアを積み重ね、今年21歳となった清原。10代の頃は「今よりももっと頑固だった」と照れ笑いで告白する。

 「いわゆる“青い”という感じで、猪突猛進。常に『頑張らなきゃ』『ちゃんとしなきゃ』と気負っていました。でも当時はそれで良かったと思っています。今は『いただいた役への理解度を高めたい』『自分の役のことを1番わかっていたい』と思いつつも、『作品はみんなで作るのだ』という意識が強くなりました。いろいろな人の意見を柔軟に捉えて、消化していけるように努力したいと思っています」と力強く今のモットーを話してくれた。

 一方で、変わらないのは、“負けず嫌いな性格”が原動力になることだという。「誰かに向けての負けず嫌いではなくて、自分に対しての負けず嫌い。常に進化途中だと思っているので、その中で『ちゃんとやろう』『もっと頑張らないと』という責任感を絶やさずに持っていたいです」と熱を込めつつ、これからの20代の過ごし方について「たくさんの人に出会って、たくさん失敗して、たくさん恥をかいていきたい。失敗して泣いてもいいけれど、それも『良かったな』と思えるような生き方をしたいです。やらない後悔よりも、やる後悔。『きっと前に進める』と思いながら、これからも頑張っていきたいです」と爽やかな笑顔で宣言した。

 今の撮影期間中、清原が実践している前向きに生きる秘訣は、「現場に行くまでの時間に、自分で朝握ったおにぎりを食べること。自分を労ったり、ケアしていると思えると、次につながる気がしています」。(取材・文:成田おり枝 写真:小川遼)

 映画『1秒先の彼』は全国公開中。

清原果耶  クランクイン! 写真:小川遼