何かと出費の多い子育て世帯。そんななか、ひとり親世帯は経済的に困窮しがち。なかでも低収入の傾向にある母子世帯は、貧困と共に語られることが多く、何かと注目が集まります。一方で父子世帯にスポットライトが当たることは稀。実際はどうなのでしょうか。父子世帯の実態についてみていきます。

75万人のシングルファーザー…平均年収は500万円弱

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、2022年6月2日現在、全国の「世帯総数」は5,431万世帯。そのうち、「児童(18歳未満の未婚の子)のいる世帯」は991万7,000世帯で全世帯の18.3%。調査開始以来、初めて1,000万人を割りました。また「ひとり親世帯」は629万世帯と全世帯の6.8%。そのうち「母子世帯」は565万世帯、「父子世帯」は75万世帯となっています。

ひとり親世帯の経済力をみていくと、「平均所得」は331.7万円。「夫婦+子」世帯の「平均所得」は802万円ですから大きな経済格差があります。

また貧困線127万円を下回る「貧困世帯」は15.7%。子どものいる世帯では11.5%。一方、ひとり親世帯に限ると44.5%と4割強も占めています。

貧困に陥るひとり親世帯。その要因のひとつが、ひとり親世帯のなかでも母子世帯が9割近く占めているということ。厚生労働省令和3年度全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯では「正社員」が48.8%、「パート・アルバイト」と非正規社員が38.8%。母の仕事による収入は平均236万円、その他の収入を含めて272万円となっています。

同じく厚生労働省の調査によると、女性正社員(平均年齢40.8歳)の平均給与は月収(所定内給与額)で27.6万円、年収で431.4万円。一方、女性非正規社員(平均年齢47.7歳)は、月収で19.8万円、年収で266.5万円。この収入差が、ひとり親世帯の平均所得を下げ、貧困率を上げているのです。

ではひとり親世帯のうち、父子世帯の経済状況はどうなのでしょうか? 父子世帯の場合、「正社員」が69.9%に対し、「パート・アルバイト」が4.9%。父の仕事による収入は平均496万円、その他収入を含めて518万円。母子世帯に比べて、経済的に余裕があるケースが多いことがうかがえます。

統計上は余裕の父子世帯も…見えづらい父子世帯の貧困

困窮する母子世帯に対して、余裕の父子世帯。そんな姿がみえてきましたが、もちろん例外もあります。父子世帯における親の属性を振り返ってみましょう。「正社員」が69.9%、「パート・アルバイト」が4.9%。では残り4分の1はどうなのかというと、「会社などの役員」6.9%、そして「自営業」が14.9%……ひとり親になり、仕事と子育ての両立がいかに難しいかを痛感したり、職場の理解を得られなかったりと、やむを得ず退職。就業時間の短い非正規社員になったり、融通のきくフリーランスになったりするケースが多くみられます。

絶対的にボリュームが少ないので、ひとり親においては母子世帯に焦点があたりがち。そして「母子世帯=貧困」と紐づき、支援が集まりやすいという現状があります。

一方、シングルファーザーについては、あまり苦労が語られることはありません。統計上は父子世帯は経済的に問題のないように思われますが、正社員でも役職につけなかったり、残業ができなかったりと、収入を大きく減らすケースも珍しくありません。また安定した正社員の立場を捨てたことで、生活が不安定になることも。子育てを優先するほど、収入は下降線を辿ります。さらに世帯主として住宅ローンを抱えている場合、「夫婦2馬力で家計を支えローンを返済」というのは叶わず、ローン負担で家計が逼迫、火の車。最悪、住まいを手放すことも。

――毎日がワンオペ育児で、本当にツラい

――収入は減るし、頼る人もいない

――お金が足りず、暮らしていけない

そんな声は誰にも届かない……それが父子世帯の実態です。

経済的に困窮するシングルファーザー。そこで利用を考えたいのがひとり親世帯に対する経済支援です。たとえば「児童手当」。これはひとり親世帯に限らず、すべての家庭を対象とした支援策。養育している子どもの年齢によって支給額が変わります。「児童扶養手当」は以前は母子世帯だけが対象でしたが、2010年8月からは、父子世帯も利用できるようになりました。受給者の扶養する子どもの人数に応じた「所得制限」があり、児童1人の場合の一部支給の所得制限は365万円(収入ベース)です。

ほかにも市区町村独自の「住宅手当」や「医療費助成制度」、「こども医療費助成制度」など、さまざまな公的な支援制度があります。元々、母子世帯が対象だった支援制度が父子世帯に拡充する動きも。条件はそれぞれ異なるので、一度、住んでいる地域の役所に相談するのがおすすめです。

(写真はイメージです/PIXTA)