親が介護施設に入った、亡くなった等の事情によって実家が空き家となった場合、維持・管理の方針を決め、かかる費用を把握しておかないと、思わぬ損をしてしまう可能性があります。親の家の維持・売却をした経験をもとに、永峰英太郎氏が著書『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』(自由国民社)において、「空き家」の維持にかかる費用等、注意すべき点について解説します。

空き家を維持するためにかかる費用を把握する

空き家を維持していくためには、それ相応の費用がかかります。

まず、税金面で発生するのは、毎年1月1日時点で所有している不動産にかかる「固定資産税」と「都市計画税」です。評価額に税率を掛けて、計算します。

固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%(市区町村により、この税率より低いことも)が基本です。

家屋が建っている土地は、200㎡までの小規模住宅用地であれば、「住宅用地の特例」が受けられ、固定資産税6分の1、都市計画税が3分の1に減額されます。200㎡以上は、固定資産税が3分の1、都市計画税が3分の2の減額になります。

◆更地にした状態だと特例は受けられない

筆者の実家は、土地面積が約80㎡で、土地の評価額は636万円、家屋の評価額は66万円となり(2021年度)、年間3万2,400円程度の税金がかかりました。

ちなみに更地にした場合は、年間10万円弱になります。空き家を解体してしまうと、「住宅用地の特例」が受けられなくなり、かえって税金が高くなってしまうのです。

空き家の維持にかかる年間の税金

筆者の実家の評価額をもとに、固定資産税と都市計画税を計算してみました。ちなみに実家は「埼玉県所沢市松郷」です。家屋は1974年に建てたので、評価額は相当低くなっています。

◆土地の固定資産税

固定資産税の税率は1.4%。200㎡以下の土地で、固定資産税の特例措置6分の1。なお200㎡を超えると、特例措置は3分の1になります。

■計算式(例)土地面積80㎡。土地の評価額636万円

土地の固定資産税評価額×特例措置6分の1×1.4%=固定資産税

636万円×6分の1×1.4%=1万4,840円

土地の都市計画税

埼玉県所沢市の都市計画税の税率は0.3%。200㎡以下の土地で、都市計画税の特例措置3分の1。200㎡を超えると、特例措置は3分の2になります。

■計算式(例)土地面積80㎡。土地の評価額636万円

土地の固定資産税評価額×特例措置3分の1×0.3%=固定資産税

636万円×3分の1×0.3%=6,360円

◆建物の固定資産税

固定資産税の税率は1.4%。建物の評価額は、年数とともに下がっていくので、親の実家の場合は、安くなる傾向にあります。

■計算式(例)建物の評価額66万円

建物の固定資産税評価額×1.4%=固定資産税

66万円×1.4%=9,240円

◆建物の都市計画税

埼玉県所沢市の都市計画税の税率は0.3%。築年数の長い親の実家の場合、数千円レベルで収まることも多くあります。

■計算式(例)建物の評価額66万円

土地の固定資産税評価額×0.3%=固定資産税

66万円×0.3%=1,980円

前述したとおり、都市計画税は、自治体によって税率が低くなっていたり、課税されない地域もあります。例えば、千葉県浦安市は課税していません(2022年度)。

親の実家の「維持・管理費」の具体的な内訳とは

◆「ゴミ屋敷」は税金面で不利になる

ところで昨今は、崩壊寸前の空き家が多く放置されており、それが大きな社会問題になっています。そこで国は2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。

家屋が倒壊する恐れがあったり、ゴミ屋敷である場合、「特定空家等」にあたるとされ、前述した「住宅用地の特例」が受けられなくなるのです。

なお「特定空家等」に該当すると、自治体から勧告がありますが、これを無視し続けると、所有者は50万円以下の過料が科せられ、行政が強制的に解体してしまいます。

もちろん、解体費用は所有者に請求されます。同法の施行後、これまで14万件の管理不全の空き家が改善されているそうです。

◆庭の剪定(せんてい)、水道光熱費、火災保険などもかかる

税金面だけではありません。まず、水道光熱費も発生します。

筆者の実家は、ガスは解約し、電気と水道は維持し、年間計1万6,000円程度でした。固定電話も念のため維持したので、年間3万円程度かかりました。

庭の剪定費用もかかります。筆者はシルバー人材センターを活用し、1回1万5,000円程度。年2回の依頼で3万円です。

思いのほか、かかるのが火災保険です。盗難や水災などは付けずに、シンプルな保険内容にして、年間2万5,000円程度でした。

そして忘れてはならないのが、子供自身の移動費です。実家は所沢のため、筆者の住んでいる鎌倉からの距離はたかが知れていますが、東京在住の友人の実家は大分で、安い航空券を使っても、往復3万円以上かかるといいます。

筆者の場合、空き家の維持費用は、年間10万円強になります。これが都心に家があれば、土地の評価額は数倍になるため、数十万円は覚悟しないといけないでしょう。

このように「家の維持」には、お金がかかることをしっかり認識し、できる限りのスリム化を図るように心掛けましょう。

永峰 英太郎

フリーライター

高橋 正典

価値住宅株式会社

代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)